番外の話。――クリスマスの話。2-B
同時投稿予定ですので、Aのほうもよろしくお願いします!
ふむ……。
「いや、やめとく」
「えっ!? えー、瞬君来ないの?」
「理由をお伺いしてもよろしいですの?」
飯田が戸惑い、東城さんがジト目で見ながら聞いてくる。
……いや、東城さん? 俺が来ない可能性も視野に入れてたんだろー?
「理由は……じゃあ黙秘で」
「えぇ!? 答えないの!?」
「……単に面倒くさいからじゃありませんの?」
それもあるが……。
「……別に、今日中に宿題を終わらせたいとか、冷蔵庫の中の物を片づけるとか、色々あるから」
「えー……」
「納得はできませんの」
「とにかく、行かないわ。んじゃ、先帰るな。よいお年を」
「あっ、ちょっとー」「よいお年を……って、神尾くん、今年中にわたくしたちと会わない予定で話してませんの!?」
何も聞こえません。買い物が俺を待っていますので。
さて、うまいこと二人を巻くことができた。
というか、俺が先に帰った後、なんか藤森が、追いかけようとする二人に話しかけて、とどまらせてた。
何を言って、二人を止めたのかは知らんが、珍しく役に立ったな、藤森よ。
よし、買い物はある程度済んだな。
大物は昨日のうちに買ってあるし。
……買ったはいいけど、二人で食いきれるか……? ……多分大丈夫かな。
あー、色々買い物してたらだいぶ遅くなったな。
夜羽には遅くなると言ってあるから良いけど。
「さて、買い忘れは無いかな………………ある…………」
ヤバい、一番重要なのを買い忘れてた。
まずいな、ここからだと店までだいぶ離れてるし、そもそもまだあるんだろうか……?
「……ふぅ、悩んでても仕方ないか。急いで買いに「こんばんはー」おわっ!?」
とりあえず買い忘れを走って買いに行こうとしたら、妙に間延びした声に遮られた。
「あ、アイス屋の店員さん?」
「はいー、どうですか? アイスお一つー」
こ、この寒い中勧めてきますか……。
「い、いえ、結構です……」
「ですよねー。皆さんそうですー。ふむー、そろそろアイス以外の商品も出さなきゃまずいですねー?」
この時期にアイスだけ売り続けてたのがおかしい……てか、アイス以外ってことは、アイスはまだ売るんですか。
「こだわりですのでー」
「そうですか……ああ、また何か心読まれた。俺の周り読心属性が高すぎる……」
「他の皆さんは表情で読んでいるだけですよー?」
「…………あなたは?」
「ふふふふふー……」
「怖っ!」
っと、店員さんとじゃれあってる場合じゃない。
急がないと。
「あ、すみません、俺ちょっと急いでますので」
「わかっていて止めているのですー。あなたが向かってる場所には、すでに目的のものはありませんー。ちなみに他のお店でも同じでしょうねー」
……色々突っ込まなければいけないのはわかっていたが、与えられた情報にその気力を奪われた。
「そう、ですか……ありがとうございました……」
「こらこらー、だめですよー。教えてあげたんですから、協力プリーズですー」
「そうですね……」
最悪この際アイスでも夜羽はよろこぶだろうしな……。
「ふむー、あなたに協力してほしいのは、アイスと並ぶ新商品の販売についての意見ですー」
「はあ」
「ですから、新商品のこれ、買ってくださいー。そして今度、味の感想を聞かせてくださいー」
「………………え?」
そう言われ、俺は店員さんに箱を一つ押し売りされた。
「ただいま」
「ん、シュン。おかえり。遅かった」
「ああ、悪い。買い物が長引いてな。今から飯作るから」
「ん、大丈夫」
軽く夜羽の頭を撫でつつ、ばたばたとキッチンに向かう。
冷蔵庫のものを取り出し、早々に準備をはじめ……。
「出来たぞ」
「ん…………む、シュン……なんか豪華」
夜羽が気づいたとおり、テーブルにはかなりの品数の料理を並べていた。
「ああ、クリスマスだからな」
「……? クリスマスって?」
「んー、まあ細かい説明は面倒だから省く。まあ、前にやったハロウィンみたいなもんだ」
「む、お菓子もらえるの?」
「いや、そこじゃない。……とにかく特別な日って覚えとけ。合言葉は『メリークリスマス』だな」
「メリー、クリスマス」
説明も何もしてないからキョトンとしてるけど、概要なんてのは今知らなくても別にいいだろ。
「んじゃ、改めて……メリークリスマス」
「ん、メリークリスマス」
そしてちょっとしたパーティーの始まり。
「む、シュン……これは、大きいから揚げ?」
「いや、ローストチキン。から揚げとは味が違うけど、これはこれでうまいぞ?」
「む! シュン! ケーキもある!」
「ああ、クリスマスにはケーキは付きもんだ。手に入らないかと思ってたら、予想外に入手できた。多分……いや、絶対うまいぞ、これ」
東城さんたちのお誘いを断ったのは、面倒だったのも、単に前日に買った食材を無駄にしたくなかったのも、色々理由はあるけど、一番の理由は違う。
夜羽が俺に笑いかける。
「ん、シュン。クリスマス楽しい」
俺が誘いを断った理由は――――クリスマスを『家族』と過ごしたかったんだ……。
「そうか、そりゃ良かった」
俺はそう言って、夜羽の頭に帽子をかぶせる。赤い、サンタ帽子を。
夜羽は不思議そうにしているが、特に何も言ってこなかった。
夏休みにやって来た、カラスと言うサンタは、俺の元に、夜羽と言う家族をプレゼントしてくれた。
Aに比べれば少々短め。
何にせよ、夜羽が楽しんでくれることには変わりないお話でした!
ちなみに藤森が飯田さんと東城さんに言った事は「同居人と二人っきりで過ごしたいんじゃね?」という、意外と正解を言ってました。
感想お待ちしてます!
そして人気投票締め切りまで後一話です!