少女の一喜一憂の話。
……あれ? な、何で私ここでボーっとしてるんだっけ……?
……あ、えっと、い、今私、夜羽ちゃんに名前で呼ばれちゃったんだ……!
今まで何故かフルネームだったから寂しかったけど、やっと名前で呼んでくれたぁ! 嬉しい……。
…………………じゃなくて! それもびっくりしたけど、それよりもその後、よ、夜羽ちゃん、何て……。
………………………………? なんか、ほっぺた痛……。
「ひにゃっ!? ……い、いひゃい!」
「お、起きた」
気がついたら目の前に瞬君の顔があって驚いた……。
そして私のほっぺたを引っ張ってたのにも驚いた……。
「瞬君! 何するの! びっくりしたよ! そして地味に痛かったよ!」
「地味ならいい」
「いくないっ!」
瞬君は私の言葉を聞かないで話を進める。
「それより、どうすんだよ」
……? どうするって……あ。
「ご、ご飯を一緒にって……でも、いきなりだから迷惑じゃ……」
「すでにもう一人前、追加の準備は始めてる。それに、今飯田がもって来てくれたこれもあるからな」
た、確かに……あれ? じゅ、準備してるって……。
「わ、わたしまだ!」
「わかってるよ。まだ決めて無いんだろ? でも別に迷惑でもない。料理は面倒だが、嫌いじゃないしな。それに余ったら余ったで、明日の弁当に回すから問題ないぞ」
そう言いながら瞬君は淡々と料理をしていた。
ちなみに夜羽ちゃんは完全に一緒に食べる準備をしてた。
お皿が一人前増えてる……。
「じゃ、じゃあ、お願いしようかな……?」
私がそう言うと、すぐに夜羽ちゃんが、
「ん、マナミ。なら料理が出来るまで色々話す」
って言ってくれた。
どうしていきなり心を開いてくれたのかはわかんないけど……すごく嬉しいなぁ。
「その前に自分の家に連絡は入れとけよ」
あ、はい。
家に電話して、おかーさんに事情を説明すると、すごく喜んで許可してくれた……けど……「あんたにもやっとそんな人が……」とか言ってたから、だいぶ勘違いしてると思う……。
帰ったらちゃんと説明しないと、瞬君にも迷惑だよね……?
………………ま、まだ!
電話が終わって、少しの間、夜羽ちゃんとお話していると、ご飯が出来たとの事。
それにしても、たとえ少しだけでも、夜羽ちゃんと話せてよかったと思う。
だって今まであんまり話す事がなかったから……でも今日だけで夜羽ちゃんの事をたくさん知る事が出来たし。
それに、仲良くもなったから、またいつでもお話できるし、一緒に遊んだりも出来る。
…………ちょっと、予想外の事もあったけど………………ま、負けないもん。
「お、おいしい……!」
「それはどうもありがとう」
瞬君の手料理……初めて食べたぁ!
……でも瞬君の作る料理がこんなにおいしいなんて……。
最近おかーさんに料理教えてもらってたけど……自信なくす……。
「おかーさんの料理より、全然おいしいよ!」
「……飯田、『全然』って言うのは……いや、やめとくか、飯時に勉強の話は。面倒だし。……てか、自分の母親に対して失礼だろ、それは」
な、何か一瞬勉強の流れに行きそうだったけど、瞬君が自分でとめてくれた。
……良かった。
「でも、ほんとにおいしいよ……」
「わかったよ、それは。つーか、飯田のお母さんの料理もうまいじゃん。俺のより遥かにいける。……なあ? 夜羽」
「ん、シュンのもおいしいけど、マナミが持ってきたのもおいしい」
……………………っ!
「ほ、ほんと!?」
「ああ……って、何でそんなに驚くんだよ」
「ゴ、ゴメン……」
……わわっ! 瞬君、お、おいしいって……! お世辞とかかもしれないけど、う、嬉しい!!
思わずニヤニヤしちゃう私。
そしたら夜羽ちゃんが私を見て、
「む? マナミが作ったの?」
「ん? そうなのか?」
………………え。
「そ、そそそそそそんなこと、ななないよ……?」
「そうか。飯田が作ったのか」
……はわわわわわわっ! バレたぁ!! ど、どうしてぇ!?
「いや、何故バレたし! みたいな顔してるけど、動揺しすぎてバレバレだから」
「ふ、ふみゅ……」
は、恥ずかしい……。
その後も、からかわれたり、お話したり、からかわれたり、料理のアドバイス貰ったり、からかわれたりして、気がつけば少し遅い時間になっていた。
「遅くなってしまった……しかたない、面倒だが、送る」
「え!? いいよ、そんなこ「気にすんな」……えー?」
「ん、でもシュン。ユリカのときは送らなかった」
「いや、東城さんはどうせ帰りは車だとわかってたから。……さすがに夜道を女子一人歩いて帰すわけにもいかん」
「ん、そう」
「……………………」
……うーん、前の瞬君なら絶対そんな事言ってくれなかったと思う。
ふふふっ、いいけーこーだよ、瞬君……!
「……何か不快な思考を感じ取ったから、送るのを止めたくなった」
はっ! 読心術!
「ごめんなさい!」
と、咄嗟に謝ると、瞬君はまた、私のほっぺを引っ張った。
「いひゃっ!」
「謝ると言う事は、変な事を考えてたな……?」
しまった! ひっかけだ!
「ご、ごめんにゃひゃいー」
「ふぅ……いいからさっさと行くぞ。夜羽、いってきます」
「ふぁい」
「ん、いってらっしゃい」
そうして私たちは家を出た。
「それにしても、前より仲良くなってるね、瞬君と夜羽ちゃん」
「そりゃ、一緒に住んでりゃな」
…………羨ましいなぁ。
その後も軽いお話をしてたら、すぐに家に着いた。
元々そんなに離れてないしね。
「じゃ、帰る。また明日な」
「うん、勉強頑張ろうね?」
「頑張るのは君だけです」
「ひどっ!」
そう言いながら帰り始めた瞬君。
…………あ!
「ちょ、ちょっと待って瞬君!」
「んあ?」
首だけこっちを向いた瞬君に、私は一回深呼吸をして、
「あ、あの、電話番号とメルアド……教えて……?」
……い、言えたぁ! 緊張したぁ……。
そして瞬君は、
「ん? ああ、いいよ。そうしたほうが勉強するにも楽だしな。てか、そういえば教えてなかったな」
とあっさり答えた。
……………………私が緊張した意味は?
ま、いいや。
瞬君のアドレスゲットできたし!
飯田さん、一歩前進……? いや、全然まだだけど。
夜羽との会話の内容は……いずれそのうちに……? 番外編とか?
……とりあえず気が向いたらか、望まれれば書き出します。
感想お待ちしてます。