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第12話  罰を受ける者


「うぅ〜持久走かぁ〜。私嫌いなのよね〜」


「ジル殿は何が好きなのだ?何も真面目に取り組んではおらんではないか」


「私は……次の試験に備えたいのよね」


「ならば全て真面目に取り組むべきだな。基礎鍛錬はやりすぎて困る事はない。心、体を鍛えるにはもってこいだぞ」



 ワシ達見習い魔法使い2班は学校の外に集合させられた。これから体力をつけるために持久走を行うと言うのだが…………


「まさかたったの10キロとはな……せめて10倍はやるべきだろう」


 距離は10km。かなり短いが魔法の使用が禁止なので生徒達にとっては面白くない授業の1つだ。しかし長距離走は地道に積み上げるという点で心身の鍛錬でも重宝している。しかもお手軽。


「シノブ様!よろしければわたくしと一緒に走りませんか?」


「何を言っておる?持久走は己との戦いだ。馴れ合いの走りなどでは殻は打ち破れんぞ」


 レイラの提案を一蹴する。レイラは唇を尖らせながらも深呼吸をしながら位置についた。



「1時間ぐらいで戻って来いよ!始め!」


 教官が合図として空に炎を打ち上げる。それを皮切りに皆走り出す。


「補欠!お前も早く行け!」


「慌てるな教官殿!まずは(けん)だ!」


「『見だ!』じゃねぇよ!走だよ!早く走れ!」


 仕方あるまい。上官の命令は従うべきだな。しかし1時間以内?流石に簡単すぎるだろう。


 軽い歩幅で1人、また1人と追い越し先頭は……


「ジル殿が先頭か?意外とやる気に満ちておるな」


「シノブ君!?……うん。まぁシノブ君は速いわよね。嫌いってだけで得意だからね!負けないわよ!」


 呼吸が乱れる事を嫌ったのか前を向き更にペースをあげていく。心拍数……歩幅……1km2分半と言ったところ。下忍としては十分だな。


 その後も次々とワシを抜いて行く者達。皆懸命に走っている。嫌がっていても、いざ始まれば本気で走るのは持久走の面白い所だ。


「28……あと二人か」


うち一人の女性がワシに近づいてくる。呼吸は乱れているが目がまるで死んでいない。


「ミシェル殿平気か?」


「ハァ……ハァ…………」


「無理して呼吸を乱す必要はない。邪魔をしたな。自分に負けるでないぞ!」


 ミシェルはコクリと頷くと淡々と自分のペースで走り去ってしまった。


「…………後は」


「後はお前だよ!何立ち尽くしてやがる!」


 スキンヘッドの教官が怒りの表情を向けている。


「教官殿、レイラ殿がまだ来ていない。」


「レイラ様は途中でリタイアされた!お前は自分の心配をしろ!わかってるのか自分の成績を!」


 なんと……リタイアとは何か事故か!?

軽く両足で大地を蹴る。瞬間的に自身を羽根と化す。



……………………


「お嬢様落ち着きましたか?」


「うん!疲れたからお風呂入りたいですわ!」


「既に湯を張っております。私がお背中を流しますので今日は帰ってゆっくりお休みなさいませ」



 スタートから僅か1km地点。レイラは座り込み侍女メイデンの介抱を受けていた。なんたる腑抜け。ワシに気づくとパタタと走り寄って来る。


 その元気があるのならば何故前に進まん!


