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天使の加護と聖痕の力  作者: 上の下のなんつーか中目黒
第1章 異世界漫遊編
3/11

第3話 黒い人

 西門を出て向かうのは、遠くの方に見える森だ。

 彼処まで行けば、シャドウウルフに会えるらしい。


 お前らに恨みは無いが、俺のゆとりある生活の為の礎となってもらう。


 (………わざわざ難しい言葉を選ぶ必要何てあるんですかね?……)


 「黙って心の声を聞くの止めないか?」


 (……だって暇なんですもん、仕方ないですよね……)


 仕方無くは無いと思うんだが。


 アイリスとの、このやり取りが当たり前の様になって来ている。

 自分の恥部を隠すこと無く曝け出さなくてはいけないのは、どうにも癪に障るものだ。


 (……安心して下さい、私口は固いほうですから……)


 そう言う話じゃねーから!




 又しても、こんなたわいも無いやり取りを繰り返している内に目的地に着いた。


 森に辿り着くまでに現れた魔物は、代わり映えのしないコボルトとゴブリンだった。


 勿論有無を言わさずバサバサ切り倒して魔石を回収しておいた。

 塵も積もれば山となるって言うし、しかたないよな。




 それじゃ、気合を入れてシャドウウルフを探すかな。


 森の際に沿って歩き始めたが、シャドウウルフらしき影を見付ける事は出来なかった。



 あの女、俺にガセ情報を掴ませたんじゃないのか?

 そんな風に考えていた時だ。


 「グルルルルル……」


 獣が威嚇の際に出す様な声が聞こえて振り返った。

 そこには3匹の黒い狼がいた。


 やっと会えたな180ルクス共!!


 (……いきなり報酬額で呼ぶの止めてあげて下さいよ、流石に可哀想です……)


 「仕方ないだろ、俺には奴等が金にしか見えないんだからな」


 アイリスは溜息をついているようだった。


 そんな事はお構い無しに、俺は剣を抜きシャドウウルフの中へと飛び込んで行った。


 俺の行動に少し動揺する素振りを見せたが、直ぐに立て直し臨戦体勢を取った。


 真ん中にいるシャドウウルフ目掛け剣を振りかざす。

 しかし、俺の一撃は素早いシャドウウルフにあっさりと躱され、逆に体勢を崩してしまった。


 そんな俺を見るなりチャンスと思ったのだろう、3体のシャドウウルフが同時に飛び掛ってきた。


 なかなか不味いな。

 動揺をしていないと言えば嘘になるが、さほど焦ってはいない。

 この状況を覆す一手を俺は持っているのだから。


 【聖痕開放Lv1】


 守護天使(アイリス)の聖痕を開放します


 リプカの右手 消費MP30

 バラスの左手 消費MP30


 直ぐにバラスの左手を選択し、実行した。


 左手に、華の形をした痣の様なものが浮かび上がる。


 それらは次第に冷気を放ち始め、氷へと姿を見る変えた。


 「出したわ良いが発射されないぞこれっ?!」


 (……訳も分からず使うのは止めて下さいよ。取り敢えず左手を地面に当てて開放して下さい……)


 アイリスに言われるがまま、俺は左手を地面に当てて力を開放した。


 腕に広がる華の痣が消えていき、それらは地面へと伸び始めた。


 俺は自分の目を疑った。

 地面から大量に氷の華が咲き、シャドウウルフ3体を貫いていた。


 (……ふふふふ、どうですか?凄いでしょうそうでしょう。リプカと違い広範囲型ですよ、驚愕の威力でしょう……)


 「お前の力って本当に恐ろしいのが多いんだな」


 (……褒めても何も出ませんよ……)


 褒めてねーから!

 そう言う話じゃねーから!




