作品の流行の変化は「設定の最適化」で決まるのではないか?
僕の個人的な感覚ですが、なろうのトレンドを長らく席巻していた、異世界ものというジャンルが、『最近、ほんの少しだけ落ち着いてきたのではないか?』と感じるようになりました。
実際は自分が思うほど、勢いは落ち着いてないのかもしれませんが、ランキングで『転生』や『転移』というキーワードが見られないハイファンタジー作品が少しずつ出ているのを見る限り、次の流行に向けて緩やかにシフトチェンジしているような印象を感じます。
僕は以前、エッセイという形で、次になろうで流行るジャンルは何なのだろうかと予想したことがあり、その時に、
『現在、異世界ものが流行している理由は、以前のなろうのトレンドだと思われる、VRMMOというジャンルの最適化による結果ではないか?』
という説を立てました。
僕の説が正しいか間違っているかは、今の時点では何とも言えませんし(そもそも自分が勝手に説を出した上に、「これだ!」と、勝手に決めつけるのも馬鹿馬鹿しい話ですが)、他にも多くの説があるとは思いますが、多分、事実の一端は掴んでいるのではないかと思っています。
さて、設定の最適化とは何かというと、簡単に言うと「作品の中で出てくるムダをなくす」ことです。
ムダをなくすというなら『効率化』という表現が適切かもしれませんが、他の書き手や読者の反応に合わせて傾向を変えていく側面もあるため、あえて最適化という言葉を使用してます。
『異世界ものが流行している理由は、以前のなろうのトレンドだと思われる、VRMMOというジャンルの最適化による結果ではないか?』
という説を書きましたが、その説に至った理由が、VRMMOものと異世界転生ものの導入の違いが、『別世界の中に入るきっかけが、ゲーム機を使うか、死ぬ(or召喚される)か』だったからです。
そこから先の物語はどうなるかは書き手それぞれなので、ここでは書きませんが、VRMMOものと異世界ものとでは、別世界に行くガジェットであるゲーム機が排除されているのです。
これは「別の世界に転生するなら、ゲーム機いらなくね?」、「最初しかゲーム機いらないじゃん」と疑問に思った、多くのVRMMOを読み続けた読者や、同じくそのジャンルを読んだ書き手が、緩やかにムダをなくしていった結果、異世界転生が流行したのではないか、というのが僕の考えです。
先ほど書いたランキングの話でも、『転生』、『転移』という言葉がなくなった、と書きましたが、これも同じく、
「最初から現実と違う世界を舞台にするなら、転生するくだりなんて必要ないだろ」
と、疑問に思った、あるいは気づきはじめた読者や書き手が、ムダをなくした結果なのではないかと思っています。
ランキングに、最初から主人公が異世界で暮らしている純粋なハイファンタジー作品が上っているのを見る限り、今でも最適化が進みつつあるんじゃないか、というのが僕の考えです。
裏を返せば、現在流行しているトレンドのムダとは何かを突き詰めて考えれば、未来のなろうの流行を先取りすることができるのではないでしょうか。
とは言え、まだまだ異世界ものが台頭しており、純粋なファンタジー作品も芽が出始めたといった感じなので、現段階ではムダが何かを見極めるのは難しいかもしれませんが、今の流行に乗っかる以外にも、未来の流行を先取りして作品を書くのも、また違った面白さが出るのかもしれません。