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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
修学旅行前で一緒。
93/144

番外の話。――クリスマスの話。2-A

 遅くなりました!

 

「……夜羽の知り合いって事は、もしかして矢島さんとかもか?」

 ふと思いついた事を聞いてみる。


 すると、あっさりといった感じで東城さんが返してきた。


「ええ。ただ動物病院で夜羽さんとしっかりとした面識があるのは矢島獣医と春川看護師さんだけらしいですので、呼ぶとしたらあの方たちだけですの。他の看護師の方々はあまり夜羽さんと会話できてないようですので、矢島獣医と春川看護師を休ませるシフトをこちらで組ませていただきましたの。ほかに獣医もいらっしゃらないようでしたので、それもこちらでご用意いたしますし。あ、後は高嶺蛍さんもお呼びする予定ですのよ」


 …………おかしいな。動物病院のほうはまあ、百歩譲っていいとしよう。顔見知りでもあるから、休んでくれと頼んだ、とかそういう感じに違いない。


 …………シフトを組んだ(・・・)と聞こえたけど、気のせいだ。


 さて、それにしても、高嶺はおかしくね? 東城さん、面識は絶対無いと思うんだ。


「あのさ、東城さん……」

「何ですの?」


 いい笑顔で返事をしてくる東城さん。


 ………………聞かなくてもわかるか……。


「いや、なんでもないや」

「そうですの? では、どうされますの?」


「ならまあ、夜羽に確認してからだけど、多分行くわ。つっても、急な話だからプレゼントとか何も無いけどな」


「かまいませんの。そこは皆さん同じですし。要はクリスマスを皆で楽しみましょう……てだけですの」


 ……東城さんも意外とこの学校向きの性格してるんだけど……そんな事言ったらめちゃくちゃ怒られるんだろうな。





 とりあえず家に帰り、夜羽に軽く今日のパーティの事や、クリスマスの事を説明した後、適当に準備をして外に出る。


 クリスマスに関しては、とりあえず『メリークリスマス』って言えば問題ないと言っておいた。


 で、家から出た瞬間に、漫画でしか見たこと無いような高級車が目の前に止まった。


「うわ……」「…………」

 俺と夜羽がポカンとしてしまったのは無理も無いはず。


 そしてまず、でかい門を、次に門から家までの結構ある距離を通り、もう説明するのも面倒なくらいに豪華な屋敷にたどり着いた。


 そのまま案内された部屋は、やはりというべきか、夜羽の知り合いだけ集めたなら、広すぎる部屋だった。


「メリークリスマスですの。お二方とも、いらっしゃいですの」

「ああ、どうもメリークリスマス。お招きいただき」「ん、ユリカ。おじゃまします……と、め、メリー、クリスマス……?」


 さっき教えたばっかだから、言い慣れてないようだ。


 東城さんもそれがわかったのか、気にせず話を続ける。


「どうですの? 家にある部屋で、出来るだけ狭い部屋を選んだつもりでしたけど」

「……うん、そんなとこかと思ってた」


 やっぱり、この部屋を狭いと言い切っちゃうんだな。


「しかし……すごい格好だな」

「ん、ユリカキラキラして、綺麗」


 東城さんの格好は本当に本物のパーティとかに着てくるようなドレスだ。

 正直、他の来客の服装を考えると、かなり浮いてる。


「ふふっ、ありがとうですの、夜羽さん。……それはそうと、神尾くん? わたくしの格好に対してのご感想は? ふふふ」


 東城さんが夜羽に礼を言った後、にやにやしながら俺にも尋ねてきた。


 それに俺は素直に、

「ああ、よく似合ってる。すごく綺麗だと思うよ」

 と言った。


 ほんと、こんだけ豪華な服を着ても、違和感がないどころか、似合ってる。

 さすがお嬢様。

 まあ、どっちかって言うと、ファンタジーとかでよく見る、貴族のお嬢様……いや、どこぞのお姫様って感じだ。


 しかし、感想を言ったにも関わらず、東城さんは無反応だった。


「? 東城さん?」

「………………」

「おーい、東城さーん」

「………………」


「ん、ユリカ?」

 夜羽も心配して声をかけるが、


「………………」


 変わらず惚けたまま。


「ゆっぴー……?」

「………………」


 ……よくわからないけど、とりあえず放っておこうか。


「んじゃ、東城さん。とりあえず、一通り夜羽と挨拶してくるよ」


 そう言い残して、俺と夜羽は他の人のところに向かう。

 夜羽は少し心配そうだったが。



 少し離れてから、チラッと後ろを見てみると、一応復活しているようだったが、何やら、わたわたしていた。


 ……まだ放っておこうかな?