 だが、聖痕のお陰で3体を狩る事が出来た。


 息絶えているシャドウウルフに近付き、討伐証明部位と魔石を回収した。


 「この調子で借りまくるか、目標は10体だ」


 (……10体と言わずに、自分の限界に挑戦するのも楽しいかもしれませんよ?……)


 「それもそっ…て、ならねーからな」


 何故かアイリスは、不貞腐れた様な声を出していた。

 お前の発言に付き合ってたら、ただの戦闘馬鹿になる未来しか見えない。

 俺にはそんな酔狂な思想は無い。

 気持ち良く寝れて、頬が落ちる程に旨い飯を食い、適当に暇を潰せたらそれでいいんだからな。


 魔石の回収が終わりに差し掛かった頃、またしても獣の唸り声が聞こえた。


 自分から来てくれるんだからな、良いルクス共だ。


 (……まだルクスになってませんけどね……)


 「直ぐになるから良いんだよ」




 次々に現れるシャドウウルフを斬り伏せていった。

 10体程狩れば帰るつもりだったんだが、現れるものは仕方ない。


 シャドウウルフ達が戦意を失うまで、この戦いと言う名の一方的暴力は続いた。




 あれからどれ位経ったのかさえ分からない。

 それ程にシャドウウルフを狩り続けていた。

 俺は悪く無いぞ、向かってくる奴が悪いんだからな。


 (……アスカ様は戦闘を繰り返す程に強くなっていきますね。でも、それにつれて折角授けた【聖痕開放】を使わなくなっていくのはちょっと寂しいです……)


 「必要な物は必要な時に使わなくちゃ意味が無いだろ、アホみたいにMPが続く限り使用していたらいつか絶対に痛い目をみそうだからな」


 (……まさかそこまで考えていたなんて。普通なら未知の力を手に入れれば、浮かれて使い続けてしまう物だと思ったんですけどね……)


 「だから言っただろ、そんなのはアホのやる事だ」




 そろそろアイリスとの会話を切り上げて、回収作業に移らなくては不味い。

 回収作業をせずにずっと戦っていたんだからな、引く位にシャドウウルフの骸が転がっている。


 今からこれ全ての回収を行うと思うと、幾ら金になるとは言え少しだけ気が滅入ってしまった。


 (……ファイトですよーアスカ様!……)


 見てるだけって良いよな。


 アイリスに少しの苛立ちを覚えながら、全ての回収作業を終わらせた。


 まさか全部で25体も狩っていたとは、自分の才能が恐ろしい。

 しかし25体か、そりゃ日も傾くわな。


 急いで帰りの支度を済ませ、帰路に着いた。


 「これだけの荷物を持ってるのに、全く疲れないとはな。これがステータスの恩恵って奴か」


 (……この世界じゃ普通の事何ですけどね。アスカ様は、レベルやステータスの概念が無い世界から来たんですから不思議ですよね……」


 「そうだな、見た感じでは何も変わっていないようだが、確実に変化は起きている。不思議なもんだ」


 (……これからもっともっと強くなりますよ!そりゃもう周りの人達が引くくらいに……)


 それは御免被りたいもんだな。

 引かれるまで強くなる事に何の意味があるんだ?


 戦闘馬鹿はほって置いてギルドに向かう事にした。


 俺がシカトしている事を知ってか知らずか、アイリスは1人で強さについて熱く語っていた。

 黙ると死ぬのかもしれないなアイリスは。




 ギルドに着くなり、カウンターで討伐証明部位と魔石を広げた。

 余りの多さに、職員達が若干引いていたが気にしたら負けだと思う。


 「まさかこんなに狩ってくるなんて……」


 「不味かったか?」


 「いえっ、驚いただけです。お疲れ様でした、それでは計算してきますね」


 職員はカウンターに広げられた証明部位と魔石を持ち、奥へと走って行った。


 (……これで当分の生活は安泰ですね。この勢いで目指せSランクです!……)


 いや目指してないからな。

 お前は俺を何処に向かわせたいだ全く。


 「終わりましたよ、それじゃあこちらが今回の報酬と買取分を合わせた1500ルクスになります」


 「知ってはいたが、なかなか良い稼ぎだな」


 「冒険者になった日にこれ程稼いだ人はいませんよ、前代未聞です。」


 「前代未聞か……悪くないな 」


 (……怖い作り笑いするの止めてもらえますか?……)


 作り笑いじゃねーから!


