二月堂から前編
2月に行われるお水取りは有名な火を使った行事だ。二月堂の本尊は大小の秘仏十一面観音。その姿は誰もみたことがない。なぜなら、絶対秘仏だから。十一面観音の姿絵はあるが、正確ではない。だから、どれくらい価値があるかなんて誰も分からない。信仰の面からすれば価値は高いが、信仰の面を除けば価値は失われる。
「あっ、パソコンにメールだ!卓也ーーー!」
「なんだ?」
「メール。」
「あー!注文のやつか?」
「ううん、なんか違う。」
「どれだ?あっ、これか。」
お前の東大寺の二月堂から十一面観音を盗むぞ。
「ちょっと待て!これ、単なるメールじゃなくて、誤送信の脅迫メールだ!前坂に電話してくれ!」
「分かった!えぇとどれ?」
「早くしろ!」
「はい!」
誤送信どころか…とんでもないことになる前兆メールを送りつけられたな…
「つながった!」
「ありがとう!もしもし!」
「もしもし、光順!お前とこの十一面観音が盗まれるメールがこっちに来た!そっちで緊急集会を開いてくれ!」
「どっちの十一面観音ですか?!」
「そこまで分からん!とにかく、小観音を長老のところに移動させて、大観音の垂れ幕の前をシールドで今すぐ覆ってくれ!」
「分かりました!自分達の会議はどうします?」
「今日、緊急議題として生徒会に提出する!」
「分かりました!今、弟子達に作業をしてもらっています!」「オッケー!後、東大寺から一般客を出させて、門やお堂を全て閉鎖しろ!ただ、堂内に何人か監視役つけろ!」
「そんなことしなくても…」
「バカッ!後、二ヶ月でお水取りだぞ!主役がいなくなったらどうする!早く閉鎖しろ!!」
「あっ!!」
「今頃気づいてどうする!!早くしろ!」
「分かりました!」
「今日!宗教委員集合601にて!よろしく!」(ガシャッ!)
「とても、どなってるけど、大丈夫?」
「お前、お水取りの主役誰か知ってる?」
「知らない…」
「今、盗まれると予告された十一面観音なんだぞ!」
「えぇーーーーーーーーーーー!!」
「気づくの遅すぎ!今日、601に集合な。」
「分かった…友達と…」
「バカッ!こんな一大事に流暢なことを言ってられるか!」
「はい…」
ということで、放課後の601で緊急会議が行われた。
「これから、緊急会議を始める。議題は、今日の朝に告知した東大寺の二月堂の本尊大小十一面観音の護衛だ。現在、長老の手元に小さいほうがあって、大きいほうはシールドを張って監視している。ただ、シールドは一時的なものだから、当然もろい。だから、長々と会議はできない。なんかいい提案はないか?」
「石原先輩!今、開発中のシールドがあるんですが。」
「大水、それ、一旦見せてくれ。」
「はい、どうぞ。」
高野山真言宗と天台宗の掛け合わせの保護式か…KSTKJ33311…でも豊山派の要素がないと…無理やり破壊されるかもしれない…
「それ何?卓也」
「保護式の保存容器だ。」
「一見、スマホに見えるけど…へー…」
やっぱり龍神の要素が必要だな…
「大水、すまんがもう少し変えてくれ。」
「中身をですか?」
「いや、付け加えてほしい保護式がある。」
「えっ?」
「豊山派の保護式だ。豊山派の保護式は龍神と直接繋がっている保護式であると同時に十一面観音自体の保護式だ。それがあると防御力は格段と上がる。」
「分かりました…」
「どうしたんだ?」
「実は…豊山派の人と最近対立してしまって、保護式がもらえないんです…」
「対立か…」
「すみません…」
「それは仕方ないが…どうやって提供してもらえるかが問題だ…」
いつ何時盗まれてもおかしくない…そんな時に…対立の壁って…こんなとこでつまづくものではないのに…(バン!)
「それをよこせ!」
誰だよ!えっ?あれは長老が持っていたはずの小観音の厨子…いや、違う!偽物だ!
「撃てーーーー!」
「えっ!?」
「とにかく撃つって奪いとれーーーー!」(バンバンババババ!)
「ノウマクサマンダバザラダンカンノウマクサマンダバザラダンカンノウマクサマンダバザラダンカン」
「うっ!…」(ガシャン!シュン)
「ほらな、偽物だ…」
「なぜ、分かる…なぜだ…」
「存在式見え見えですけど…」
「この坊主が…」
「僧侶ですが」
「……」
「ってaf11って簡単すぎじないですか…」
「……!…撤収だ!」
「存在式、見えたよな?みんな。」
「はい…」
「なんで、知っているんですか?」
「ダキニ様から知った。なぁ、咲?」
「うん、そう。でも…なんで分からないって思ったの?あの人」「分からない…でも、恐らく単なる聖職者あるいは僧侶あるいは神職だと思ってたと思う…」
「あっ…なんか、落とし物があるよ…」
「どれ?」
「はい…分かる?卓也」
「法華曼荼羅の偽物…」
「えっ!…」
「みんな、さっきの刺客は、法華他宗破壊集団だ。」
「先輩、あのニュースで話題になってたあの集団ですか!?」「あぁ、そうだ…守らないと破壊されて伝統が消えてしまう…」「先輩、あの指令係のやつの名前は知ってますか?」
「あぁ、久坂遠であいつは同級生だ。あいつは、罪のない人まで洗脳しようとした俗人だ。俺があいつをおさえてたから小学校は平和だったが…」
「どうしたの?」
「…あいつは卒業式に小学校を破壊した…学校を守りきれなかった…」
「卓也……」
「悔しかった…今度こそ倒す…」(ピンパンポン)
「石原卓也、今度こそ折伏してやる。覚悟しとけ。以上。」
「折伏じゃない…洗脳だ…お前は折伏していない…洗脳しているんだ!…」
「卓也……」
「あの時、俺の友達はお前のせいで…お前のせいで…洗脳されて…されて…自殺したんだ!!ふざけんな!返せよ!俺の時間!俺の友達!」
「絶対…絶対……倒して真の平和をもたらす!覚えとけーーーーーーーーーーー!!!!」
「卓也?」
「咲…あいつを絶対倒すぞ!」
「うん…うん!!」
「先輩…」
「なんだ…」
「頑張ってみます!なんとか…豊山の人と交渉してみます!」
「えっ……お前………分かった…俺も一緒に行く。」
「いいんですか?ありがとうございます!!」
「咲。」
「何?」
「お前に頼みごとがある。」




