信じる心 中編2
「えっ!?」
四人一度に思わず声を漏らした。そして、四人は空を見上げた。すると、そこには天文図があった。
「あれって天文図じゃない!?」
「あぁ、そうだ、咲」
「卓也さん!後ろを見てください!」
白虎か…咲には青龍、孝は朱雀、そして永坂は玄武か…
「これはどういう意味ですか?」
「これは星の先つまり北極星の先にいる天帝に行けますようにと意味をしている。そのため、魔物に邪魔されないように四神と頭獣身人の十二支によって守れている。これは中国から渡ってきた古代日本の死生観だ。」
「じゃあ、私達は死んだんですか!?」
「いえ、違います、永坂さん。私達は天帝から守られ、力を与えられたのです。」
「天の力…」
まさか…古代の思想がここに…でも…なぜ?
「卓也君、内軌を手でなぞってください。」
「こうか?」
「はい、そうです。次に赤道を咲さんがなぞってください。」
「うん…分かった…」
「その次は僕が黄道をなぞります。………最後に永坂さんが外軌をなぞってください。」
「はい…………」
「では、自分達の持ち物を天高く上げてください。」
「あのう…私は?」
「槻弓を渡します。」
「これをどうやって…?」
「それをこの場で教えば敵に分かられてしまいます。とりあえず上に上げてください。」
「うん…」
「うっ!何、またこれなの!?卓也。」
「どうやら……いや、違う…何かが降ってくる…いや、物じゃなくて人だ!」
「それって…もしかして…」
「伏せろ!みんな!持ち物は上に上げて!!」
「どうしたんですか!?いきなり……って‼皆さん伏せてください!」
「ねぇ、ちょっと、何で!?」
「咲、静かに…」
始め、物が落ちてくるのだと思った。しかし、地面に近づくにつれ、物から動物へ、動物から人へと変わっていった。そして、その人が地面へ着いた時、三人の心の声が一人ずつ聞こえた。
どうするの!?卓也。
私達どうするの!?卓也さん。
卓也君、顔を上げます?
みんな、俺に聞いてくる。しかし、簡単に顔を上げられるのか?もし、顔を安易に上げたら……あっ…
「求めよされば与えられん、叩けよされば開かれん。」
うん!!よし、上げよう、ゆっくりと。
おい、みんな一斉に顔を上げるぞ。
えっ!上げていいの!?卓也。
卓也君、大丈夫ですか!?
卓也さん、信じますよ。
あぁ、信じてくれ。じゃあ、みんな一斉にゆっくりと上げよう。
はい!分かった‼卓也のことを信じて。
分かりました。それではいきましょう。
私の合図でいきますか?
してくれる?じゃあ、みんなは永坂のタイミングで一斉に顔を上げよう。
それでは、いきますよ?一斉のーで。
「よく、信じて天帝である私についてこれたな。」
天帝は優しい目で俺達と接した。面長で長細い目だ。
「名はなんという?」
「石原卓也のこと石原浄也です。」
「藤井寺咲のこと石原咲香です。」
「春日原孝でございます。」
「永坂アリスです。」
「ところで天帝様、なぜ、ここに来られたのですか?」
「石原卓也。四人は天文図をなぞっただろ?」
「はい、たしかにそうです。」
「そなた達がなぞったことによって、私を呼び出したのだ。」
「申し訳ございません!」
「いや、いいのだ。何事にも全力で取り組んでさらに心をこめて取り組むことはいいことだからな。」
「なるほど…ところで、我々の助っ人はどこに行ったのですか?」
「そなた達の助っ人には引き下がってもらった。その代わり、私が助けてあげよう。よいかな?」
ということは助っ人四人分いや四柱分の力が天帝の力か…
「みんなはどう思う?」
「助っ人四人分の力が天帝にあるっていうことだよね?卓也。」
「まぁ、そういうことだ。」
「じゃあ、いける。」
「大丈夫です。」
「私もです。」
「よし、私に任せろ。そなた達の持ち物に魂いや四柱の霊を入れよう!」
「えっ!?ちょっと待ってください!霊そのものですか?」
「あぁ、分霊ではなく、そのものである荒御魂だ。」
「でも…そんな大きなものを…私達は持てません。」
「孝、大丈夫だ。そんなことはない。服と同然にそなた達に乗る。いいか、恐れるな。敬う気持ちを持って迎え入れば、何事も起こらない。敬わなければ身がくずれ、逆に恐れすぎると荒御魂は身に入らない。つまり、敬う気持ちと受け入れる気持ちのバランスを取らなければならない。」
