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第22話  王都エルフィア到着

拙文ではありますが、ブックマークや感想、評価をいただけると励みや参考になるのでできたらお願いいたします。

また誤字脱字並びに気になる点等ありましたらご一報頂けると幸いです。

 「おお、これはローリアと同じぐらい大きいな!」


 俺達はローリアを発ってから二週間後に、フィアット王国の首都エルフィアに到着した。その間馬車の中ではずっと魔力操作の練習をしていたのだが一向に魔力の動きが広がる気配はない。でも魔力が動かせるというだけで俺としてはワクワクが止まらないので毎日常にやるぐらいでも苦は無い。

 そして今、俺達の前にはローリアの物にも負けず劣らずな巨大な城壁がそびえている。ここしばらく地平線が見えるほどの平地に伸びる街道を馬車が走っていたので、こんな巨大な人工物は久しぶりで少しテンションが上がってしまった。


「でもここは城壁がこの一枚だけなんだよ。ローリアは小さい町だったのが段々と拡張したせいで三重の城壁になってしまっただろう? でもここはローリアから遷都されたときに新たに作られた都市だから、当時のローリアの大きさを参考に余裕を持った広さに城壁が設計されたんだ。中に入るとわかるけど、区画整理もしっかりしてて道が歩きやすいよ」


 ロイが言いながら笑う。相変わらずこの王子様はイケメンだし笑うと見える歯が白くて眩しい。


「それにしても相変わらず行列がすごいな。もっとサクッと入れないのか」

「馬車の場合、貨物の税金を調べるために時間がかかる荷馬車と同じ列に並ばないといけないからね。しかたないよ」


 俺達の前にはエルフィアの城壁門に続く長い列が続いている。ローリアの時と同じようにまたしても順番待ちをしているのだ。


「あら、あなた達これを待つつもりなの? こんなのここで馬車を降りて行っちゃえばいいじゃない。ほら、他の乗客たちも降り始めてるわよ」


 ヘレナの指すほうを見れば確かに他の客たちがぞろぞろと馬車を降りて城壁門の方へと向かって行っっている。え、もしかしてこれ普通に降りて徒歩で入ってもよかったの?

 ローリアのときは俺もスティーブは言わずもがな、アレクとリザも大きい街は初めてっぽかったから誰も気が付かなかったのか。御者のおっさん、そういうことは教えてくれよ……。

 ロイの方を見れば彼もまた知らなかったようで驚いたような顔をした後に苦笑している。王族なら乗合馬車の慣習なんてしらないだろうな。



 結局俺たちも馬車を降りて歩いて街へと入った。門で大銅貨五枚の通行税を払って、十五日間有効な納税証明書を受け取ったらとりあえず宿を探しに向かう。城壁内は馬車が四台はすれ違えるのではないかというぐらい通りが広く作られていて、実際に馬車がひっきりなしに行き交っている。更に驚くことにそういう広い通りには歩道が設置されていて、通り沿いの店は歩行者でにぎわっている。文明レベルが近世に到達しているのではないかと錯覚を受けそうになるが、おそらくタイミングの良い遷都でローリアでの不満をきちんと洗い出しこちらで改善する能力を持った有能な役人でもいたというだけだろう。


「この街はちゃんと区画が整理されてるだけじゃなくて同業者が一箇所に集まるようにされてるからわかりやすくて好きよ」


 ヘレナがそういいながら迷いのない足取りで歩みを進めていく。さすが長生きなだけあって彼女は度々この街を訪れているようで色々と教えてくれた。それによれば、同業者間で競争させるために店舗を出せる場所が業種によって決まっているらしい。なので金物を買いたければ鍛冶屋街に、食事をしたければ飲食街に、そして今回のように宿を取りたければ宿屋街に行けばいいのだとか。なんだか若干、某ネズミのテーマパークのエリア分けを思い出す。そうして道の両脇に広がる様々な店舗を眺めながらヘレナの案内に従ってしばらく歩いていくと、確かに宿屋がいくつも見えてきた。


「今日の宿も安宿でいいわよね?」

「あ、ああ……、そうだね。私も手持ちがないことだし宿は安い方が良いだろう」


 ロイの言葉を受けてヘレナは路地へと入って、良い感じに寂れた宿を選んだ。おそらくロイはそろそろ良いベッドで眠りたいのだろう。だが残念ながら金銭的な余裕は皆無なので木に毛布を敷いただけの硬いベッドに慣れてもらうしかないな。なお、宿のお値段は三人一部屋で素泊まり銅貨五十枚にしてくれた。当たり前のように相部屋を選んだが、このヘレナさんは男と相部屋でも何も感じないようで俺達の前でも平気で着替えなどしてきてこっちが逆に慌てる有様だ。長いこと生きてるようだからその辺も俺たちとは感覚が違うのかもしれないな。


 さて、とりあえず荷物を部屋に入れたら荷物の整理やら洗濯やら雑用を済ませたいが、その前に三人で話し合いの時間だ。まあまだ日も高いのでそれなりに時間の余裕はあるしな。


「ヘレナとロイ、ちょっといいかな。やっとエルフィアまで来たわけだが、これから南西大陸への連絡船が出ているフィアット王国西端の港まで向かうってことでいいんだよね?」

「ああ、それで合ってるよ。連絡船なら銀貨で乗れるはずだからね」


 ロイは荷物を整理する手を止めこちらを向いて言う。ヘレナは……何か食べてるな、何だあれ、残った保存食の干し肉か? まあいいや、放って置こう。


「じゃあ数日ここで滞在して必要なものを買ったりしたら、西へ向かう馬車を探そうか」

「そうだね、それでいいと思う。まだライト王国から私への攻撃は無いとは思うけど、しっかり護衛してくれよ」

「それはもちろん依頼だからちゃんと護衛させてもらうよ。ただ乗合馬車には護衛の冒険者が大体いるから俺達の出番はないだろうけどね」


 って自分で言っておいてなんだけどこれフラグじゃないよね? うん、きっと大丈夫。


「とにかく、ロイは目立たないようにしておいてくれればいいと思うよ。あとヘレナも目立たないように気をつけてくださいね」

「ああ、目立たないのは気をつけているからね」

「私も任せてちょうだい。私はこれでも目立たないのは得意なんだから」


 エルフってだけで目立つのに、レインボーヘアーに輝く鎧着ておいて何を言っているんだこの人は。まあとりあえずここまで問題は起こしてないからいいんだけどさ。

 ともあれ方針は決まったので話し合いは終了となり、各々荷物の片付けや洗濯などへ戻った。

 明日は少し寄りたいところもあるし、俺も今日のうちに雑事は終わらせておこう。

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