やっぱり規格外らしい
教育ギルドの内装はまんま学校だった。というか多分大学だよね、これ。すごい大学感が出てる。
「入学試験に参加される方はこちらにお越しください。」
案内の人が看板を持って呼びかけてる。
受付最終日が近いからかあまり人は並んでいない。
「あっちか。いこ!」
「はい!」
ココロちゃんの手を引きながら私は短い列に並ぶ。ふふふ、ココロちゃんがいれば私は無敵なのだ!トラウマなんてしらないよ!
「そういえばいきなり私も入学試験に行くことになったけど、大丈夫なのかな。」
待ち時間中ふとそんなことを言ってみる。
「大丈夫ですよ。私も前もって来たわけじゃないですから。」
「そうなの?」
「より優れた生徒を見つけるために誰でも入学試験に受けられるようにしているみたいです。貴族の人は免除される方が多いそうですが、、、」
絶対裏で手を回してるな、これは。
まともに相手したくないなぁ。
「あ、そういえば私お金ないんだ!初めて街に来たから、、、」
お金が必要なら詰んでる、、、
「確かタダで受けられるはずです。入学時にお金が必要にはなりますが。優秀な方はこれも免除だそうです。」
これは悩みどころだ。優秀な成績を出せばお金を払わなくていいけど、目立つってことだ。いいのかな、目立って。
「サクラちゃんなら余裕ですよね!」
「そうだね!余裕だね!」
ぬわぁぁぁあ!ココロちゃんに流されたぁ!!軽すぎでしょ私ィ!!!
でもお金ないししょうがない。しょうがないことなんだ。
「で、でも試験の内容によるかなぁって」
これは1番大事だよ。出来なさそうなら帰るよ。
「確か筆記と実技があったはずです。内容までは毎年変わるのでなんとも、、、」
ぬぬぬ、、、流石にわからないか。足し算引き算とかなら余裕なんだけど、、、
「次の方どうぞー。」
っと、もう私たちの番か。
「本日はマラフォウィズ魔法学校入学試験説明及び参加申し込みにお越しいただき、ありがとうございます。お二人でのご参加ですか?」
受付さんがそんなことを言ってくる。
へぇ、マラフォウィズ魔法学校って言うんだ。言いづらいな。
ん?二人?
「複数人で受けられるんですか?」
「はい。複数人で1つの魔法を作られる方もいらっしゃるので。」
そうなんだ。まぁ人によって魔力量とか差がありそうだもんね。1人じゃ作れないから何人かでってのもあるのかな。私がココロちゃんと作るとしたら混成魔法とかかな。大災害待ったナシの!
、、、ココロちゃんの負担になるならしないよ?
おっと、違う違う。大災害なんて危ないからしないよ?
「複数で魔法を作るって言いましたけど、どんなものを作るんですか?」
「魔力を合わせて中級魔法を使う方がいますが、殆ど暴走します。なので初級魔法の派生をする人が殆どです。」
魔力を合わせるのって難しいのか。でも、、、
「違う属性同士は混ぜないんですか?」
「?そんなの出来るわけがないじゃないですか。」
、、、やっぱりか。
この世界、魔法はあるのにそれが全く進歩してない。
というか脳筋なのかな。単属性だけでごり押すだけの。もしくはイメージしづらいのかな。
他属性を混ぜたら絶対凄そうなのに。勿体ないなぁ。私とココロちゃんでできないか後で試してみよう。
大災害起こしたいわけじゃないよ?確認するだけだよ?
、、、子ども心発動してるかも。無性に試したくなる。
「とりあえず二人で受けます。」
「わかりました。それではお二人ともこちらのプレートをお持ちください。」
そう言うと白銀色のプレートを渡してきた。何も書かれていない。少しだけ綺麗だなって固まってしまった。
「これは?」
「ギルドカードです。これに魔力を通すとその方の情報が表示されます。冒険者になって仕事を受けたり、買い物をしたりする際に提出すると色々融通が聞きますよ。入学までそれらの特典は使えませんが。」
冒険者か、それも面白そうだけど、卒業してからになるのかな。妖狐の仲間たちを探しに行くのもいいかも!
それにしても1つ不味いことが。
この世界、獣人が迫害を受けているのだ。
ここに来るまでにかなりの獣人がボロボロで働かされてた。バレると私もそうなる可能性が高い。ぐぬぬ、、、
で、でも今は完全に人に擬態してるからバレない、、、よね?
少しためらっているとココロちゃんが
「獣人の方も受けられる方はいるのですか?」
ナイス!ココロちゃん!!よくぞ聞いてくれた!
「はい。一応受けられますが、、、殆どいらっしゃいません。獣人は魔法を使えない方が多いですし。使えても忌み子として同族に殺されてしまうので。」
うわぁ!この世界の闇だ!魔法を使ったら殺されるって、獣人はやっぱり脳筋一族なのかな?!そこで転生されなくてよかったよ!
