ジジィの冒険
冬の童話祭りに間に合わなかったので、ブッ飛んでみます。
ジジィの活躍にご期待下さい。
昔々ある所に、お爺さんとお婆さんがおったそうな。
お爺さんは山に芝刈りに
お爺さんは川に洗濯に
お爺さんは飯の支度を
お爺さんは……
……
お婆さんは面白い事を考えているだけで、何もしなかったそうな。
ある日の事じゃ、いつものように神棚に手を合わせていると
突然に光ったそうな。
お爺さんは驚いて見ると、そこに豆のように小さいのがおった。
「お前はなんじゃ?」
お爺さんが聞いてみると
「お前が、あまりに哀れじゃと思ってのぅ……何か、願い事は無いのか?」
お爺さんは首をかしげていると、小さいのはまた話したそうな。
「望みを叶えてやると言っておるのじゃ! はよう言わんかい!」
望みと言われても、これと言って思いつかないようじゃ。
お爺さんは悩んでいたそうな。
「そう言えば……」
お爺さんは、若い頃の記憶を手繰り寄せたそうな。
「そうじゃのぅ……冒険に出たいのぅ……」
そう呟いたお爺さんに、小さいのは言ったそうな。
「あい解った! 思う存分、行って来るが良い!」
いきなり熊と戦ったお爺さんは、突然に小さくなって
お椀で川を渡っている最中に桃が突っ込んできてお爺さんとお婆さんに拾われたそうな。
「お前は、何じゃ?」
拾った、お爺さんとお婆さんが腰を抜かしていると
お爺さんは言ったそうな。
「通りすがりの、お爺さんじゃが……」
それに驚きながらも、問い返したそうな。
「まさか、お前は鬼を退治してくれる為に来たのか?」
「いや、そんなつもりはコレっぽっちも無いがのぅ?」
「おぉ! お前を、桃太郎と名付けよう!」
お爺さんの話など聞こうともせずに、桃太郎と名付けられてしまったそうじゃ。
やがて大きく育ったお爺さんは、鬼退治の旅に強引に出されてしまったそうな。
「気をつけて行くのじゃぞ~」
キビ団子を持たされて追い出されてしまったお爺さんじゃったが、
途中で何かが声を掛けてきたそうな。
「おい! そこのジジぃ! 有り金置いて、とっとと失せな!」
そう言われても出す物が無かったそうな。
「ワシはコレしか持っておらんが、コレで良いかのぅ?」
キビ団子を出すと、犬の目の色が変わったそうな。
「それは、キビ団子じゃないか! そんな高価な物には、滅多にお目にかかれねぇ! 頼む! それを分けてくれ!」
お爺さんは言ったそうな。
「仲間になってくれるなら、コレをあげても良いがのぅ?」
犬は言ったそうな。
「なります! それを頂けるなら何でもなります!」
そして、犬がお供についたそうな。
次に、猿が現れたそうな。
「貴様等、何だ? ここは俺の縄張りだ! とっとと失せな!」
それに犬が答えたそうな。
「キビ団子があるぜ? お前も仲間にならないかい?」
それに、両手を地面に叩き付けながら答えたそうな。
「キビ団子! 欲しい! 絶対に欲しい!」
そうして、猿も仲間になったそうな。
次に、キジが現れた。
それに、猿が言ったそうな。
「キビ団子があるぜ? お前も仲間にならないか?」
それに、飛びまくりながら答えたそうな。
「キビ団子! 欲しい! 絶対に欲しい!」
そうして、キジも仲間になったそうな。
船で鬼が島に渡って行くと、娘さんの叫び声が聞こえたそうな。
それを見た一行は驚いたそうじゃ。
そこに居た娘さんが酷い扱いを受けているのを目の当たりにして、
お爺さんは怒ったそうな。
「許さん……」
般若の面のような顔に変わったお爺さんは、鬼の中に突っ込んで行ったそうな。
「貴様、何奴だ!」
それに、ポンポン言いながら答えたそうな。
「桃と、一緒に拾われた……お爺さん……」
それに、鬼は威勢良く言ったそうな。
「やっちまえ~!」
飛び掛ってくる鬼を、綺麗に交わしながら切って行ったそうな。
「ひと~つ……人の世……生き血をすすり……」
鬼を切り刻む音が響いたそうな。
「ふた~つ……不埒な悪行三昧……」
それに怯まない鬼は、微塵切りのように切り刻まれたそうな。
「み~っつ……醜い浮世の鬼よ……退治てくれよぅ……この爺が……」
鬼のボス達を切り刻むと、他の鬼は腰を抜かしたそうな。
鬼達を退治すると、犬と猿とキジがボスになってしまったそうな。
どうやら、全く帰る気は無いそうじゃ。
それを放置して、お爺さんは船で帰ったそうな。
帰る途中に遭難して、亀に助けられたお爺さんは竜宮城に行ったそうな。
大宴会が続いていたが、ふとお爺さんが気が付いたそうじゃ。
「そろそろ、帰らなければいかんのぅ」
そう言うと、帰りがけに玉手箱を渡されたそうな。
「コレを、絶対に開けてはなりませぬ……」
そう言う乙姫様の顔が、ほくそえんで居たのは気のせいじゃろうか。
亀に浜まで送られると、どうしても玉手箱が気になったそうな。
「あれだけ、笑いを堪えて居たのじゃ……きっと、面白い事があるのじゃろうて……」
思わず玉手箱を開けると、辺りに煙が立ちこめたそうじゃ。
気が付けば、お爺さんは激しく若返っておったそうな。
「ワシは、いったいどうしたのじゃ?」
良く解らないまま、慌てて家に帰ると
お婆さんは、すでに骨になっておったそうな。
メデタシ、メデタシ……