 「それとですね、これ程の成果を挙げられる人をGランクにしておく理由にはいかないと言う話しになったので、只今を持ちましてアスカさんにはDランクに昇格してもらいますね」


 「は?早すぎないか?」


 「早すぎるとは思いますが、上が決めた事なので私からは何とも」


 「そう言うもんなのか、でも上がるのは有難い。直ぐに更新してくれ」


 「なら、前の様に手を置いてもらっても良いですかね?」


 朝行った様に、石の上に手を置いた。


 しきしこの石どんな仕組みになってるんだ?

 見れば見る程不思議なもんだな。


 「終わりましたよアスカさん、それじゃこれが今回更新した際に登録するステータスですので1度目を通しておいて下さい」




 結城(ゆうき) 朱鳥(あすか)


 Lv12


 〈称号〉暇人 獣キラー


 HP 235/235

 MP 290/290


 AT 131

 DF 112

 AGL 136

 DEX 115

 INT 108


 EXP 360/1050


 〈能力〉 聖痕(スティグマ)開放Lv1


 また成長してるな、後半全くと言って良い程に苦戦しなくなったのはこのせいか。

 強くなる事に執着するつもりは無いが、楽に戦えるのなら悪くないかもしれないな。


 「あれだけの数を狩ってきたんですもんね、これだけ上がっても不思議じゃ無いですね」


 「何だ?何か変なのか?」


 「いえ、こちらの話なので気にしないで下さい」


 ん?何がどうしたんだ?


 (……朝出て行って、夕方帰って来たらレベルが7も上がってたんで引いてるんじゃないですか?……)


 そんな事で引かれるのかこの世界は……


 「あっ、すいません。それじゃギルドカードをお返ししますね、それでは改めまして。アスカさんDランク昇格おめでとうございます!」


 「あぁ、有難う。まさかEを飛ばしていきなりDになるとは思わなかったが、上がったら上がったで嬉しいな」


 (……この勢いで目指せSランクですね……)


 まだ言ってんのかコイツは。

 なる気ねーからな。


 「すまんが、朝聞いた風呂付きの宿屋の場所聞いても良いか?」


 職員から宿屋の場所を聞き、向かう事にした。


 やっとゆっくり出来ると思うと、何だかほっとしていた。




 (……明日は服でも買いに行きますか?流石に学生服のまま冒険者を続けるのもどうかと思いますので……)


 「ん?あぁそれもそうだな。取り敢えずは財布と相談して決める事にしよう。今は何よりも宿だ!そして風呂だ!そして夕飯だ!最後にベッドだ!少しばかり鬱憤が溜まってるんでな、欲求を満たさないとストレス発散にならん」


 (……ふふふ、そうですね。なら宿屋に急ぎましょうか……)


 鼻歌交じりで宿屋へと向かっていると、職員に聞いた名前の看板が見えて来た。


 宿屋【猫の毛ずくろい亭】


 なかなかパンチの聞いた名前だとは思っていたが

、外観は綺麗な作りで何の問題も無さそうだ。


 扉を開けると、腰まで有りそうな長い黒髪の女性がカウンターの奥に立っていた。

 目鼻立ちの整った、美人と言う言葉が完璧に当てはまる容姿だった。




 「【猫の毛ずくろい亭】にようこそいらっしゃいましたお客様、本日はどの様なご要件でしょうか?」


 「2日程泊まりたい、朝と夜の飯も用意してもらいたいんだが幾らになる?」


 「お食事付きで2日でしたら、800ルクスになります」


 1食50ルクス位だな、思っていたよりは安いか。


 「分かった、先払いで良いか?」


 「はい、構いませんよ。それではこちらがお部屋の鍵になっております」


 「あぁ、すまない。それと風呂は部屋に付いているのか?」


 「はい、一部屋に一つ付いていますよ。それとですね、申し遅れましたが、私がお客様のお部屋の掃除などの担当をさせて頂くルミールと申します」


 「そうか、俺はアスカだ。2日間宜しく頼むな。」


 「畏まりましたアスカ様。それでは本日の御夕食はどうなさいますか?」


 「風呂に入ってからだな、それからでも問題無いか?」


 「でしたら、お風呂から上がられましたら一声掛けて下されば準備いたしますので」


 「助かる、それじゃまた後でな」


 客への対応も丁寧だし、これはなかなか良い宿かもしれないな。

 後は部屋と飯のレベルだな。




 「これはなかなか良い部屋だな」


 (……ベッドメイキングもきちんとして有りますし、何よりふかふか感が見ただけでも伝わって来るようです……)


