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第11話 残された悪魔たち


「うぅ〜〜 グ グ エイジス エイジス……」


 ロクシリーヌは泣き続けている。何百年と一緒にいた知人が死んだと告げられたのだ。悲しみはひとしおであり同じ境遇にあるはずのタナトスとジュデッカは悲しい感情などは持っていなかった。


「これお土産。さっき死んだから新鮮だと思う。あと2つは重いから捨てた。ロクシィも手伝ってくれなかったし」


 タナトスは苦悶の表情を浮かべた死体を投げ捨てた。


「新鮮って……鮮度は確かに重要だけどさ、この死体は損傷も激しいし使い道少ないよ。もっと綺麗な状態の死体にできなかったのかな?……あぁ、誰でもいいわけじゃないんだよ。数こそ必要だけどせっかくなら自分には危険がないなんて勘違いして幸せに過ごしてる奴等が望ましいね!」


「そんなの知らないよ。是の家に勝手に入って死んだから持ってきただけだから、要らないなら土に還すよ」


「友人の行為を無碍にするのも悪いから使わせてもらうよ」


 ジュデッカは頭部を持ち上げ寝台に置き脳を掻き回していく。その隣でタナトスがまるで興味なさそうに覗き込んだ。


「エイジスが死んだのは確かなの?」

「インユリアが言ってたから間違いないよ……と、これダメだね。捨てようか」

「……重かったのに」


「持ってくるなら死にかけとか気を利かせてくれよ。言うほど新鮮でもなかったからね」


 ジュデッカは脳漿の付着した手を軽く拭いロクシリーヌを一瞥しニヤリと笑みを浮かべ


「ロクシィ、エイジスを殺した人間を僕やタナトスと一緒に殺そうか」


 ロクシリーヌは目元をゴシゴシしながら言葉に出さずにコクリと頷く。


「……是は別にどうでもいいんだけど」

「かたい事言うなよ。君たちが手伝ってくれればすぐに終わるんだ」


「……終わったら帰るよ。興味ないし」


「手始めにこの村の人間を皆殺しにしよう。タナトス、魔物呼んでくれるかい?」

「いいけど1回しか呼ばないし呼んだら帰るよ」


「相変わらず我儘だね。それなら僕がやるよ」


 ジュデッカが肩をすくめながら死体に手を埋め


LivingDead(リビングデッド)