「シノブ様もリタイアしましたの?でしたら一緒に」


「一緒に走るぞ」


 レイラの手を取る


「え?わたくしはもうリタイアしましたのよ?走る必要がありませんの」


「レイラ殿は1kmは走れた。ならばそれを後9回繰り返すだけだ。拙者に付いて来い!」


 レイラを置き去りにし1人走り始める。ゆっくりとゆっくりと、大丈夫……来る。





 程なくしてレイラがフラフラになりながらもシノブの横に辿り着いた。歩いているのと変わらないスピード。しかしレイラにとっては走っている


「流石はレイラ殿だ。まずは呼吸からだ。拙者の呼吸を真似しろ。見様見真似で構わん」


「ハッハッ!フッフッフッ!ハッハッ!フッフッフッ」


「そうだ吸い込む量より吐き出す量を意識しろ。古い酸素を吐き出し新鮮な酸素を取り込む。イメージするだけでいい」

 

 レイラは返事をする気力もない。返事の為に呼吸を乱してはペースが乱れる。リズムが乱れる。


「良しいいぞ!次は拙者が前に出る拙者と同じ動きを心掛けよ!」


「フッフッ!ハッハァ!」


 レイラの身体能力は把握している。身長体重歩幅心拍数、全てを把握している。レイラにとっての最適な歩幅と呼吸をワシが教えてやればいい。


 レイラに完全に模写など出来んがそれも許容範囲。


 レイラは一心不乱にシノブの動きを見続け、腕の動きと足の動きに自分を重ねていく。


………………

…………………………


 いつの間にか彼の声は届いていない。目の前の人の動きを真似るので精一杯だ。自分の呼吸を維持することには精一杯だ。他の事に余力を割けない。


ふと 誰かが背中を押してくれた。


『残り500Mだ。思いっきり走って殻を破ってみろ』


 

楽な呼吸を忘れる。窮屈な走り方を忘れる。ただ真っ直ぐに思いっきり手を振り、足をあげ全力で1歩を踏み出す。


 小さな拍手が聴こえてきた。誰かの声援が聴こえてきた。


    まだ頑張れる



「ハァハァ…………ハァ…………」


 レイラはその場に座り込んだ。周りを見渡すと皆暖かい目を向けている。


「わたくし……走れましたの?」


「凄いですよ!レイラ様!」


 始めて何かを出来た。誰も笑っていない。嘲笑っていない。わたくしを……讃えてくれた。



「見事だ。レイラ殿」


 ゆっくりとシノブが歩いて来た。その姿を許せない者が声を荒げる。


「お前〜〜……いい歳して何時間かかってやがる!」


「1時間25分50秒だ。」


「はぁ〜?…………」


 スキンヘッドの教官は手元の魔法時計に目をやった。シノブの言った時間とどれほどの誤差があったのかは教官以外わからない。



「……お前は罰としてトイレ掃除1週間だ!」


「罰……だと?」


 その瞬間 確かに空気が凍った。


 




レイラ&メイデンのおまけと感謝



「前回は勝手がわからなかったとはいえ、読者様に不快な言動をしてしまった事を心からお詫び申し上げます。また、ブクマして下さった方。本当にありがとうございました。これからも読んでいただけるよう精一杯努力してまいります。」


「…………あ!見てメイデン!ジルが恍惚な表情を浮かべながら本編へ昇天していきましたわ!」


「これで邪魔者は…………ところでお嬢様、暑くないですか?」


「え?わたくしは平気ですわよ。この場所暑いも寒いも感じませんし…………なんでメイデンは服を脱いでますの?あと、くっつくのをやめなさい」



「寒いのでお嬢様の体温を分けていただこうかと。別に後書きだから良いですよね?」


「よくありませんわよ!前回から少し思ってましたけどメイデン!貴女ヘンですわ!服を……服を脱がさないで」


「もう……辛抱たまりません!」


「助けて!……誰か……助けてーー!」


「この空間には私とお嬢様の二人きり!エデンの後書きでイブとイブとして永遠に暮らしましょう!」


「誰か…………シノブ……様」




『待たせたな!レイラ殿!』



「その声は……シノブ……さ……さま?」



『シノブ君と思った〜?残念!ジル.ローレス見参!!』






           続かない




ーーーーーー


「なんなのだこれは……どうすればよいのだ。長すぎる上に、まるで収集がついておらんではないか。皆好き勝手ボケおって!」

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