「あ、矢島さん、と……春川さん……?」

「ん、イチロウとシズカ」


「ああ、神尾君、夜羽ちゃん」

「こんばんは。……それで神尾君はどうして私がすぐわからなかったの?」


 矢島さんと春川さんを見つけ、挨拶をする。

 春川さんをすぐにわからなかったのは……いや、仕方ないと思う。

 いつも同じ格好しか見てなかったし、何より東城さんほどではなかったけど、きちんとドレスを着てきたわけで。


「あー……すみません、いつもと違うんで」

「ふーん、そう……。ま、当然ね? 最近私は影が薄かったし」


「え? いや、そんなことは」

「あら? でも最近は神尾君も夜羽ちゃんも、新しいお友達で今回のパーティを開いてくれたゆりかちゃんも、みんな矢島先生とばかり話したりしてるじゃない。しかも、何かコソコソ内緒話。夏休みまでは私とも結構話してくれたのに、今では仲間はずれね」


「あー……はははー……」


 春川さんの鋭い指摘に苦笑いをしてしまう。

 矢島さんも視線を逸らしてる。

 夜羽は……ん? なんか思案顔だ……どうかしたのか?


 っと、とにかく誤魔化さなければ。


「春川さん影が薄いとか思ってませんよ。話しかける機会が少なかったのは謝りますけど」

「でも、今だって私の事がわからなかったでしょ?」


「いや、単に見惚れてただけですよ」

「え? あ、ありがとう……って私、何簡単に誤魔化されてるの……」


 いや、事実でもあるから誤魔化しだけでも無いんですけど。


 とか思っていると、矢島さんがなんとも言いがたい微妙な目線を送ってきた。

 ――相変わらずだね……とか言ってる気がする。


 俺は矢島さんにその目線の意味を問いただそうとすると、夜羽がずっと考えていただろう事を口にした。



「ね、クウキは来てないの?」



『……空気?』


 って……あ。


「いたな、そういえば」「ああ、彼は……どうだったかな?」「というか、シフトに彼の名前入ってたかしら……?」


 全員あの存在を忘れてた。

 多分この様子だと、東城さんも忘れてて、呼んでも無いし、シフトにも名前が入って無いんだなぁ。


 まあ、いいんじゃないかな? 面倒くさいし。


 てか、よく覚えてたな。夜羽……。



 矢島さんたちと離れ、次の人物の下に。


「お、飯田に高嶺」「ん、マナミとホタル」


「あ! 瞬君! 夜羽ちゃん! メリークリスマス!」「神尾さん、夜羽ちゃん。こんばんわ。メリークリスマス」


「ん、メリー、クリスマス」

「はいはいはいはい、メリクリメリクリ」


「「雑っ!」」


 二人同時に突っ込まれた。


 挨拶の後、二人の格好を見る。


 飯田は、よそ行きといった感じの清楚なワンピース……だいぶ印象が変わるな。

 そして高嶺は、制服だった。


「って、何で制服?」

「あ、学校から帰るのちょっと遅くなっちゃって、帰ってる途中で車に乗せられて」


 …………拉致じゃん。


「だ、大丈夫なのか?」

「あ、事情を聞かされた後、お母さんにはちゃんと連絡入れましたので。『楽しんできなさい』だそうです」

 相変わらずすごい人だな。


「ね、瞬君。私の格好は、どうかな?」

「アアニアッテルニアッテル」


「ひどっ! ちゃんと感想言ってよぉ!」


 そう言われて、とりあえず思った事を言おうとしたら、

「ん、マナミっぽくないけど、似合ってる」


 夜羽に先に言われてしまった。


「ありが……え、私っぽくないのかなぁ? やっぱり」

「いや、似合ってるって言ったろ、夜羽。ちなみに俺も同じ感想。いつもの飯田のイメージとは違うけど、なんか清楚な感じも似合ってていいと思うぞ」


「……にゅっ!? ええぇ!?」


 ……何かテンパりだした。


「いいなぁ……ふぅ、私運悪いな。ちゃんとした格好してれば私も……」


