少女と魔法と食べ物と
本日2話目です。
何時間寝ていたのかな。
確か午前中に事故が起きて、太陽が傾いて夕日が、、、7時間くらい?体はもうピンピンになってる。でもかなり寝ていたみたいだね。
アマテラスさまに会ってきてるからその分時間が経っているのかも。あの場所と意識つなぐの大変そうだからなぁ。
「あ!やっと起きてくれました!よかったぁ、、、」
声のするほうを見てみると、そこにはあの女の子がいた。
身長は同じくらい。見た目は黒髪ですごく健康的な肌。顔も整っててお人形さんみたい。つい見惚れて、、、なんか私いつも見惚れてる気が。でも服はボロボロになってる。長いこと歩いてきたのかな。
私の事を心配してくれてたのか、泣きはらした後がある。まぁあんなことが目の前で起きたら死ぬんじゃとか思うよねぇ。
でも見ず知らずの人に心配をかけてあげられるなんてこの子はなんて優しいんだろう。普通無視だよ、突然吹っ飛んできた人の事なんて。怖いもん。
あと、私は道を外れた所にある木のところまで移されていた。どうやって?まさか力持ち?
とりあえずお礼を、、、
「えーと、そ、その、ありが、とう?」
なんで疑問形になったァァァ!
それにたどたどしいし!
普通にお礼も言えんのか私はァァァ!
「ほんとによかったぁ、、、もう起きないんじゃないかって、心配で、心配で、、、!」
まずい。泣きそうになってるよこの子。
「もう大丈夫だよ?怪我とか治ってるし。」
「それでも、です!あの時は本当に酷かったんですから!腕とか足とかが変な方に向いてて、、、本当に生きてるのかなって、、、止めてあげられなかったって、、、」
止めようとしてくれてたの?!あれを?!
「とにかく無事でよかった、、、よかったよぉ、、、」
私が無事だったことに安心して泣き始めた女の子を私は優しく抱きしめて撫でてあげた。
心配かけてごめんね?
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しばらくして、女の子が泣き止んだのでお互い夜営の準備をしながらお話をすることにした。流石に真夜中を女の子2人で歩くのはまずいよ。何故か女の子が夜中も進みたいとか言ってたけど。何とか泊まるように説得した。
とりあえず自己紹介。
「私はイナリ・サクラ。あなたは?」
「え!家名持ちですか?!あ、あわわ、こ、これはとんだ失礼を、、、どうかお許しください!」
「え?カメイモチ?」
「はい。家名持ちです。」
どうやらこの世界に苗字を持ってる人はほとんどおらず、貴族や王様くらいしかいないのだそう。
「ですのでどうかお許しを!」
「い、いや!私そんなに偉いような人じゃないから!」
「でも、、、」
「いいから普通にして!別に怒ったりとかしないから!」
「、、、わかりました。」
この世界貴族と平民の差別が酷いのかな。これからはあまり苗字出さないようにしなきゃ。
「ところであなたは?」
「ココロといいます。どうぞよろしくお願いします!」
「ココロか。いい名前だね!」
「ふぇ?!そ、そうですか?えへへ、、、」
どうやら名前を褒められたの初めてみたいだね。貴族とかいるのなら日本語っぽい名前って少なくて差別受けそう。
「それじゃあテントを立てよう。」
アイテムボックスからテントを出すと、
「わ、私が立てます!」
「いやいいよ、私が立てるから。」
「でも、、、」
「じゃあ一緒に立てようか。」
「わかりました!」
身分って大変だなぁ。
しばらくして。
「よし、テント出来た!」
「キツネのテントですか。」
「そう!かわいいよね!」
「はい!すごくかわいいです!」
さっきまでオドオドしてたのが嘘みたいにいい笑顔。うん!やっぱり女の子は笑顔が一番だね!
「ところでなんでキツネのテントなんですか?」
「えーと、キツネが好きだから?」
どうしてかはあのキツネ好き神様に聞いてください。
「それにどうしてあんな速度で転がっていたんですか?テントはどこから出したんですか?見たところ持てそうには思えないんですが。」
どうやら今まで気になっていたことが一気に出てきたようだ。
「ちょっと待って、順番に話すから!」
、、、どこまで話せばいいんだろう。
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「サクラさまが九尾、、、」
「うん。」
「ものすごくお強い、、、」
「うん。」
「なんでも入れられるアイテム袋、、、」
「うん。」
結局私の事全て話しました!しょうがないじゃん!かわいい子に質問攻めされたら答えるしかないもん!異世界から来たというのは黙っているけど。
「それで大怪我しても無事だったんですね。」
「、、、そうだね。」
神様の加護のおかげなのも黙っておこう。多分驚きすぎで倒れる。
「あ、あの、もしよければ九尾の姿になって頂いても?」
「いいよ。」
クルンと回ってへーんしーん!ふわふわ九尾さん参上!