ただ単にそのまま僧侶として暮らすはずだった。でも、一歩間違えたことで謎の少女に出会い、一緒に暮らすことになった。そして、奈良の守り神を祀る神社の神主の孫がいきなり転入してきた。しかも、一緒に暮らすやつもついでに転入してきた。謎が謎を呼び、ついに異世界に吹っ飛ばされた俺。でも、そこには古事記などの古の人々が創造した物語の風景があった。そして、色んな宗教が共存して1つになっていた。宗教はそれぞれ違うがどれも同じことを求めていた。こうしてかなり滅多にないことが目の前で起こっていたのだ。古の人々が言っていたありがたいということがまさにこのことだったのだ。でも…古事記の神話はもう、信じられなくなってしまった。科学が発達し、現実の目の前しか見えない時代になってしまった。しかし、それでも俺は古事記 を信じる。だって神話に出てきそうな物語の真ん中にいるから。ただこのことは体験しないと分からない。だから、体験した人以外には絶対話をしない。心の奥で留めておこう。
「分かりました。行いましょう。」
「それでは、持ち物を持ち上げて。」
「はい。」
「おぉ、全てのものよ。荒御魂と共にあらんことを。さぁ、守り神を呼びたまえ。」
「オンダキニサバハラギャテイソワカオンダキニサバハラギャテイソワカオンダキニサバハラギャテイソワカ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
「オンバザラダルマキリクオンバザラダルマキリクオンバザラダルマキリク」
「さきみたまえくしみたまえ守りたまえさきみたまえくしみたまえ守りたまえさきみたまえくしみたまえ守りたまえ」
「主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが私達と共に豊かにありますように、アーメン。」
敬い、受け入れることは信じる心をつくる。だから、全身全霊をもって受け入れよう。どうぞ、心のまにまにに。
「浄也、聞こえるか?」
えっ!?、その声はダキニ様ではなくて…
「私、阿弥陀だ。信じられるか?」
「はい、信じられます、阿弥陀様。しかし、阿弥陀様の顔を見ようとも話があるので怖くて見ることができません。」
「なぜ、僧侶の身であるのに私の顔が見れないのか?あれは俗人に向けた言葉にすぎない。そなたは私の顔を見る必要がある。」
「えっ…いいのですか?…」
「あぁ、見るがよい。そなたには私と話をする権利がある。いや、話をする必要がある。だから、私の顔を見てほしい。」
「阿弥陀様……」
普段、絶対見ることができなかった阿弥陀様の顔がここで見ることができた。父親は、つり目の阿弥陀様と言っていた。しかし、顔をあげると、全くつり目ではなかった。むしろ、たれ目に近い目だった。また、引き締まった顔だと父親は言っていた。しかし、それも違った。むしろ丸い顔だと。
「あぁ、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」
「浄也、私を受け入れるか?」
「はい………あなたの表情を見たのでなおさらです…」
「では、そなたに力を授けよう。」
「はい、お願いいたします。…うっ!!…」
何これ…自分の身にどんどん入りこんでくる…
「卓也!?なんか浮いてる!あたし達より!」
「えっ!?でも…お前ら…俺と同じになってるけど… 」
「えっ!?…本当だ…」
「よし、試しに移動してみようか。いっせーのーで。」
「うあああぁぁあぁあぁ!!!」
「試しをするからだよ。」
ダキニ様!?
「天帝から様子を見てほしいって召集かかったから来たの。」
「なぜ…俺が呼んだのに入ってこられないのですか?」
「いずれ、分かるから待ってなさい。」
「はい…」
いずれかか…
「とにかく、神を試すことは言語道断なので今後やらないように。」
「はい……」
「では、行ってきなさい。名誉と学校を守る初めの第一戦ですから、覚悟の上で戦ってください。緩めば負けです。気を抜かずに。」
「はい!!」
こうして再戦するのだが肝心のボスがいない…
「おい、誰だ!こんなに時間を無駄にしやがって!!」
どこから声が出てるんだ!?
「卓也君!!見てください、あれ!」
あっ!キトラの盗掘孔と同じ位置に!!
「卓也君!私がいきます!」
「あぁ。」
「如律令…光あれ!」
「うああああ!」
陰陽道!?
「卓也君、次いけますか?」
「いける!…いや…待て…」
なんか黒い渦が…えっ!?待て!どうすりゃいいんだ!?このままだとやられる…でも…攻めたら攻めたで倍返しがきそうだ…どうする!?俺!
「さぁ、滅びるがよい!!人間ども!死ねーーー!!うっ…………………なんだ、今度は…?」
「あんたって真っ正面からしか無理なの!?」
えっ!?