 「いきなり当たりを引けるとはな、後は飯だな。

取り敢えずはゆっくり風呂にでも浸かるか」


 この世界のシャワー風呂は意外な物だった。

 湯沸かし器など有る筈も無いのだが、薪や焼き石で沸かしている訳でも無い。

 俺が考え込んでいると、(……魔道具ですね、科学技術は発達していませんが、魔力で動く道具が有るんですよこの世界には……)


 魔道具か、なかなか便利な物らしいな。


 頭がスッキリしたので、次は身体をスッキリさせる為にゆっくりと風呂に浸かった。


 二日間で溜まりに溜まった汚れや疲れが洗い流されていく感じがした。


 1日の終わりに風呂に入る。

 日本人ならばそれが当たり前だろう。


 当たり前の事をしているだけなのに、いる場所が違うだけでこうも感覚が変わるとはな。


 やはり良い物だな、風呂は。




 疲れと汚れを落とし、食事を取る為にカウンターへと向かった。


 「すまない、今から飯の用意出来るか?」


 「はい、構いませんよ。それではあちらの席について少々お待ち下さい」


 椅子に腰掛け数分程待っていると、奥の方から鼻腔をくすぐる良い匂いがしてきた。


 腹の虫は我慢出来ずに、催促でもしているかのように鳴っていた。


 (………その音何とかなりませんかね?……)


 「俺に言うな、腹に言え」


 (……めちゃくちゃですね全く……)


 そして食事が運ばれて来た。


 魚の切り身を野菜と和えたカルパッチョの様な物と、薄くスライスした肉のタタキに照りの効いたソースがかかっている物、ポトフの様なスープにフランスパンの様な物が出て来た。


 何から手を付けるべきか迷ったが、腹の虫が我慢しきれないようだったので、気の向くままに口に放り込んでだ。


 全て美味かった。

 日本にいた時は感じた事の無い食材の味を活かすと言う行為。

 俺は異世界に来て初めてその大切さを知った。


 明日もこんな美味いものが食べられるのか、そう考えただけで涎が口の中に溢れていた。


 この日は、溜まりに溜まった欲求を全て満たす事が出来たので満足だった。

 こんな日はグッスリ眠れるもんだ。




 案の定目覚めた時には昼を大きく回っていた。

 身体を優しく包み込む布団が俺を離してくれなかった。


 (……アスカ様が離さなかったの間違いですね……)


 「そうとも言うな」


 そんな事はどうでも良い、取り敢えず準備をして

、食事を済ませたら服屋にでも行くかな。

 宿代が思ったより安く付いたからな、昨日話していた通りに冒険者らしい服装にでも変えようと思う。


 朝食(昼過ぎ)も、昨日の夕食同様に満足のいく味だった。


 朝食の礼を言った後に、ルミールに服屋の場所を聞いておいた。

 冒険者が好んで着る様な服を置いてある店を聞いておいたので、間違い無く無難な装いにする事が出来る筈だ。




 宿を出て服屋を目指す、その道中は出店も少なく静かだった。

 これくらい静かな方が落ち着くのは俺だけだろうか。


 (……少数派でしょうね……)


 真面目に答えるなコラ。



 (……見えてきましたよ、アレじゃないですか?……)


 その声で前方に視線を向けると、ド派手な看板を立てた煌びやかな店があった。


 「よし、帰るか」


 (……せめて中位みましょうよ、ね?……)


 有り得ないだろうこの店。

 どう考えてもまともな奴が入る店じゃない。

 派手を通り越して怖いレベルだぞ?


