第12話 戦いの後で
いずれ章立てしますが、ここまでで一章が終わりです。本来ここまでを序章にしてもいいくらいなのですが。
そしてこの話は章のエピローグ部分なので若干短いです。
次話から二章に入りやっと展開が大きく動く予定ですが、少し投稿が遅くなるかもしれません。
ともあれここで話に一区切り付くので評価や感想等いただけると嬉しいです。
また誤字脱字並びに気になる点等ありましたらご一報頂けると幸いです。
「皆大丈夫なの!?」
「幸い死人は出てねえからな。ただ冒険者を続けるのが厳しい奴もいるが……」
フォールンオオカミやゴブリンとの戦いの後、俺達は野営地で一泊してそれからローリアギルドへと帰還した。負傷者も一刻を争う事態にはなかったことから応急処置をして、他の冒険者の助けを借りながら帰ることができた。
「リザは腕の具合はどうですか?」
「ふふっ、アルさんは心配しすぎです。そりゃあまだ痛みますけど、大丈夫ですよ」
「リザなら大丈夫だって! 昔からしょっちゅう転んで怪我してたしな!」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
リザの右腕はオオカミに噛み付かれて歯の形に穴がいくつかあいてしまった。だが少し高いポーションという魔法薬を飲んだのでその傷も塞がってきているようだ。ポーションは万物に極僅かに宿る魔法的な作用を、魔力操作で抽出した薬品で、魔法と同じような作用をもたらす。リザはあらかじめ買っておいた回復魔法の効果のあるポーションを飲んだ瞬間に傷が塞がり出したのでそれを見たときは驚いたものだ。
そのあと確保しておいたイノシシの毛皮と牙、そして肉をギルドの素材買い取りカウンターへ持っていく。素材は商業ギルドで買い取ってもらった方が高い場合もあるが、逆に安く買い叩かれることもあり、相場に精通していないなら冒険者ギルドで売るべきらしい。
冒険者ギルドの買い取りカウンターには眼鏡の男性職員が座っていた。
「ふむ、なかなか状態の良い毛皮と牙ですね。これなら肉も合わせて大銀貨八枚と銀貨四枚で買い取りましょう」
思ったより高くて思わず顔がほころぶ。
これならポーションや備品にかかったお金を差し引いても十分な黒字だろう。
受け取ったお金を三人で分ける。
「じゃあ、帰りましょうか」
「はい!」 「おう!」
そうして、俺達は鳥の羽休め亭へと戻り、少し豪華な夕食を食べてから部屋へ戻った。
自分の部屋に戻って、真っ暗な中で革鎧を外してベッドに横たわる。木の板に毛布を敷いただけの硬いベッドだが、野営も多い冒険者にとっては毛布があれば十分だ。
そんな硬さを背中で感じながら目を瞑って考える。俺はこれからどうするべきなのかと。
一番最初に転生した時は、全然上手くいかなかった日本での生活をやり直せればとも思っていた。もっと最初から全力で生きていれば、俺だってリア充になれるんじゃないだろうかと。だけれど、こっちの世界ではもっと色々上手くいかなかった。運がなかったのかもしれないが……それなら今のところ生き残ってこれた今世はどうだろう。
今こそ全力で本気を出して生きるべきではないだろうか。
俺は今、何を目指してる?
スティーブと別れたときに全力で生きると決めたはずなのになぁ……。
全力って難しいな。
そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちていった。
そう遠くない未来に、俺は全力を出すことになるのを今はまだ知らぬままに。