さて……運が良かったら生き残りぐらい出るけどどうでもいいか。ダロス王国へ行こう」


 元人間であった物が醜く動き始め目を見開いた。滴り落ちるヨダレが地面を溶かしている。

『ガ あ あえああアア』


「ハハハ!失敗作もいいとこだ。1時間ぐらいしか保たないけど偽りの生命だ。欲望の赴くままに人間を喰らって仲間を増やして死んでこい!」


 死体がゆっくりと立ち上がり恨めしそうな瞳を向けて地下室から出て行った。


「ジュデッカ ダロス王国って どこ?」

「…………ニーチェの言葉を借りるなら真っすぐだよ」


「真っすぐ …… なるほど わかりやすい 流石ニーチェ姉様」

「本当にわかってるの?西だよ!?」

「西じゃ わからない わかりやすく 説明して」


…………

……………………



ーーサイド ロクシィーー


「それじゃあ準備が終わるまでは解散。まだ騒ぎは起こさないでくれよ」

「是は寝てていいの?」

「そのほうが助かるね……探すのが面倒だから宿屋にいてくれよ。これお金。使い方は変わってないけど覚えてるかい?」


「多分覚えてる……金……貨?5枚で足りるの?」

「価値が変動してるからね。2.3ヶ月ぐらいは寝ていられるよ」


 ジュデッカがタナトスにお金を渡している。お金の使い方なんて覚えてるに決まっている。


 ジュデッカの裾を掴んで……引っ張る!ジュデッカは急に服を引っ張られて喜んでいる。


「……なに?服が破けるからやめてほしいんだけど?」

「あたしも お金 ちょうだい」


 ジュデッカはニコニコしながら巾着から金を摘み出し、ふと、手を止めた。


「君……見た目だけは良いから知らない人間から奢ってもらいなよ。節約術ってやつさ。」



 ……お金もくれないジュデッカは変人だ。悪魔のくせにある程度の期間人間に仕えてお金を貰っている。


 エイジスもお金を持っていた。あたしはもらった事ないけど出掛けるたびに要らないものを押し付けてきて迷惑してた。



「エイジス …… 幸せに 死ねた?」


 あたし達の目標。誰かに殺されることを夢見てもう500年間以上悪魔として生きている。自殺などは受け付けず、手加減も許されない。


 全力で人間を殺し……いつか(ゆる)される日を夢見て。



 それにしてもこの町はゴチャゴチャしている。人混みに溢れ少しでも気を抜いたら……皆殺しにしたくなる。



 我慢……我慢。ニーチェ姉様の言いつけを守って。


   我慢。あたしは我慢できる子。


 

 欲望に従って……殺したい……殺したい……一人ぐらい……いいかな?バレないよね?エイジスを殺されてあたしもムカついてるし……いいよね?


 よし殺そう!


 

 

 あの女にしよう。両手に団子を持って歩きながら食べてる品性の欠片もない女。胸にたくさん脂肪をつけてみっともない。



 ニーチェ姉様を見習え!



 1歩1歩近づく。……衣服は東方連邦の着物。こちらの視線に気付き


「ん?お団子ほしいの?はい」

「 …… 」


 女があたしに串団子を手渡し頭を撫でてきた。


 その不愉快な手を……魔力を溶かしてやる!

 その懐かしい感触を忘却するように……



「 ………… ありがと」

「……あの…………あ!バイバイ ロクシリーヌ」



 女は誰かに気付き慌てて走っていった。殺そうかとも思ったけどお団子をくれたので見逃してやった……だけ。

 もっともこんな食べ物貰っても味なんてしないのだけど……食べても意味がない。人間の真似ごと。


 でも……なんであたしの名前……悪魔だから名前ぐらい知られてるのかな?


 隻腕の青年に駆け寄り笑いながら話している女。声は聴こえた。


「彼方君!お仕事みつかりましたか?」


「まだじゃ、露銀も底を尽いておるし大道芸は気が進まんのう。それよりも八重ちゃんや、ワシの団子はないのかの?」

「買ってたんですけど……あげちゃいました!」


「まあええわい………蜜団子とはいいセンスじゃな」

「あ〜……え〜…っと、これ食べかけですけど……食べます?」


「食べ物を恵まれずとも木の根でも囓るから平気じゃ。八重ちゃんを空腹にさせるわけにはいかんからの」

「でもワタシこれで8本目ですよ。結構お腹いっぱいです!ほら!あ〜ん。」


「……八重ちゃんや、預けておる宿代は残しておるのじゃろうな?」

「あ…………彼方君!あ〜ん!」



 

 なんだろうか?あの二人はどこかおかしい。人間の形をしているだけだ。人間の肉体に人間の魂が入っている。


「別に おかしく ないか」


 




 

 

おまけ 昔の人たちの腕相撲(魔法有り)



1位 シグ(自他共に碌でもない結果になるのがわかっているので不戦勝)


2位 ニーチェ(リーダーの面目躍如)

3位 サタン(出番はまだ先)

4位 セス(出番はないが強かった)

5位 クリーヴァ(百戦やれば3位ぐらい1万戦やれば2位になれる)

6位 エイジス(魔法の発動条件を満たせない)

7位 ジュデッカ(魔法が腕相撲に全く関係しないため弱い)

8位 ロクシリーヌ(魔法が使えても地力が弱い)


ー位 タナトス(シグ以外は勝負がつかないので引き分け)

ー位 ブイ(腕を消ししちゃうのでシグ相手以外は引き分け。反則負けでもいい)


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