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第10話 力がないなら借りましょう


「シノブ様〜!これは毒キノコですの!?」


「それはタマゴタケ、毒はないが美味いぞ!あと必要ないキノコは採取してはいかん。採取したからには食べる、もしくは使う事が世の摂理だ」


「は〜〜い!」


 現在シノブとレイラは森奥でキノコ採取に勤しんでいる。目的地に着くまで気晴らしのはずだったが、


「シノブ様!赤くて気持ち悪い指が生えてますわ!気持ち悪いですわー!」


 気持ち悪いと連呼するレイラの表情は明るい。目の前のキノコは禍々しさの象徴。それを自分が発見したのだ。喜びはひとしお。


「ほう……火焔茸か。危険なので触れてはならんぞ。拙者が採取する故、暫し待たれよ」


「わたくしは食べないから平気ですわ!」


 シノブの静止を聞かずにカエンタケに触れようとするレイラ。カエンタケは表面に毒はない。しかし不用意に採取すれば皮膚が焼けただれる猛毒。


 

 レイラが触れる寸前 


「きゃあ!」


「お痛が過ぎるぞ。レイラ殿からは目が離せんな」


 シノブがお姫様抱っこをしてキノコから引き離す。


「シシノブ様、恥ずかし……」


「おぉ、スマンスマン!今下ろす故、」


 ゆっくりとレイラを下ろそうとするもギュッと肩を掴まれる。


「さては疲れてきたな?誘ったのは拙者だ。後は拙者の背に捕まっておれ」


「…………はい。」


 レイラを軽く紐で括り自分の体と繋ぎ合わせる。降り落ちる可能性を潰す。


「ついてこれるか?」


 シノブが小さく呟くと


   森からシノブとレイラの姿が消えた。



………………

………………………………



 ……流石にこの速度で気配を断絶するのは不可能か。しかし彼奴も本気ではあるまい。付かず離れず、常に一定の距離を保ちワシとレイラから目を離さない。


 ならば更に速度をあげてみるか!


『………………ッチ!』


  小さな舌打ちがワシの耳だけに届いた。


………………



「シノブ様キョロキョロしてどうなさいましたの?」


「少しだけ問題が発生してな」


 薄暗い森奥でレイラを背負ったシノブは立ち尽くす。結局、彼奴は撒くことができず損をしたのは自分だけだ。メイデン……貴様の名は覚えておいてやる!


「問題ですの?その……わたくしが重……その体重……」


「いやレイラ殿の体重は重しにもならん。28.5キロか、一生背負っていられるわ!」


「そ……それはそう受け取ってよろしいの?」


 実際に一生背負っていたら邪魔だな。精々半年か?有事の際に下ろすのならばいけるか?いや!年老いたらどうする?前世のワシは一度腰をイワしている。



「今夜はここで野宿だな。野宿経験はあるか?」


「…………初夜。」


「ん?初めてか、体はかなり疲れておる。藁を敷けばすぐに眠りにつけるだろう。何か腹に詰めておけ」


 枯れ木を組み、集めた穂に火打ち石を当てる。カッカツと音を立て火種を木にくべ慎重に育てる。レイラは不思議な表情でみている。


「シノブ様は魔法適正Cですわよね?どうして魔法を使わないんですの?」


「理由があってな。レイラ殿に頼むべきだった。」


 ジルの魔法適正は知らないが彼女は指を鳴らすだけで火を点けた。レイラも簡単に火を点けるのではないか。


「……わたくしの適正はFですわよ。火をつけるなんて落ち着ける自室にこもっていても一時間以上かかりますわ。」


 火を見つめながら暗い表情を見せるレイラ。Fといえば下から2番目。魔法だけは使える状態なのだろう。カーター家の娘が適正Fか。


「焼けたぞ。食べるか?」


 木の枝に刺したキノコを差し出すがレイラは首を横にふる。


「わたくしキノコは嫌いですわ。シノブ様は好き嫌いする娘は嫌いですの?」


「どうだろうな?選べるのなら拙者も嫌いな物は食べたくはない。今は選べない、だから食べる」


 そう。選べない。生まれや魔法の才能、努力できる環境。この世は選べる事が限られている。だからこそ選べるのなら嫌いな事はするべきではない。


 レイラに差し出そうとしたキノコを口に運ぶ。


「これはレイラ殿が見つけたキノコだ。拙者は喜んで食べる。捨てるには勿体無いぞ。」


 こんがりと焼かれたキノコからは香ばしい薫り、レイラはツバを飲み込み


「やっぱりわたくしも……少しだけ……よろしいですの?」


「フフ、ほれ半分子だ」


 恐る恐る口に近づけ一口で食べるレイラ。途端に頬を緩ませ、


「……美味しいですわ」



 火で温まりながら横になったレイラは自らの生い立ちを語ってくれた。


カーター家の一人娘が魔法適正F。Gでないだけ体裁だけは保てるが家業を継がせる訳にはいかない。カーター家は3人の養子をとった。それぞれの分野において才能に満ち溢れた者達。


 養子を迎え入れた時点でレイラは両親に愛されるだけの存在。家を継ぐ為の勉強をせず、与えられた権力を意味も価値もわからずに行使出来る。


 それがレイラの為にならないとわかっていても両親はレイラを溺愛していた。他にレイラに嫌われない方法がわからない。



 養子の1人は条件として1つの願いを申し出た。レイラの側に付き彼女を立派に育てたいと。


 その者の真意はわからない。しかし目の前に天才がいては才能の無い者など努力の方向性すら見失う。


 結局、天才は才能の無い者達にとって毒でしかない。レイラを本心から思うのなら目の届かない場所にいるべきだったのだ。


 それを知るには遅過ぎもあり、



「流石に闇夜は危険と踏んだか。火にあたれ……メイデン殿」


  遅過ぎる事など存在しない。





シノブ&レイラのおまけと感謝


「え〜と!今回ブクマしてくれた人、本当にありがとうございましたわ!」


「作者のやる気に繋がる故、拙者達も大変喜ばしく思っておる」


「これからもわたくし達は頑張って行きますので暖かい目で見守りください!…………言えましたわー!」


「フフフ!拙者達もやろうと思えばできるのだ!脳ある忍びは刀を抜かぬ!」


「わたくしも隠してましたのよ!」


「ジル殿は早合点が過ぎるな」


「困った女ですわね」


「「 ハハハハハ! 」」



ーーーーーー


「釈然としないわ」

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