001:転生派遣課のお勤め
「あなたを異世界に転生させましょう」
……はい、本日だけで三人目の転生者さん爆誕でございます。
偉大なる女神様、エリーゼ・アストレア・バルゴリブラ・エンデンス様はいつもの様に笑顔と言う仮面をかぶりながら「キタァァーー!」と感極まっているおっさんに向けてお決まりのセリフを伝える。
「あなたには特別に一つだけ特殊な能力を授けましょう。何かご希望があれば伺います」
「な、何でもいいのか?」
「はい、何でも問題ありません」
明らかにおっさんの表情が軟体動物の如く緩んで来たぞ。
予想しなくても、脳内であらゆる女性を思い通りにしている自分を想像している事であろう。
明らかに童貞を童貞っぽいもんな、このおっさん。資料にも童貞って書いていたことだし。
てか、三十後半にもなってご両親から小遣いをもらうとかどうなんだよ。高校まで成績優秀だったみたいなのに、たった一人の女性に振られただけで引き籠りになるなんて豆腐メンタルすぎるだろ。
「じゃ、じゃあ、誰でも洗脳できる能力とかって……できる?」
「もちろんです。ただし、洗脳技術はあなたの能力によって比例いたします。あと、私達神族に使った場合、神法罰則が発生致しますので気を付けてくださいね」
「神法罰則って?」
「簡単に言いますと、神様達にチートを使ったら神罰を実行致します。具体的に言いますと、あなたの大切な息子さんをちょん切ったり、TSヒロインに落としたりですね」
顔面蒼白になって何度も「しません、分かりました」と頷くおっさん。
流石のおっさんもご自身の息子さんを犠牲にして、エリーゼ様を愛玩奴隷にしようとは思わなかったみたいですね。さっきまで、女神様の豊満な胸に釘づけだったのに、今の言葉を聞いてから全くと言って視線を向けようとしないのは良い心がけでしょう。
あの女神様「テストケースとして、誰か私に手を出さないかな」と楽しそうに笑いながら、胸を強調させるような服装で本日のお勤めに励んでいるのだ。
前のお二方も思春期真っ盛りの少年だったので、エリーゼ様の胸から視線を離そうとしませんでしたね。あやうく、異能を使って女神様を襲おうとした時は肝を冷やしましたが。
なにせこの女神様は、女神は女神でも戦女神様なのだ。たかが一つのチートを得た人間ごときに後れを取るようなお方ではない。
「それでは、これからあなた様をとある異世界に転生させます。第二の人生、とくとお楽しみくださいね」
おっと、物思いにふけっている間に最終段階へ移行したようです。
おっさんこと、えっと……不動心司様を異世界に転生させなくてはいけません。
エリーゼ様が神様から頂いた神槍アストレアを突出し、転生の陣を発動させる。それに合わせて私は神様から授かった神書ムメイを発動させる。発動と同時に神書ムメイから一ページ切り取られ、何も書かれていなかったページに【不動心司の章】と文字が浮かび上がる。
私はエリーゼ様のサポートと同時にエリーゼ様の上司、創世の神様と呼ばれた方の趣味をお手伝いしております。
エリーゼ様には言っておりませんが、いま行っている転生云々も創世の神様のご趣味を楽しむ手法にすぎません。ここ最近、遊び心が付いて丸くなったとは言え、真実を知ったらエリーゼ様は間違いなく暴れ回る事でしょうね。その暴走した女神様を御止する役割は当然私になってしまいますので、絶対に私の口からは言いませんが。
不動心司の章と画かれたページを転生の陣に飛ばし、私の役目は終了する。
これで彼の行動及び心情は創世の神様に全て余す事無く伝わる事でしょう。
……まったく、神様も良いご趣味な事ですね。
人間を使って、転生小説を書くとかどんな道楽ですか。
神様の道楽の餌食となったおっさんが「待っていろ、俺の女ども!」と鼻息を荒げながら転生していく。
さて、今日はあと一人の人間を転生したらお勤めは終了ですね。
早速資料を纏めて、エリーゼ様に提出いたしましょう。
……その前にエリーゼ様の大好物、神様印のお饅頭を用意いたしましょう。
おっさんから視姦されて笑顔の仮面が木端微塵に割れてしまっているみたいですし。
これは自己紹介が遅れてしまいました。
私は転生派遣課第三女神補佐官、神成・アストレア・瀬刃澄と申します。
色々とありまして、人間から神様の補佐官にクラスチェンジ致しました下端神族でございます。