 ? 高嶺も何を呟いてるんだか。


「む、ホタル。その格好もいいと思う」

「ああ、俺も制服姿は新鮮でいいと思うが」


「みゃっ!? いきなり何ですか、夜羽ちゃん! 神尾さん! ビックリするじゃないですか!」


「すまん、いや、何か呟いてたから」「ん」

「き、聞いてたんですか……」


 どうやら聞かれたくなかった類の独り言だったようだ。

 高嶺は顔が真っ赤だった。


 なんとなく、そっとしておいたほうがよさそうな気がしたので、テンパってる飯田と、顔を真っ赤にしてたたずんでる高嶺を置いて、夜羽と静かにその場を離れる。



 これで、一応全員と話し終わったかと思っていたが、俺の目にとんでもないものが飛び込んできた。




「ん、タツハ」


「そ、そのようだな」



 志戸塚って……レアすぎるだろ。

 通常のこいつは来ないだろうし……何があった!


 とりあえず挨拶に以降と一歩近づくが、


「…………………………」

 すぐに激しく疲れたような目線を送ってきた。



 …………そうか、そんなことが。お前も拉致パターンか……。


 視線で今に至るまでの経緯を聞いて、他人事なのにちょっと泣きそうになってしまった。


 志戸塚のところに行こうとする夜羽を止め、その場を離れる。

 夜羽……不思議そうな顔してないで、今は言う事聞いてくれ。



 志戸塚から少し離れたところで夜羽が口を開いた。

 

「む、シュン。タツハに挨拶しない?」


 そうだな、言いたい事はわかる。


 だが、

「夜羽……今はそっとしといてやれ」

 ――……少しだけでも、休ませてやろう。


 意味のわかってない夜羽はキョトンとしていたけど。



 と、ここで、完全復活した東城さんがどこかからマイクを取り出し、話し始めた。


「皆様、メリークリスマスですの!」


『メリークリスマース!!』


 さすがにみんなノリがいい。


「今日はお集まりいただきありがとうございます。今日は楽しんでいってください。……それでは、僭越ながらわたくしが……かんぱーい!」


『かんぱーい!!』


 おお、結構人数少ないのに、意外と盛り上がるな。




 乾杯の後は、みんな楽しそうに談笑をはじめた。

 しばらく夜羽と一緒に、観察していると、飯田が何気にテンションが高いことと、何故か東城さんがボケにまわってることがわかった。


 ツッコミいなくなった……?



 ……あ、飯田が志戸塚巻き込んだ。


 あーあーあー、この中で志戸塚だけは、知らない人が多いのに。


 ……東城さんに自己紹介させられてる……人見知りなのにかわいそう……。



 結局、志戸塚がテンションの低いまま、ツッコミにまわってる……。ま、まあ、藤森がいないだけまだマシなんだろう……。



 そんなことを考えてると、


「ふふふっ」


 珍しく夜羽が声を出して笑っていた。



「夜羽……?」



「ん、シュン」

「どうした?」



 夜羽は俺の方を向き、笑顔で言った。





「みんなとクリスマス。楽しい」



「……ああ、そうだな」



「ん、ワタシたちも行く」

「……それは少し面倒くさいがな」


 歩きながら、手元にあったサンタ帽子を夜羽にそっとかぶせる。


 夜羽は気づかなかったのか、そのまま集団に向かっている。




 そして混沌と化している集団に現れた夜羽サンタが言った一言は、


「メリークリスマス!」

 か、かなり長くなってしまいました。

 少しずつ訂正していきます。


 Bパターンもありますので、そちらもよろしくお願いします!

 感想お待ちしてます!

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