 (……中は普通かもしれないじゃないですか?……)


 店から遠ざかろうとする俺を、アリエスが何度も止めようと声をあげてきた。


 「もしもまともな服が無かったらお前との約束は破棄だからな」


 (……え?服如きで?服如きでそこまでなっちゃいます?……)


 「入るぞー」


 (……止めましょう!こんな服屋に入る必要何てありませんって!……)


 声を荒らげている奴がいるがスルーだ。

 坦々と歩き、店のドアを開けた。




 「いらっしゃーい!服屋ナトリへようこそ!」


 店に入るなり、鼓膜に痛みが走る程の大声で声を掛けられた。


 「五月蝿い、静かにしろ」


 「え?あっすいません……」


 (……出会い頭にお店の人をへこませるなんて流石ですね……)


 そんなつもりじゃなかったんだがな。


 「外観は馬鹿みたいに派手だが、中は普通だな」


 「あー、外ですよね?あれはお祖父ちゃん趣味ですから。この間亡くなったんで孫の私が店を継いだんですよ」


 「なら店名のナトリってのはお前の爺さんか?」


 「はい、そうですよ。私はアトリ、アトちゃんと呼んでください」


 (……さぁ、早く呼んで上げて下さいよ……)


 ただでさえアリエスのせいで疲れているのに、更にパンチの効いた奴の相手をしないといけないのか。


 「服をくれ、動きやすくて安いのが良い」


 「さらっと流すんですね……」


 「俺は俺の呼びたい様に呼ぶ。誰かの指図は受けない」


 「そうですか、はははは。何かすいませんでした。取り敢えず安くて動きやすい服で良いんですね?」


 「あぁ、構わん」


 俺の言葉を聞いたアトリは、直ぐに服を見繕い始めた。


 服を引っ張り出して首を傾げ、又引っ張り出しては首を傾げる。

 何度も何度も同じ行動を繰り返した後に、ようやく服を持って近付いてきた。


 「見つけましたよ、お客様にとってのNo.1コーディネート!さぁ!さぁ!早く!」


 目の色を変えて躙り寄って来るアトリに若干の恐怖を覚えながら、試着室に入った。


 上着は何の繊維で編まれているか分からない黒い色をした半袖のシャツだった。

 首周りはでかくV字に切り込みが入っていて、暑い日には持って来いの作りだ。


 下は伸縮性のある生地で編まれた黒いデニムっぽい物だった。


 上下黒で統一とは、なかなかに俺の趣味を分かってるじゃないか。


 「うん、悪くないな。動きやすいし、見た目も悪くない」


 (……上下黒にする事によって、更に悪役っぽさが増しましたね……)


 誰が悪役だコラ。


 「良かったですよ。お客様の為だけに選んだんですからね!それじゃ、この二点で宜しかったですか?」


 「あぁ、コイツをもらう。幾らだ?」


 「200ルクスです!」


 思っていたよりも全然安かった。

 この世界の価格バランスはどうなっているんだ?


 (……これで見た目はこの世界の人間に近付けましたね……)


 俺は一体どんな見た目をしてたんだよ。

 ちょいちょい暴言をはくが、俺に何か恨みでもあるのか?


 (……無いですよ……)


 「答えなくて良いんだよ」


 駄目だ、またアイリスのペースに乗せられている。

 (……ふふふ、そんな顔しなくても良いじゃないですか……)


 「誰のせいだと思ってるんだ…」


 (……そんな事より、せっかく服を買ったんですから防具なんかも買っちゃいますか?……)


 「防具はいらん、動きを抑制されるのは好きじゃないしな。動き安ければそれで良い」


 (……命を守る為の物なんですから、少しは考えて下さいよ……)


 「やばくなったら考えるさ、今は必要じゃ無い」


 (……全くアスカ様は····分かりましたけど、気を付けて下さいね……)


 まさかアイリスが心配してくるとはな、珍しい事もあるもんだ。

 まぁ、これからどんな相手とやるかもわからん。

 本当に不味くなって来た時にでも考えるとしよう。




 今日はもうやる事が無くなってしまった。

 取り敢えず時間もある事だしギルドにでも顔を出すか。

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