「ふわぁ!」
「ど、どうかな?」
「かわいいです!もふもふです!フワフワです!」
よかった。化け物とか言われなくて。
「さ、触ってもいいですか?」
「いいよ。」
「で、では、、、」
そう言ってココロは私の身体に触ってくる。
頭、顎下、背中、、、
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テクニシャンでした。ふにゃふにゃにされちゃった、、、あんなの、耐えられないよォ、、、恥ずかしいよォ、、、
「だ、大丈夫ですか?」
「ふぇ?う、うん、、、」
もうココロ無しじゃ生きれないかも、、、あの感覚は癖になっちゃう、、、
ココロも夢中で触ってたみたいだし、、、
「、、、」
「、、、」
き、気まずい。何とか話を、、、
「そ、そうだ。ココロはどうしてここにいるの?」
率直に気になったことを聞いてみた。
「私は王都にある魔法学校の入学試験に参加しようとしていたんです。でも、結構ギリギリで、、、」
「え?!そ、そっちの方が大事じゃないの?!」
まさかの人生の超一大イベントの邪魔してた!
「でももういいんです。今から行ってももう間に合わないと思いますし。」
まさか入学試験の邪魔をしてしまったとは、、、完全に私のせいだ。
「わかった!私が王都まで連れて行ってあげる!」
「え?で、でも。」
「いいから!元はと言えば私が事故ったせいなんだし。ここから王都までどのくらい?」
「あの道を1週間程走った先です。」
「じゃあ間に合うね。」
多分私なら1日もせずに走破できる。
「で、でも」
「いいから。私が王都まで連れていくよ。明日に備えて今日は寝ようか。」
「、、、わかりました」
私のせいで人生を狂わせて欲しくない。そんな思いを胸に今日は眠りについた。
因みに九尾のまま寝た。ココロにお願いされて抱き枕にされちゃったけどその温かさに包まれてつい眠く、、、なりませんでした。寝ててもテクニシャンは変わらなかったよ。
寝顔が可愛かったから許す!
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早朝。
朝ごはんのお稲荷さんを取り出す。
「それはなんですか?」
え!まさかお稲荷さんを知らないだと!
「これは稲荷寿司っていうの。よくお稲荷とかお稲荷さんって呼ばれてるよ。」
「お稲荷さんですか。食べ物に「さん」付ってよっぽどお好きなんですね!」
「え?あ、うん。」
確かにこのお稲荷さんはものすごく美味しいけど。いつの間にかお稲荷さんって呼んじゃってるけど。
「それにしても朝からそのようなものを食べられるなんて羨ましいです。」
「ココロが食べてるのは?」
「モモリの実を乾燥させたものです。私のいた村の特産品なんですよ。乾燥させると美味しくなくなるんですけど、、、」
へえ、そんなものがあるんだ。ぜひ食べてみたい。
「それじゃあお稲荷さんと交換しよ?」
「え!いえ、大丈夫です!交換だなんていいですよ。かなりの安物ですから!」
「私が食べたいからいいんだよ。食べたことないから気になるの。」
「、、、やっぱり貴族の方なんですか?」
「、、、違うから。」
何とか頼み込んで交換してもらった。結構固くただったけど。よし!早速食べてみよう!
ぱくっ。甘い。でも食べたことあるような味。乾燥してるから知ってるものとは全然違うけど。
、、、これってもしかして?
「もも?」
「違いますよ?モモリの実です。」
「あぁ、いや、ひとり言だよ」
「?そうですか。」
うん。完全にももだ。水分が飛んでかなりまずいけど。風味は完全にももだ。
お稲荷さんを食べてすごい感動した様子のココロに聞いてみよう。
「これって乾燥させてないものってあるの?」
「生食ですか?できますけど、すぐに腐ってしまって村の外に持ち出せないんです。本当はもっとみずみずしくて甘くて美味しいものなんですけど、、、」
ももだからね。腐りやすいとか当たり前だ。
「缶詰とかってないの?」
「缶詰?」
「保存するための容器みたいなものなんだけど。」
「ないですね。」
「そうなんだ、、、冷やして運ぶとかは?」
「冷やすって?」
「冷やすを知らない?!!!」
なんてことだ。冷やすことを知らないだなんて。そりゃ持ち運べないよ。すぐ腐るよ。何とかももを生のまま食べたい。というか他の食べ物とかどう運ぶの?