「と、とりあえず受けられるということでいいんですよね?」
「はい。」
よかった。獣人ってバレても大丈夫かも。
「でも獣人はすぐ捕まって奴隷にされる方が多いですよ。もし知り合いに獣人の方がいるなら気をつけてくださいね。」
前言撤回。絶対バレちゃダメだ。
とりあえず私が獣人(なのかな?種族九尾だから微妙)ってバレてないみたいでよかった。
よし、ここでウジウジしてても始まらない。覚悟を決めてきたんだから、さっさと魔力を通しちゃえ!ええいままよ!
「えい!」
そして魔力を通すと、、、
「、、、」
「、、、」
「、、、」
プレートには名前と年齢と職業と、、、
ひとつの紋章が表示されていた。なんだろう。凄いカッコイイ、、、!
九尾が真ん中にいてその尻尾に9つの魔法が巻きついてる。その姿はまるで神話みたい!
「これは?」
「この紋章は魔法の適性属性を表示するものなんです。普通の方は1つの属性しか使えないのですが、、、この世界にあるはずの全属性4つだけでなく、9つ?!どういうことですか!?」
ま、不味い!種族だけ気にしてたけど、私の存在自体がおかしい事を忘れてた!!
風は私が作ったみたいだから火、水、土、雷がこの世界の基本らしいし、、、でも9属性?雪は水の派生だから違うし、他に何があるのかな。
「まさかまだ確認されていない魔法が存在するというのですか、、、?そうなると魔法の概念が、、、しかも何属性も使える、、、」
受付の方がブツブツ言ってるよォ!
九尾が写っていることよりも魔法のことに夢中になってるよォ!
「、、、コ、ココロちゃんはどうだった?」
「ふぇ?あ、そうでした!」
この空気を何とかするためにココロちゃんに話を振る。
そしてココロちゃんもプレートに魔力を通すと、、、
「、、、」
「、、、」
「、、、」
何このデジャブ、イヤーな予感がするんだけど。
この紋章、、、天変地異かな?すごいことになってるよ?!これまた神話みたいになってる!!
「、、、あなた達はどうなっているんです?」
「う、受付さん?」
「ただでさえ何属性も使える人が少ない中!1人は私たちの知らない魔法の適正があって!1人はいかにも天変地異が起こせますよみたいな力を持っているなんて!しかも一緒に受験するとか!おかしいですよ!」
受付さんが壊れた!
「、、、受付さん。」
「なんですか!」
「落ち着いてもらえますか?」
「できるかァァァ!!!!!」
た、多分これが素なんだ。うん。
それから受付さんが冷静になったのは1時間後だった、、、人少なくてよかった。
そういえば適正に気を取られすぎて職業について全然触れてなかったけど。私以外に巫女っているのかな。というか何すればいいかもわからないけどね。
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手続きが無事(?)に終わって細かい説明を受けた。
試験は一週間後。試験会場は魔法学校で。内容は筆記と実技。この試験の結果でこれから過ごすクラスが決まるみたい。
(ちなみに職業は関係ないらしい。でもココロちゃんはどんな職業なのかな。後で聞こう。)
まずは魔法学習クラス。魔力はあるけど魔法についての知識があまりない人達が入るクラスだそうだ。勉強ができない人の集まりみたいでここには入りたくない。実際治安は悪いみたい。
次に魔法実践クラス。こっちは魔法の知識はあるけど魔力が少ない人が入るクラス。このクラスは逆にガリ勉が多そう、、、私とは気が合わなそうだね。
最後に魔法優秀クラス。ここは知識と魔力が十分ある人が入るクラス。どうせなら目指すはここだね。ただプライド高い人が多そう、、、あまり関わらない方がいいんじゃ?
やっぱりどこも私に合ってなさそうなんだけど、、、
「ココロちゃんはどこに行きたい?」
「どうせなら魔法優秀クラスにとは思いますけど。」
「だよねぇ。」
考えてることは一緒みたいだね。
いや、もしかしてココロちゃん、普通に優秀クラス目指してらっしゃる?
一通り説明が終わるとギルドカードのコピーを貰った。
「これを使うと図書館を自由に使えるようになります。ぜひご活用ください。」
便利だね。でもコピー?
「何故コピーを?」
「まだ正式に本校の学生ではないですから。あ、本物はお預かりします。」
そりゃそうか。入学試験前にちゃんと勉強してねってことだね。
「それでは来週の試験でお待ちしております。」
「ありがとう。」
「ありがとうございました。」
そうしてギルドから出ていく。
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「さて、これからどうしようか。」
「とりあえずご飯にしませんか?結構時間がかかっちゃいましたから」
「よし、じゃあ私がお稲荷さんを出してあげよう!」
「それもいいですけど、、、食べ歩きしませんか?せっかくの王都なんですし。」
「え、でもお金、、、」
「簡単なお仕事をさせてもらえば大丈夫です!」
「そ、そうかな、、、」
「そうです!それじゃあ行きましょう!」
そしてココロちゃんはどんどん先に行ってしまう。
「ま、まってよー!」
結局その日は夜まで回り続けたんだけど、それはまた別の機会に、、、
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会議室
「見たことも無い紋章が浮かんだ受験者がいる?」
「えぇ、これなんですが。」
「、、、これは。」
「いかがしましょう。」
「とりあえず実際にその実力を見てからでなければ。マークはしておこう。」
「了解しました。」
「(この九尾の紋章は、、、かつて、、、)」