三角にある宝
咲香のおかげで掃除早く終わり、朝の勤行をした。周り家だが苦情は一切ない。一応、この寺はこの地域橿原の守り寺である。そのため、無下にすることはできないと近所の人は言う。
「あれ?お肉あるよ。いいの?」
「ああ、そんな決まりはここではないからな。」
「へー、そうなんだ。で、後さ」
「なんだ?」
「何であの仏像は見れないの?」
「あの本尊か?」
「うん。」
「それはな」
「父さん!私が話しますんで!!大丈夫です!!」
「分かるの?」
「ああ。昔な、あまり信仰が深くない人がここの本尊の前で罵声を響かせたんだ。」
「それで?」
「その時、本尊は見ることができたんだ。ただな、それがあったから本尊は怒って罵声を響かせたやつを病死させて、さらにここの子供たちを病死させたんだ、全員。」
「全員!?」
「ああ、それでその時住職をやってた御先祖の子供だけは助かってたんだ。やはり、お怒りになってるって分かったからすぐに御先祖は厨子という箱を作って扉を閉めて見ないようにしたんだ。ただ、その仏像をずっと見たいという人もいたからレプリカを作って厨子の前に祀ったんだ、」
「開けたら?」
「ダメだ、ここの子供たちが死んでしまう。」
「見たことは?」
「全くない。」
「ふーん。じゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
この話は、ここの恐怖話のひとつになっている。まあ、祟りは怖いもんだからな。だから、こういう類いのものは目に触れないほうがいい。それは、自分のためであり、他人のためである。今日は、テストがないからゆっくり行けるが電車を6時40分 にのらないと学校に遅刻する。
「あれ?どうしたの?」
「学校だ、学校。」
「行かせてよ!」
「無理だ、受験しないと!」
「あっ!でも…ふふふふ…」
「なんだ?」
「とにかく、いってらっしゃい。ガブっ。」
「ギャーーーアーー!!」
そして、俺は学校に行ったのだが友達がいないので一人で読書だ。
「はーい、席について、みんな。」
国語担当大来先生だ。ここのクラスの担任である。
「はーい、皆さんおはようございます。ここで転校生を紹介します。」
私立で二学期の途中で転校生?聞いたことないぞ、今まで。
「どうぞー、入ってくださーい。」
ええ…まさか…
「皆さん、はじめまして。石原咲と言います。」
やっぱかよ!!それで今朝、ニヤニヤしてたんかよ!
「卓也君に会うとはこれは奇遇で。」
流暢に言ってる場合か!!どうしてくれるんだよ!!すでに周りから怪しまれているんだけど!!
「そして、もうひとりいます。どうぞー。」
もうひとり!?
「皆さん、はじめまして。春日大社の宮司の孫の春日原孝と言います。よろしくお願いいたします。」
宮司の孫!?あこの!?ウソだろ!?
「卓也君、よろしく」
ああって言いたいが、怪しまれて言えねーーーーーーーーーーーー!!
「じゃあ、二人は、石原卓也の両隣に座って。」
「はい!!」
「はい、分かりました。」
なんだよ、こいつらは!?俺のメンタルを弱める気か!?!
「ねえ、あのこらは石原とどういう関係?」
「分かんない。でも縁があるってきもちわるっ。」
と、クラスの女子はつぶやくし、クラスの男子は
「あいつをどういじろうか?」
「名前でいいじゃねーの?」
「あっ、それがいいね!アハハハハ!!」
と、いじる計画を練っているらしいが全部もろばれだ。でも、言わない。だって、自分の寺の名誉をけなしたくないから。
「おい、お前らはもしかしていひひひひ!!!」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
「こいつ、まじ、怖い。怖すぎ…」
念仏は、時に凶器になる。だから、防御の時はいつもこれだ。
「お前、そんなに」
「はなしかけないでください!!」
「ほっとけ、あまりいじると呪われるぞ。」
「分かった。」
厄除け=呪いにされてるがしかたない。それが素人の見方だ。
「ウオーーーーーー!!」
大来先生!?
「ダメだ、呪われている。卓也君、行きましょう!!」
「ええ!?」
ちょっと待って!!一体何が!!起きてるんだ!!
「戦いましょう!!」
「でもどうやって!?」
「三角の宝です。」
なんだそれ??
「今日こそ、春日大社から三つの宝が解き放たれます。」
「どういうことだ?」
「三つの宝とは藤井寺と石原寺、春日大社の宝のことです。」
「それはどんなんだ?」
「中身は梓弓、三鈷柄籐巻剣、藤花松喰鶴円鏡です。」
「それ使うのか?」
「はい、そうです!!戦ってください!このままだと、クラスメイトが呪われますよ!」
どうしようか。それらを使って効果あるのか?…
「迷ってどうするんですか!!」
えっ!?
「私、ダキニがいるじゃないですか。自分を信じて!!願いは何?」
今までクラスに対して冷たい目で過ごしてた。だが、クラスメイトが呪われて怨霊になってもらいたくない。冷たい俺でもクラスは温かい目で見てくれた時もある。おそらく、自分らしく生きてるのもクラスのおかげかもしれない。不必要なようで必要な存在なのだ。だから、呪われて終わりたくない!!
「戦います。もう、思いわずらいません!オンアミリタテイゼイカラウンオンアミリタテイゼイカラウンオンアミリタテイゼイカラウン!!」
「うわっ!!またこのひかり何!?…」
えっ…
「私達、武装してる…」
なぜだ!?なぜ古墳時代のだ!
「卓也君!まず、私達のご先祖様の助けを求めてください!」
「先祖供養でいいのか?」
「はい!お願いします!」
「願わくは桃院中学校生徒及び教職員一同の先祖代々の諸精霊追善増上菩提!南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
「さきみたまえ、くしみたまえ、まもりたまえ。」(ピカー)
またか…
「また!?あんた、何したの!?まぶしい!!」
えっ…あっ!!
「おい、咲香見ろ!!」
「え?…えええええええ!?これってダキニ様の…!」
キツネのしっぽと耳だ!
「あなた方、完全に覚醒しています!」
どういうことだ?
「やはり、ダキニ様の寺の従者だ!!」
「それがどうした?」
「三鈷の剣のサヤを取ってください!!」
「こうか?」(「これ、取るもの強し。」)
え、ちょっと!?!?
「うあーーーーーーー!!あーーー!!」
「卓也!!ーー!!」
「……」
「卓也!大丈夫!?」
「ああ、それより前に何か見えないか?」
「あっ!!」
そう、悪霊がいる。
「分かった!!」
「戦ってほしい。だけどな、お前の霊力を貸してほしい。」
「え!?何するの!?」
「とにかく、持ち手の三鈷を一緒に持ってくれ。そして、目を閉じろ。いいな。」
「でも…」
「でもじゃねえよ!!先輩僧侶の言うことぐらい聞け!!大丈夫だ!!俺のことを信じろ!!」
「うん…分かった。やってみる。死んでも保障してくれる?」
「ああ、もちろんだ!!だから信じろ!!いいな!!」
「はい!!やってみせます!!」
「ああ、やってくれ!!」
「ええ!?二人で!?」
「それがどうした?」
「いや…」
「何、手を引いてるんだ!!ましてや、誰のためだ!!?」
「うん…………………………………あっ!!!」
「早く!!」
「うん!!」
「よし、いくぞ!!」
「うん!」
「南無不可思議光如来。そちら御尋ね申す。相手の」
「弱きところを教えたまえ。」
「お願い申す!!」