「モモリの実の他に食べ物を運ぶ時はどうするの?」
「塩につけたり乾燥させたりですね。」
塩はあるのか。でもそれだけ?もしかして運搬業廃れてる?
「運び方は?」
「歩いてです。」
「え?馬車とかは?」
「馬車なんて貴族しか乗りません!」
ダメだ。この世界の運搬業は死んでいるみたいだ。
とりあえず冷やすことを教えて保存を効くようにしなきゃ。
「氷ってわかる?」
「氷は知ってます。北の地の特産品ですよね?」
ん?特産品?
「氷は北の地から持ち出すとなくなってしまうので、王様くらいしか食べれないんだそうです。」
うそ!どこの物語?それ!
「氷魔法ってないの?」
「氷が魔法で出来るんですか?そしたら特産品じゃなくなりますよ?」
それもそうか。これは一大事だ。なんで水魔法があるのに氷魔法を覚えてないのかなと思ったらそもそもなかったのか。もしかして出来ないなんてことはないよね?
「アイス!」
そう言って魔力を込めてみると水が出てきた。やっぱり氷呪文はないのかな、、、そう思っていると、
『「ベクトルチェンジ」発動、対象、水。原子の動きを固定。成功しました。また、この世に氷魔法の概念が発生しました。初級からアイス、アイスランス、アイスフィールド、絶対零度です。オリジナル魔法として氷雪の城を取得しました。』
氷雪の城(MP-50〜)消費MPによって大きさの異なる氷の城を生み出す。
、、、やってしまった。概念生み出しちゃった。でもこれで皆が氷魔法を使えるはず。社会貢献だね。
オリジナル魔法も城を作るとかいうぶっ壊れ。ま、まぁ妖狐の姫だからね、、、うん。それでもおかしい。
手の上には拳程の氷が出来てる。ひんやり冷たい。
「それは?」
「氷だよ。」
「氷!?え、本当に?」
「うん。触ってみて。」
「はい。、、、ひゃ!」
「冷たいでしょ。」
「はい。」
よかった。冷たいって感覚はわかるみたい。
「これを使うと物も冷たい!ってなって保存がきくようになるの」
「そうなんですか!」
「この氷を維持出来ないとダメだけどね。」
「それでも凄いです。氷を生み出して、その使い方までわかるなんて。」
伊達に異世界から来てないですから。
「ココロ、あなた魔法学校に行くんでしょ?覚えてみたくない?これ。」
「こんな魔法が使えるようになるんですか!?」
「私が出来たんだからココロもできるよ」
「でも水属性と雷属性しか適性が、、、」
雨かな?でもそこまであるなら風属性も覚えてそうだけど。
「氷魔法は水魔法の派生だから出来るよ。それと風魔法は使えないの?」
「風魔法?!風も操れるんですか?!そんな魔法知らないですよ?!」
風魔法も無かったの?!
「多分ココロなら扱えるはず。王都に向かいながら練習していこう。」
「え、いや、でも、、、」
「いいからいいから!やってみるものだよ!当たって砕けろ、だよ!」
「砕けちゃダメですよ!」
そんなことを言いながら朝食を済ませて、軽く体を動かして、テントを仕舞って、九尾になって、、、
王都に向けて出発した。
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背中にはココロが乗っている。
大丈夫かなと心配したけど、力制御のスキルのおかげで安定して走れる。ココロはと言うと、
「速いです!もふもふです!」
って興奮しっぱなしだった。
「それにしても誰とも合わないね。」
「そうですね。まぁこの道はあまり需要のない道なので。」
「そうなの?」
「はい。昔は結構冒険者が使っていたみたいですけど、今はスライムしかいませんし。」
「そういえばなんでスライムしかいないの?」
「諸説ありますが、国が総力を上げて結界を張ったとか、神様が争いをうまないためにこの地を浄化したとか言われてますね。」
あの神様ならしそうだな、、、絶対めんどくさがり屋だもん。
「おかげで私一人で村から王都まで行けるんですよ。」
「それじゃあ神様に感謝しなきゃね。」
「国ではなくて?」
「そう、神様。なんかパパーってやりそうじゃない?争いがめんどくさくて。」
「面白いことを言いますね。」
「あながち間違ってないかもよ?」
そうしてしばらく2人の少女はくすくすと笑いあった。
氷魔法を使えるようにするための話でもありますね。
ココロちゃんは雨を司る、、、?