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第二項 [二人の着師]

「兄ぃ!、居る?」

木の戸が開いた勢いのまま壁にぶつかりミシミシと悲鳴を上げる。

「...っさい、寝かせろや」

昨日は街の壁外にある森に巣食う魔獣達の討伐をつい五時間前に終えて帰ってきた...朝日が昇り始めた時に帰ってきてやっと眠気が来た時に...この仕打ちか。

「なぁ...ユキ?俺の事、嫌い?」

「どちらかと言うと」

「あぁ、そう...で?何だよ」

今は布団が恋しいが話の内容次第で恋しい物が変わるかもしれない金貨とか銀貨とかお金とか

「薬草集めに行こっ!」

...寝よう、布団が恋しい。

「兄ぃ!、寝ようとしないでく↑ださい↓」

「変なイントネーションで言うな、薬草なら好きなだけ取ってこいや....」

毛布がおかえりと言わんばかりに温もりをくれる。

「可愛い妹がゴブリンにでも襲われたらって思わないの!?」

地団駄を踏むたびに床が軋んでベットが揺れる

「お前は着師だろうが」

「着師でも女の子!、襲われる〜犯される!」

耳元で叫ぶ妹

「っせぇな!」

それを毛布で仕方なく制圧する俺

「毛布の一撃は重い!」

「知るか、俺を静かに寝かせろ」

そそくさと部屋を出て行く妹の背中を見てホッと一息

...あぁ、アイツ精霊着着やがったな...

『そんなに寝たいのなら叶えてあげるわ♡』

俺の一番嫌う精霊 淫魔サキュバス

「ハァ...お前は兄の自律神経をズタズタにしたいのか?」

ここまで妹相手に殺意を覚えたのは大切に取っておいたプリンを食われた時以来だ。

「俺が死んだらお前の枕元に化けて出てやる」

“離れないで”と言う毛布を押し退けて動く事を拒否する身体を無理矢理起こす。

「ウチのワガママなお姫様をどうにかして欲しいよな、ほんっと...嫌になる」

まるでそれを見計らったようなタイミングで一階のドアが開く音が聞こえた。

「アキさん!ユキさん!いらっしゃいますか!」

憲兵隊の隊長の声が家に響く

「分かった、今行く」

階段を降りるとフルプレートメイルを纏った兵士...もとい隊長が居た。

「すいません、ギルド未所属の貴方にお手を煩わせてしまうのはとても申し訳ないのですがこのナイフに彫刻された物は...

「確かに魔王軍所属の魔族に与えられる物だな」

魔王は確か討伐隊を派遣されて三年前に討伐されたと聞いた。

「先日近隣の集落が襲われ陥落してしまったらしく生き残った少女が護身用にと渡されたようで...」

「兄ぃ、薬草集めに行こう?」

話の内容と深刻性を理解していない妹

「お前なぁ、少しは空気を...まぁ良い...」

隊長の方に身体を向き直して

「それはつまり街から直々の調査依頼か?」

昨日の討伐は素材が報酬として受け取れた

調査ならそれも魔王残党兵であればそれ相応の報酬額が貰いたい...いや、食費、光熱費が丸々一年分払えれば満足だ。

「兄ぃ?、顔がにやけてるヨ」

語尾を片言にした妹と

「報酬は言い値で払います」

凄い途方も無い事を仰る隊長殿

「言い値?魔王軍とは言え残党兵だろ?」

王個体ロードかオーク種、リザード種どれも知能がある分幾分か苦戦はするが言い値で払う程危険では

ない。

「し、しかしギルド未所属の貴方がたにお手を煩わせるのですからやはりそれに見合う報酬を...」

ギルドの冒険者を派遣するのはやはり高い、しかし討伐隊のような精鋭は送られてこないという詐欺っぷり

「ギルド冒険者を雇うくらいなら俺らに依頼した方が確実って事なのか?」

ギルドの銅、鋼と比較すれば俺たちは強いだろうがギルドの討伐隊所属の白銀、金、銀の奴らとは比較するのも憚られる。

「貴方がたしか頼れる方がいないのです」

...ギルドは無能扱いかよ。

「それで俺らは調査してくれば良かったのか」

断れたらどれだけ楽か、昔から頼まれた事は断れないそういう性格だった。

ウザったい妹にさえ頼まれると断れない。

「それでは受けていただけますか!、ありがとうございます!はい、調査のみで大丈夫です。」

ご満悦でなにより...

「兄ぃ、いつ出るの?」

お前は薬草集めがメインか...

「すぐに出発だ、精霊着は1着あれば充分だろ」

残党だけなら1着だけあればいい

「兄ぃ?にいやん?兄貴?兄様?」

何だよ何なんだよ

「残党だけって確信は?1着で充分なの?」

ウザいお前のそういうギャップ大っ嫌いだ。

「お前が余興用のスライムとか水霊の精霊着も主力だと言い張るなら何着でも良いんだぞ」

上位精霊の精霊着1着有ればゴブリン1000体を一気に相手できるだろう

「なんだ?妹に笑い者になれと?」

何着も持って行かないのための上位精霊なんだが

「お前のセイレーンは飾りか?」

呆れて言ってしまった。

「な訳ないじゃないですカ!」

俺と同じ遺伝子が組み込まれていると思うと背筋が凍る。

「今凄い不名誉な事考えられた気がすr

「さ、そうと決まれば働くか、お前も明日を遊んで暮らしたいなら1日働け」

妹の戯言を遮って

「...図星かてめぇこの野郎...」

「なんとでも言え、ほら行くぞ。」

妹を適度にあしらって玄関にあるコート掛けへ歩いて行く。

「そ、それではお願いします!...失礼しました!」

隊長が敬礼をし去っていく

「さて、今回は長丁場になるんだろうな...隊長は調査だけで良いと言ったがそれが本当にそれで終わるのかどうか」

「兄ぃ、戦いは...任せた(グッ!」

親指を立てて言う妹にこれほどまでに握り拳を見舞いたいと思った事がなかった。

「お前も戦うんだよ....何のためのセイレーンだっての」

舌打ちを一回

「おい、露骨に舌打ちやめろよ...心に響く」

ポカポカと俺の背中を殴るな。

「...まぁ、覚悟はしとけよ、今日が俺かお前の命日になるかもしんねぇんだから」

「兄ぃが居なくなれば遊び放題デ〜ス」

「野垂れ死ね、クソ妹」

適当に一蹴

「こっの野郎、可愛い妹にクソはないだろうがクソは」

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