その後の学校でのやり取りと家での彼の問い掛けの話。
何か最近、サブタイが長いのばっかりに……。
飯田の勉強スケジュールを頭の中で組み立ていると、当の飯田は何やらわたわたしていた。
何をしてるんだか……。
若干呆れながら見ていると、
「……くっ! その休み時間の間だけでも、俺にも勉強を教えてくれ……と言いたいが、流石に割り込むことは、飯田さんに悪すぎる……ぬぅ……!」
藤森がどう表現したらいいかわからない表情で立っていた。
「仮に言ってきたとしても断るけどな」
「何故に!? ……はっ! やはり飯田さんと二人きりが……」
「え? 普通に面倒くさい」
「酷いっ!」
「そもそも飯田に教えるのも面倒だが、そうしなきゃならんのは、お前のせいだし」
「くぅぅ……っ! 飯田さん! 飯田さんからもなんか言ってやってくれ! この友達甲斐のない極悪非道のめんどくさがりに! そしてお願いですから昼休みだけでも一緒に勉強させてください!!」
藤森は俺に暴言を吐きながら、飯田に助けを求めた。
てか、言ってることが無茶苦茶だ。
だが飯田は未だ何かに動揺してる様子で、
「ふぇ!? え? えぇと……あ、諦めて……?」
と言い放った。
……飯田、絶対今までの話聞いてなかったと思うんだけど、的確な切り返し。
最後だけ聞こえてたのか?
藤森は飯田の言葉に打ちのめされた様子で。
「あぁ! やっぱりか! だと思ってたけど! こうなりゃ最後の手段…………ゆっぴー、お助けー!!」
結局、叫びながら東城さんの所に走り出す藤森。
……あの様子じゃ、教えては……くれないだろうな。
とりあえず面倒くさいから、藤森のことは今から二週間くらい記憶から消してしまうことにし、改めて飯田とスケジュールを組んでいく。
「とりあえず何も準備してないから、明日からなー?」
「う、うん……! ふ、ふつつつか者ですがよろしくお願いしましゅ!」
「……色々言いたいことって言うか、ツッコミたいとこはあるんだが……今は面倒だから、いいや……」
その後は、ゆっぴーの愚痴を長々と聞かされたことを除けば、平穏に一日が終わった。
幸い、ゆっぴーがクラスの連中の体たらくに憤慨してらしたお陰で、今日は、からかわれることはなかった。
……しかし、明日はどうなることやら……飯田に勉強を教えることもそうだが、憂鬱すぎる。
「ただいま……」
「ん、おかえり……? シュン? どうかした?」
あまり疲れを隠さずに帰ってきてしまったせいか、夜羽に心配されてしまった。
俺は「なんでもないよ」と言い、夜羽の頭を撫でる。
――この行為、最初はかなり恥ずかしくなったけど、慣れてしまえば自然にやっていた。
夜羽は、撫でられながらも、探るような視線を送ってきたが、何も聞いてこなかった。
それからは、いつも通り家事などをして、結局、夜遅くまで学校での出来事を忘れてしまっていた。
だが人間、忘れていたことは唐突に思い出す。
「……あ! 準備!!」
そう、唐突に、夜羽の体を洗ってる今思い出した。
夜羽も突然の大声に驚いたようで、顔をこちらに向け、
『カァ……?』
と鳴いた。
俺は自然にそれに答える。
「ああ、明日からの勉強のな。テストが近いんだよ」
『カァ、カァー』
「まあ、面倒くさいがな……」
端から見たら頭のおかしい人間に見えるだろうが、最近はカラスの姿でも大体言ってることがわかる。
――ちなみに、今の場合だと、一回目が『準備……?』で、二回目が『そう、がんばって』って所だ。
そのまま俺は話を続ける。
「ったく、ほんとに面倒な事になった。飯田に勉強教えるとか、かなり厳しいだろ」
『………………』
しかし夜羽は突然鳴かなくなった。
「……? 夜羽……?」
『カー』
「早く終わらせろって? わかったけど……どうしたんだ? いきなり」
『………………』
む、無視ですか……。
言われたとおり早めに体を洗い終わると、夜羽はすぐに人の姿になった。
「ん、べんきょうって、イイダマナミも一緒なの?」
「ん? ああ、そうだけど……」
別にわざわざ人の姿に変わって聞かなくてもよくないか?
「…………」
夜羽は妙な目線を送ってくる。
……どうしよう、まだ一つ言わなきゃいけないことがあるんだけど……この状況では、すごく言いづらい。
「えー……っと、その勉強のこともあり、明日から少し、その……帰りが遅くなる……かも」
「………………」
「あ、いや、夕食時には間に合うように帰ってくるつもりだ」
「……………………」
おぉう、さっきから夜羽の視線が鋭くなるばかりだ。
な、何をそんなに怒ってらっしゃるんでしょうか。
……なんか前にも似たような空気になった気も……あー、前も飯田が絡むと夜羽の放つ空気が変わったような。
……………………飯田も気にしてたし、とりあえず聞いてみる、かな?
「……なあ、夜羽。もしかして、飯田のこと嫌いか……?」
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