1.路地のおじいさん
1.路地のおじいさん
どうしてだろう証拠も無いのにこの世界が偽物に思う。
実際、妖怪の世界、死後の世界とか色々な世界が私たち人間の中で作り出されている。
人間はその世界を「偽物」と言う。
でも今いる私達人間の世界が偽物であると思う。
こんなくだらないことを一日に何回も遠くの世界を見ながら思う。
私は皆とは違う。友達なんて保育園の時以来居ない。
欲しいとも思わない。居るだけ無駄だと思ってる。誕生日の時にはプレゼント、休みの日に集まって遊ぶ。そんなことに時間を費やすのは勿体ない。だから要らない。
欲しいと思って頑張ったときもあった。でも結局は離れていく。だけど勉強やスポーツに困ったことはなかった。
「何かを失うとどこかが飛び抜けてる。」この言葉に何回救われただろうか。
(キーンコーンカーンコーン) あ、チャイムが鳴った。
今日もこのまま何もなくいつもと同じようにいつもと同じ事を考えて終わるのか…と思うとなんだか人生の一時を無駄にしてるようで自分がどんどん嫌いになっていく。
自殺をする人はこういうふうにどんどん追いやられてるのかな?ふいにそんなことを思った。
自殺なんかなんのためにするのか一度も分かったことはない。
いじめで自殺したところで覚えてるのは精々家族だけだ。
いじめてた人なんか覚えてない。
自分が楽になるためなんかに死ぬよりも今を乗り越える方が本当は楽なんじゃないのか私は毎回そう思う。
うん。とりあえず帰ろう。
帰り道。なんだかいつもと同じ道が嫌になった。どうしてかは分からない。でもどこを通ろうか迷いながら結局十分くらい同じ道を歩いた。
すると見慣れない細い路地を見つけた。人が一人通れるくらいの細さだった。
家に帰れるのかは分からなかったけど行くことにした。
二分ほど進んだら、急に開けてるところに出た。
また進んでいくとドラム缶の上にけして綺麗とは言えない80くらいのおじいさんが居た。
私は無視して通りすぎようとした。
通りすぎるときに少しお腹がえぐられるように気持ち悪かった。やっと通りすぎて解放された感じだった。もう走ろうと思ってたら、おじいさんが話しかけてきた。
あまりに急だったので私はビックリしてしまった。
でも私が振り向くと同時におじいさんは「この世界に飽きてでもいるのか?」と聞いてきた。
私は一瞬ビックリした。
そんなことを考えてた時期があったからだ。でもなんでおじいさんが知ってるんだろう。私は少し怪しんでた。
するとおじいさんが「私のこと怪しんでいるのだろう?」と聞いてきた。
まただ考えてることを当てられた。
「私はただ単にその人の考えや少し前に考えてきたことが全部分かるんだよ。」そう言った。
私にはおじいさんが嘘をついて私を騙そうとしてるようには見えなかった。
だから今までぶつかってきたことや悩みごとを相談してみることにした。
おじいさんは私の話を寝てるのか起きてるのか分からない細い目を小さく瞬きしながら黙って聞いてくれた。
私が話を終えるとおじいさんはしばらく黙っていた。
だけどすぐに我にかえったように話しだした。
「お前さんはよく考えてるんだな…。今の世界では何も考えずに運命に任せたり、自分の意見は言わずに文句だけ言う人。考えさえしない人だっている。そんな人と比べてごらん。お前さんはとてもいい時間を過ごしてるんだよ。」
そう言ってドラム缶から降りた。
最後に「でもなその考えをいつまでも留めておくのではなく、解決に導いてあげることが大切なんだよ。神様は解決できない人には託さない。」
そう言っておじいさんは路地の奥へと消えてった。
しばらくボーとしながら考えていたが色々と頭の中でこんがらがっていた。
でも私の考えていることは解決なんて出来るんだろうか?そこが一番心配だった。
だけど考えても考えても何も思い付かなかったから諦めて走って帰った。