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 追憶の残骸 願い


 悪魔のセスはその場に座り込みあたしを睨んでいる。恐怖などまるで感じない。あたしが見続けた人間に比べたらまるで悪意というものを感じない。


「あ……アクマならあたしを殺してくれるの?」


 もう一度自殺する勇気はあたしにはなかった。でも悪魔なら。きっと、簡単にあたしを殺してくれる。


『我は人間には手を出さン。死ぬにしてもこの地以外にしロ。ニーチェに悟られるやもしれン』

「ニーチェって誰?でも……あたしもう行くところがないの……ここにいてもいい?」


『……貴様は我に恐怖を感じないのカ?』

「怖くないよ。貴方はきっと優しい人。あたしにはわかるんだから!」


 アクマは小さく笑った。まるで的外れな事を言ったのだろうと思うけど、何処か嬉しそうだった。


『人間を手元に置き我の心を沈めル。悪くない修錬ダ』



 それからあたしと悪魔のセスとの奇妙な生活が始まった。不自由は何処にもなかった。

 食べ物は木の実と、たまにセスが動物を獲ってきてくれた。寒い森のはずなのにセスの周りはとても暖かく過ごしやすかった。


 セスはあたしの顔を出来るだけ見ないようにしていた。自分には絶対に触らないように忠告していた。


 セスの話しによると悪魔はとにかく人間を殺したいらしい。悪魔は今現在8人いるが人間を見ただけで殺す者もいればまるで平気な者もいる。違いは抑えられるか抑えられないか。それと殺人衝動がどれほど強いかどうか。



 悪魔になる前にどれだけ加護を使ったか。

 



 悪魔が気の向くままに殺人を繰り返していたら人間は絶滅しているらしい。あたしは冗談だと思っていた。たった8人で何百万人もいる人間を絶滅させるなんて無理だと思った。


『それを抑止する者がいル。ニーチェはルールを定めタ。悪事を自分が気付いたら封印するト。我等はその存在に恐怖を感じている』


 たまのセスのお喋りは意味のわからない事が多かった。普段は岩の上でメーソーをしていてその時はいくら話しかけても微動だにしない。でも時が経つに連れてセスの口数は多くなっていた。



 セスは80年ぐらい石の中に閉じ込められていたらしい。それでもまだマシな方で300年近く封印されている悪魔もいると言っていた。


『いや、マシではないナ。身内びいきがあル。ニーチェ直轄の仲間は軒並み1桁年台の封印ですんでいル。父親であるサタンの300年を考えると身内びいきではないナ』

「でも悪い事しなかったらその人はなにもしないんでしょ?封印ってどんな感じなの?」

『そうだナ。封印は暗くなにもない場所だ。恐怖以外の感覚などなく永遠を彷徨っていル。あれを恐れないのはクリーヴァぐらいダ……奴は機能を停止させられるからナ』


 少しずつセスと打ち解けてきた気がする。なにをもって悪魔と判別しているのかあたしにはわからない。あたしには優しいし、あたしを気遣ってなのか時折冗談まで言ってくれる。



 知り合いが来ることもあった。最初に来た人はシルクハットをかぶった陽気そうな悪魔。あたしには人間にしか見えなかった。


「ちょ〜っと失礼。なんだよ〜可愛い人間を連れちゃってよ〜。セスもいよいよ人間との共存を始めたのか〜?それがいいぜ〜」



 二人組の悪魔も来た。同い年ぐらいの女の子と胸の大きな女性。


「今度は無茶しないでねェ〜」

「二度と 姉様の 手を 煩わせるな 」



…………

……………………



「じゃあ……いくよ!」

「こイ!」


 ゆっくりとセスの手に触れた。セスは歯を食い縛りあたしを睨みつけている。


「セス……大丈夫?」

「……平気ダ……ついに人間に触れられても平常心を保つ事に成功したぞ」


 セスは殺人衝動が大きいらしく必死でそれを沈めていたがあたしと出会って半年で触れられても平気になったと言っていたが、手はワナワナと震えているし今にもあたしの首根っこはへし折られそうだ。


 でもあたしはなんの心配もしていない。


「大丈夫だよ!セスはそんなことする人じゃないから!」

「感謝している……貴様と……アイシャと出会えて本当に良かっと思っていル」



 今のあたしはもう死にたいなどとは思っていなかった。


  だからだろう。


 この世に神様がいるのなら神様こそが悪人なのだ。人の心を、思いを弄べる存在こそが悪なのだと。



 森の奥で生活していたがふとした時に村人に見つかってしまった。村人でありあたしのお母さん。お母さんはすぐさま逃げ出しそこからは転がり落ちるようにあたしは転落していく。



 すぐに山刈りが行われた。立派な甲冑をまとった兵士。人を探すのに適していない格好。包囲網は徐々に狭まりあたしは保護された。


「ラウンジ様の所有物を確保!これより処刑します!」

「まだだ!余計な事を口走っていないか拷問した後に魔物に喰わせる!事故で片付けるんだ!」



 あたしは兵士に乱暴に引きづられた。

 引き離されていく。あたしが手に入れた幸せは自分の不注意で壊されていく。あたしは……あたしは……


 セスはもうあたしと一緒にいる理由などない。人間を衝動的に殺さなくなったのだ。神様があたしに役割を与えたのならそれは終わった。だからあたしはもう





     用済みなのだ

  「死にたくないよ 助けて   セス」





 あたしを捕まえている兵士にも聞こえない程の小さな願い。誰にも聞こえない願いは


『  その願いを叶えよウ   』


 誰も幸せにならなかったあたしの傲慢な願いは神様ではなく悪魔に聞き入れられた。

 


 



  

おまけ レイラ&ジュデッカのお悩み相談室


「皆様こんにちはですわ。今回はサクサクいきますわよ!PNピーマン撲滅様から『これは私の友人の話しですが毎晩枕元に幽霊が出てきます。どうすればいいですか?』はい。どうすればよろしいですの?」


「…………」

「?どうすればよろしいですの?」


「いや……答えようがないだろ?別に今も生きていられるなら放っておいていいじゃないか」


「でもその人は困ってますわ!はやく!はやく解決してほしいですわ」


「困ってるかどうかはわからないだろ?そもそも今回は魔法は関係ないからね」


「今回はお悩み相談室ですわ!はやく!どうすればよろしいですの!」


「なに焦ってるんだい?微妙に専門が違うんだけど……それは……あれだよ。多分寝ようとすると幽魂が出現するんだろうね。相性のいい肉体に目をつけて見張ってるんだよ。その人の意識が完全に落ちた瞬間――」


「瞬間……どうなりますの?」


「身体を乗っ取られる。でも安心していいよ。本人は寝てると勘違いしてるから永遠に気づかないよ!アハハハ!」


「か…解決!解決策はありませんの!?」

「簡単だよ!寝なければいいじゃないか!でも眠りが深ければ深いほど身体を乗っ取られる可能性はあがるから気をつけなよ!」


「ひ、ヒッグ……ぴえ……ぴぇーーん!!わたくしもう眠れませんわ〜!ぴぇ……ヒック、すぅーっ  ぴえ〜〜!」


「冗談だよ。幽霊程度にそんな力があるのなら人間が悪さに使うに決まってるだろ。それじゃあ僕は戻るから。ゆっくり眠……起きてるといいよ」


「結局解決してくれませんでしたわー!ジュデッカは口だけですわー!」

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