何気ない日々
人間は誰しもどうしようもない時にお願いと神様にどうしても頼ってしまう。別にそれは決して悪いことではないが、神様は人間を手助けなんてしてくれやしない。そんなとき人間はこう口ずさむ。
「神様の意地悪!!」
「神様なんて本当にいるのか?」
神様はコケにしている人間に天罰をくだす。ただの悪循環だが仕方ない、それが常だから。でも、なぜ人間は神様がなんでも叶えてくれる存在だと思うようになったのだろうか。でも、その理由は誰にも分からない。言い方は悪いが、みんな毒されているんだ。まあ、寺の子供が言うのもどうかしているけど。とにかく、このあとは檀家の家に行かないといけないからそろそろ行く支度しなければな。
「おーい、卓也、起きてるか?」
「起きてますよ、今支度してますから。」
「あと、五分な。」
「分かりました。」
よし、支度はできたから本堂に行くか。父さんいるかもな。
「おう、お前、早いな。」
「今日は、どこの家に行くんですか?」
「ええとな、山尾さん、梶原さん、種井さんだな。」
「分かりました。」
「あと、あの道具持ってるか?」
「四十九日の道具ですか?」
「そうだ、種井さんとこで使う。持ってるか?」
「持ってますよ。」
「ならOK、行くぞ。」
「はい」
たまに、父親は英語を使う。留学経験はあるみたいでそのしゃべり方はまるでイギリスの人みたいだ。
「お前、昨日のこと覚えてるか?」
「はい、ここのお寺は浄土宗で正統の流れの鎮西派に属しているっていう話でしたね。」
「そうだ、法然さんの教えをちゃんと受け継いでいるんだ。それから?」
「阿弥陀様は南無阿弥陀仏という言葉だけで極楽に導くっておっしゃった。」
「そうだ、ただ南無阿弥陀仏と唱えれば救われるんだ。」
ああ、しんど。復習は大事だけど、ここまでしんどいとは。
「あと、お前、占いって信じるか?」
「いいえ、あれで何か変わるとは思いませんから。」
「そうか、やっぱりな。」
「というより、阿弥陀様を裏切りたくないんで。」
「お前…そんだけ。」
「阿弥陀様は魂の父さんと思っています。」
「それが、お前のプライドか?」
「プライドではありません。僧侶としての自覚です。」
「じゃあ、このお寺も」
「もちろん」
その日まで書かれてること以外全て信じなかった自分だった。だが、ある日を境に自分は変わった。檀家が手渡したあるものによって。