やきそばパン買ってこいや
ユーベルトートに罵声をあびせかける阿保神やる夫
おい、何やってんだ!」
阿保神やる夫の激がとぶ。またユーベルトートが怒られている。
「すいません」
ユーベルトートが謝罪する。
「すいませんで済んだら警察いらねえんだよ」
「すいません」
阿保神やる夫はユーベルトートに消しゴムをなげつける。それはユーベルトートのヘルメットに当たって跳ね返る。
「……」
ユーベルトートは無言で作業をしている。隣でパソコンでツイートをリツイートしている山田のほうがイライラしてくる「
「おいてめえ、何とか言えや」
やる夫が大声をあげる。
「ちょっと、先生、あんまりじゃないですか」
思わず山田が立ち上がりやる夫に意見をする。
「あ?なんだてめえ、やんのか、こら」
やる夫は今どき絶滅したようなヤンキーのように眉をしかめ、顔を斜め45度に傾けて山田に近づいてくる。
そこに朝比奈が割ってはいる。
「まあ、やめときなよ、こいつ殴ったら、あんた警察行きだよ、そしたら今の連載つぶれちゃうよ」
「わかってるよ、そんなこたあ」
やる夫がまた大声をあげる。
「山田もさ、ヤボな事に首つっこんでんじゃねえよ、何の事情もわかってないくせにさ。先生にあやまんな」
山田は歯を食いしばる。
「……すいませんでした」
「おい、てめえ、心がこもってねえぞ」
やる夫がどなる。
「すいませんでした!」
山田が大声で怒鳴る。
「てめえ!」
やる夫が山田に詰めよろうとする。
「だから!やめとけっていってんでしょうが!」
朝比奈がやる夫を押しとどめる。
「ちっ」
やる夫が舌打ちをする。
「あんた、今日はもう帰んな」
朝比奈が厳しい口調で山田に言う。
「……はい」
山田は仕事場を早退した。当然、浅井社長からはこっぴどく叱られた。
「首ですか?」
山田はたずねた。
「あんた運がいいわね、先方さん、また来ていいって言ってくださってるよ」
浅井社長がいった。
たぶん、阿保神やる夫が暴力的すぎて他に来る人がいないなろうと山田は思った。
「どうする?行くの?それとこ会社やめる?」
「いきます」
山田は答えた。
すくなくとも、自分からは辞めたくないと思った。職場で嫌な事なんていくらでもある。でも、それで辞めていたらきりがない。
山田が会社をトボトボ出ていくと、業務が終って帰ってきた先輩の宮田だ山田に声をかける。
「おまえ、阿保神事務所に行ってるんだってな?あそこやべえぞ」
「そうですね、阿保神って奴かなり悪質ですよ」
「あ?何言ってんだ、阿保神やる夫ってすげーやりやすいだろうが、問題はユーベルトートだよ」
「は?あの大人しいユーベルトートさんが何で問題なんですか」
「しらねえのかよ、あいつ、人殺したことあるらしいぜ」
山田はそれを聞いて理解した。なぜ、やる夫があれだけユーベルトートに辛く当たっても、ユーベルトートは黙って
やる夫にしたがっているのかを。
犯罪歴があるから、他に就職できないから、そんな事につけこんでいるやる夫も凄く嫌な奴だと山田は思った。「
次の日、山田は阿保神の事務所に行った。
朝早くからユーベルトートは熱心に仕事をしている。その仕事の邪魔するように、やる夫が声をかける。
「おい、ユーベルトート、やきそばパン買ってこいや」
「あ、ユーベルトートさん作業中なんて、自分が買ってきます」
山田はやる夫に声をかける。
「お前は黙ってろ、俺はユーベルトートに声をかけたんだ」
「……はい」
山田は歯を食いしばる。
「言ってきます」
抑揚のない声でユーベルトートが答え、席を立つ。
それから子一時間が経過した。ずいぶん時間がかかっている。耐え切れなくなって逃げたのだろうか。と思っているとユーベルトートは帰ってきた。
紙袋に入っているコッペパンらしきものをやる夫に渡す。
その中身を取り出したやる夫の体がワナワナと震えだした。
「なんだこりゃあ?」
「焼きサバパン買ってきました」
「てめえ、なに、わざわざ、サバの味噌煮込み買ってきて、コッペパンにはさんでんだよ!ねえよ、こんなパン!しかも焼きサバですらなくて、味噌で煮込んだサバじゃねえか!おかげでコッペパン味噌でぐちゃぐちゃだよ!」
「分かりました。今からサバの塩焼きを探して買ってきます」
「そんなこと言ってんじゃねえんだよ、このスボケがああああああああー!」
激昂したやる夫はユーベルトートの胸倉を掴んで、手にメリケンサックをはめ、ヘルメットをかぶったユーベルトートの頭をガンガン叩く」
「やめてください、メリケンサックをつけているとはいえ、先生のお指が痛みます」
ユーベルトートは冷静な声でいった。
山田はその光景を唖然として眺めている。
「なんだ、こいつら……」
朝比奈が山田に近づいてくる。
「な、いったろ、ヤボに首をつっこむなって」
仕事終り、原稿が完成してご機嫌になったやる夫はスタッフを引き連れて焼肉屋に行った。
隣にはユーベルトートが座っている。ユーベルトートの鉄仮面は口のところが開くようになっている。
「はい、あーん」
やる夫が焼けた焼肉をタレにつけて、ユーベルトート口のところに持っていってやる。
「熱いから気をつけろよ」
ユーベルトートは無言で口をあける。
その中にやる夫は箸でつまんだ焼肉を入れる。
「おいしい?」
ユーベルトートはコクリと頷く。
なんだ?なんだこの関係は?
山田の背筋に悪寒が走った。
二人は仲良し