第19話 意気投合
彼方と言う青年は動きに僅かなブレもない。袴を履いている故に足捌きもわからない。ただ繰り出される弾指は巡回兵の額を割り脳を激しく揺さぶっている。
「ギャン!」
「安心せい。ただのデコピンじゃ」
民衆達は普段我が物顔で練り歩く兵士が無様にやられる様をみて歓声をおこしている。
「……試して見るか」
シノブが民衆に紛れ手に持った銅貨を弾いた。
人々を縫うように彼方の後頭部目掛けて飛ばされた一撃。
「カッカッ!金銭を投げるのは賽銭の時だけにしておけい。お捻りにしては気を込め過ぎ…………」
死角から放たれた一撃を余裕綽々で銅貨を掴んだが、わずか顔を歪め、このお祭り騒ぎに、我感せずでお金を数えている女性に
「八重ちゃん。お酒はあるかのう?」
「え?彼方君が飲むんですか?飲みかけの紹興酒なら持ってますけど」
「真っ昼間から酒など飲むか!毒を握らされたわい、金に毒を塗るなどなにを考えとるじゃ?」
「え……えぇ〜?んーよっと、はいどうぞ」
彼方は瓢箪を受け取り手に浴びせた。八重が不安そうに隣でひょっこりと顔を覗かせている。
「大丈夫ですか?」
「耐性を考慮したとしても大した毒ではないのう。しかし1本しかない腕を使い物にならなくされては堪らんからな。念を入れて、じゃ」
「両腕なくなっちゃったらワタシが彼方君を介護してあげますね!」
「フフフ八重ちゃんや、ワシの心配をしてくれとるのかのう?ワシも罪づくりな漢じゃわい!」
「さて、と!お金も手に入ったしご飯食べに行きましょうよ。良さげなお店見つけたんですよ!」
「…………宿代はしっかり残すのじゃろうな?ワシは野宿で良いが八重ちゃんを野原に寝せるなどできんぞ」
「むしろワタシ野宿のほうが馴れてますので!全額使っちゃいましょう!宵越しの金は〜っやつです!」
「将来八重ちゃんの旦那さんになる男は苦労するぞ。ワシはもう少し稼いでくるわい」
彼方が倒れている巡回兵を動かし座らせている。そしてこちらに向かって歩いてくる。
「両の手にお団子を持ちながらの銭投げは見事と言っておこうか。八重ちゃんがいなければ貴様をクビリ殺しておったぞ」
「…………え?」
「ほう。心の真は揺らがぬ……か。かなりの鍛錬を積んでおるな。ただワシの目は節穴ではない。そのような小賢しい演技など通じん。次に目につけばその魂を斬獲してくれる」
彼方は明らかな殺気を間抜け顔のタウロスにぶつけて人混みに紛れてしまった。
「ヒイラギさん……俺なにかやっちゃいました?」
「タウロス殿はなにもしおらんな。拙者が気付けなかっただけかも知れんが」
名を彼方とか言ったな。
奴の目は完全に
節穴だ。
ーーーーサイド タウロスーーー
嫌な予感がする。碌でもない事に巻き込まれた気がする。どうせヒイラギさんがなにかやったに決まってる。
「タウロス殿、拙者は急用ができた」
「え?あ……いない…………お団子もない」
いつの間にか俺が持ってたお団子を掻っ攫いヒイラギさんは姿を消した。
なんだそれ?どうせさっきの隻腕の青年に関することだろう。武芸なんて全くの俺から見ても凄いとは思うけど……
「なんか、さっきの隻腕の人……常識なさそうだな〜」
俺にいちゃもんつけてくるし。次会ったらクビリ殺すって……クビリってなんだよ。二度と会いたくないよ!
「今……なんて言いましたか?」
独り言を聞かれた。少し恥ずかしいのもあるが、隻腕の人と一緒にいた女性。不味いな〜。知り合いの悪く言われたらいい気はしないだろうし無理に否定するのも…どうしよう。
「あ〜……さっきの隻腕の人が俺の知り合いと似ていて常識なさそうだったから。別に悪気はないんだよ」
ヒイラギさんを出汁に使いつつも一方的に乏しめる気はない旨を伝えて
「彼方君の方が常識ないですよ」
は?なんだこの人。寄りにも寄って……
「俺の知り合いを知りもしないで、よくそんな事が言えるな。言っておくけどヒイラギさんの常識の無さは天井知らずなんだぞ!」
「い〜え!彼方君は常識って言葉自体を知りません。そのクセ自分を常識の塊だと思ってるような非常識な人なんです。貴方の知り合いは常識の範疇です」
なんなんだこの女性。ヒイラギさんを常識人扱いされて黙ってられるか!
「まだなにか言いたそうな顔ね。この先に良さげな店があるの。一人で食べるのもつまらないし良かったらどう?」
「奇遇だな。こっちだってお団子ばかりで別の食べ物が恋しかったところだ!」
「ワタシの名前は八重よ。貴方は?」
「大きい声じゃ言えないがタウロスだ。いいか?ヒイラギさんのエピソードを聞いたら常識の概念なんて吹っ飛ぶぞ!」
レイラ&ニーチェのお悩み相談室
「ブクマしてくれた読者様ありがとうございましたわ。今回はニーチェ先生様が来てくれましたわ!」
「本編でハブられたあっしになんの用ッスか?」
「匿名のお悩み相談ですわ。PNパプリカ=ピーマン=撲滅様から『私の知り合いの話しですがジュデッカとか名乗る腐れ悪魔に虐められています。なんとかギャフンと言わせたいです』はい。ニーチェ先生様、なんとかできませんの?」
「ん〜、多分ギャフンって言って欲しいって頼んだら言ってくれるッスよ」
「そういう事ではございませんわ!わたく……きっとこのお方は一泡吹かせてやりたいんですわ!」
「我儘ッスね〜。あー、ジュデッカの弱点とか思いつかんッスね」
「ニーチェ先生様でも無理ですの?」
「いや、あっしは余裕ッスよ。睨んだだけで泣きべそかきながら土下座するッスよ!ただジュデッカは強い奴には弱いけど自分より弱い奴にはとことん強いンスよ。雑魚狩り専門ッスね」
「……最悪ですわね。死ねばいいのに。ん…わたくし……雑魚ですの?」
「金ロリもあっしのように強さと美しさを兼ね備えたスーパーレディを目指すッスよ!それだけでジュデッカは平伏すッス!」
「わかりましたわ!あんなアクマに負けませんわ!」




