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第13話 罰を受ける者2


「罰……だと?拙者は何故罰を受けねばならん?」


「お前がこの中でビリッケツだからだよ!罰を受ければ次は真面目にやるだろうが!」


 スキンヘッドの教官がシノブに食って掛かる。シノブにとって上官の命令は絶対だ。しかし


「教か……貴様がまだ走っておらんではないか」


「はぁ〜?俺が走ってもしょうがねぇだろうが!俺とお前達とは立場が違うんだよ!」


 教官の云うことももっともだ。シノブは生徒であり目の前の男は教師。指導する者。


「ならば貴方が手本を見せなさい、アーダン」


 凛とした声が響いた。黒を基調としたメイド服に身を包んだレイラの付き人、


「メイデン.トゥリー、お前には関係ないだろうが!」


「今の私はメイデン.カーターです。カーター家の名において命じます。走りなさい!」


 メイデンは強い瞳を教官であるアーダンに向けた。メイデンはレイラの付き人。そしてカーター家の養子。彼女の言葉はカーター家の言葉。逆らえば明日からの生活など保証されない。


「……わかりましたよ。補欠と競争すればいいのか?」


 アーダンが首の骨を鳴らしながらスタート位置についた。瞳はシノブを見据える。メイデンが頷こうとすると


「拙者はもう走らんぞ。貴様が1時間25分50秒を切れれば貴様の勝ちだ。拙者が罰とやらを受けよう」


 アーダンは目を白黒させ吹き出した。そのタイムなどジョギングペースだ。万一もありえない。


「お前……俺の見せ場を作ってくれる訳か!?」


「弱い犬は吠えるのが上手いわ。魔法も使って構わんぞ。全力で拙者のタイムを抜いてみろ!」


 アーダンが腰を下ろし足元を擦った


「エンチャント バースト」


 大地を抉り力強い一歩を踏み出した。風を強引に掻き分けるように走る姿は暴風を想像させ姿を消していく。その速さが維持できるのなら10分を切るだろう。


 シノブは少し思案しながらレイラの髪を撫でた。


「少し借りるぞ」


「え?あ……髪留めですの?」


 シノブはレイラの髪留めを取り右に左にコネ、取り出した。


「レイラ殿見ておけ……魔法などなくともレイラ殿の見つけたキノコを組み合わせると…………」


     一本の か細い針

 針を摘み遥か先を見据える。その後来るであろう者を想像している。荒々しい足音が聴こえている。笑いながらかける姿が映し出された瞬間



「陰遁  影縛り」




 シノブの放った針がアーダンの足元を掠め地面に突き刺さった。ガクリと前のめりになるアーダン。しかし体勢は変わらない。


「なん……動か……魔法が暴走……違……クソ」


 その場である必死の形相を浮かべるアーダン。しかし体は動かない。ピクリとは動く。口も動く。しかしそれ以上動かない。


「教官殿、ゴールは目前だ。何を遊んでいる?」


「うるせ…………クソ……なんだ……ググ」


「……遊んでいるなら拙者は戻らせてもらおう。タイムは自分で計測していろ。」


 シノブはアーダンの見える位置に魔法時計を置いてその場を去っていく。チラリと目をやるとまだ15分程度。この距離ならば這ってでも十分に間に合う。


 動けるのなら



「……先生、私誰か呼んできましょうか?何かおかしいですよ!」


 「だ……大丈夫……少しずつ動いてきてる……もう少しで動けそうだ……ミシェル.ガーソンお前も戻っていろ」


「は……はい。」


 少しずつ体が動く、日は傾きかけている。生徒達は不安そうな顔をしながらも教室に戻って行った。

 アーダンの影がシノブが撃ち込んだ針から逃げるように少しずつ、少しずつ、離れて、時間をかけて


「解け た!」


 体が自由を取り戻した瞬間アーダンは砲弾となる。残り1㎞。先程みた時計では残り10分……余裕で間に合う!


 アーダンは全身全霊の魔力を足に注ぎ込み音速に届かん程の加速を見せ


コケた。


 信じられない。すぐさま体を起こそうとするが起き上がれない。何か……おかしい。自分が座っているのか寝ているのか。そもそもここは何処で何を……


「オエッ!ガァ……ああああァ……オエッ」



 豪快に吐瀉物を撒き散らし呼吸を整えようとするが、整わない。むしろ酷く乱れる。この症状


「 左様。 毒だ 」


「……補欠……お前かぁ!……オエェェッ!」


 「貴様は魔法使いであろう。先日、知人が毒を喰らっても顔色一つ変えずに治療したのを見て、ついもう一度見たくなってな。お前もやってみろ!拙者が観察してやる。」


 アーダンは慌てて自分の胸に手を当て


「キュア」


 不浄な物を浄化させる魔法を唱えた。


「ウェッ!?なんで……オエェェッ!」


 しかし症状は改善されない。吐き気や目眩がまるで治らない。体が痺れて……このままでは、


「た……助けて……誰かよんでくれ」


「そろそろ終わりだ。最後の言葉を言え」



「お……お……お母さん、お母さん。お母さん!おか」


………………

………………………………





「フゥーー!スゥーーっとしたぜ!体も軽い!」


「教官殿はストレスが溜まりすぎだ。一度空っぽにして身も心も軽くするべきと思ってな。荒療治だが効果はテキメンだろう?」



 シノブと教官であるアーダンは並んでトイレを掃除している。汚れ1つ残さないように念入りに

 教官のアーダンは命を落とさなかった。気を失い気がつけばベッドのうえ。顔色は憑き物が落ちたかのように晴れ渡り、頭の輝きも増していた。


 戸惑いの表情は隠せなかったが、はっきりとわかった事が2つ。自分の中で蝕んでいた物はキレイになくなり、それをした人物は……考えられる限り一人しかいない。


「急にカーター家のお嬢様がウチの学校に来たんだぞ?ストレスで禿げそうだったぜ!髪の毛1本もないけどなぁ!アハハハ!今なら相棒が1本ぐらい生えてきそうだ!」


「また息苦しくなれば溜め込まずに拙者に申してみよ。薬を調合してやろう。毒も使い方1つで薬になる。」


「頼むぜ補け……ヒイラギ!こっそり単位やるからよ!」 


 シノブとアーダンはお互いに含み笑いをし


「教官殿……お主も悪よのう」


「お前程性格悪くねぇよ!」



シノブ&ジルのおまけと感謝


「ブクマ9件目をつけてくれた方、本当にありがとうございます。……あと一件で大台よ!」


「そうはやるなジル殿。1歩1歩。目の前の事に取り組むことが大事だぞ。いつか足元をすくわれかねん。」


「そうよね…ごめんなさい。ところでシノブ君って罰が嫌いなの?トイレ掃除が嫌いなの?でも本編ではトイレ掃除してたわよね。」


「……トイレ掃除が罰という点が気に食わなかった。アレが汚い仕事だと印象つけておる。拙者達の場合は取り合いだったぞ。もっとも活躍した者にトイレ掃除の栄光を与えておった。皆もトイレ掃除したくて必死だ!」


「え〜?信じられない。活躍したかっただけでしょ?」


「流石に糞尿の匂いにまみれては風呂に入る許可を出さずにはおれんでな。今にして思えば皆、湯船に入りたくてトイレ掃除をしたかったのかもしれんな。」


「絶対そっちだよ!お風呂ぐらい自由に入らせてあげなよ!今思わずに前世で思えよ!」


「ジル殿……良きツッコミだ!その感覚を忘れるな!」


「……次回は評価を下さった方に感謝したいと思います。最近おまけが長くなって申し訳ありません」

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