少女の上機嫌からの急降下、かーらーの?の話。
ふふっ、何でも……かぁ……。
藤森君のおかげで瞬君とこんな約束できちゃった……。
無理やりっぽかったから、ちょっと気は引けるけど。
チャンスがあるなら手にしなきゃ!
それにしても……どうしようかな……?
何でもって言ったって、一つだけだし、面倒くさがりな瞬君のことだから、多分本当に頼まれたことを一つしかやらなさそうだし。
てことは、何となくぼやかして、大ざっぱにお願いしたらいいのかな?
うぅー……どうしよ。
あ、誰かに相談、とか?
でもこんなこと相談できそうな相手って……藤森君? 後……あ! 志戸塚君!
ってあれ!? 今日志戸塚君まだ来てない!
珍しいな……お休み?
風邪とか、かな? だとしたら心配だよ。
とりあえず、後でメールしておかなきゃ。
その後すぐに先生が来て、色々話してる。
話の中で、修学旅行の話が出てた。
あー……忘れてたなぁ。
そっか、もうそんな時期か。
………………んー?
……あ! そうだ、お願いは修学旅行中にしよう!
行き先はクジだからどこに行くかはまだわからないけど、自由時間で何かお願いすればいいんだ!
私ってば、頭いー!
よし、じゃあそのお願いの内容を考えなきゃ……うーん………………あれ? 悩んでる事は最初と同じ?
私がしばらく悩んでいると、先生の口から志戸塚君の名前が聞こえた。
「ああそれと、志戸塚だが、家の事情で二週間ほど休みだ」
あ、おうちの事情だったんだ。
よかった……病気とかじゃなくって。
私がほっと一息ついてる間も、先生は話を続ける。
「一応テストには間に合うらしいが……かわいそうにな、ほとんど勉強出来ないだろう。まあ、多少は考慮してやるつもりだが」
…………………………テ、テスト……?
あ、ああ……ど、どうしよ。本気で忘れてた。
確かあの修学旅行前のテストって、成績には関係ないけど、修学旅行中の自由時間が半分も勉強で潰されるんだった。
ま、まったく勉強してないよぉ……。
困ったな……志戸塚君お休みだし……。
あれ!? ほんとにピンチだ!
お、落ち着いて、落ち着くの、飯田愛美……。
いつも勉強を教えて貰ってる志戸塚君がお休みでも、メールで聞けばいいの……。
どっちにしてもテストの範囲を教えてあげなきゃだめだし、ね?
「誰かメールでテスト範囲教えてやれよ」
ほ、ほら。先生もそう言って、
「……と言いたいところだが、これまたかわいそうなことに、事情で行く場所がかなりの山奥でな。電波は届かないらしい」
………………………………え?
「……えぇ!!?」
私はつい大きな声を出してしまった。
それによってみんなが私の方を驚いたように見てきた気がするけど、今はそれどころじゃなかった。
えまーじぇんしーだっ!!!
た、頼りにしてた志戸塚君が……!
ど、どうしよぉ……。
他の誰かに教えて貰うにしても……ゆりかちゃんは多分「普段から勉強してないのがいけませんの!」って言いながらも、ちゃんと教えてくれるけど……今の時点でかなりの人数が殺到してて、ゆりかちゃんすごく大変そうだよ……。
とりあえずゆりかちゃんに頼るのは無理そう。
藤森君は私と同じのような気がするし。
……うー! 仕方ない! ダメ元で瞬君に頼んでみるしかない!
「と言うことで、お願いします!!」
「何がどう、と言うことで、なんだ!」
瞬君の前につくなり、すぐに頭を下げた私。
でも怒られた。
何で……あ、私何も説明してないや。
私が急いで説明しようとすると、
「……とは言えまあ、大体言いたいことはわかるが」
って言われてしまった。
うぅ……確かにこのタイミングで私が頼むことは一つしかないよね……。
「それで、その……」
「面倒くさい、断る……と言いたいが、その前に聞くことがある」
「え?」
予想してたセリフだったけど、その後に言葉がまだ続いていて少し驚いた。
そして、聞かれたことに、私は固まってしまう。
「これは、この前言ってた『お願い』になっても?」
………………?
………………え。
「え……ぇぇ…………」
瞬君、それはないよぉ……!
ちょっと冗談かと思ったけど瞬君の目は本気で。
「うぅ……はい」
私は仕方なく頷いた。
はぅ……これじゃ意味ないや……。
やっぱり無理やり手に入れたチャンスは使っちゃだめなんだね……。
私の落ち込みを気にせず、瞬君は話を続ける。
「とりあえず、一度頼まれたことだから、責任もって教えてくから」
「……はい」
「今日から二週間は学校の休み時間もきっちり勉強だ」
「……はい」
「目標は高く、全教科八十点台な」
「……はい………………え?」
今、何て?
瞬君を見ると『今、はいって言ったな?』みたいな顔をしていた。
「ちょ、ちょっと待って瞬君。無理だよそんなの。私のいつものテストの目標は『目指せ、平均点!』だよ」
「それじゃ俺が教える意味ないだろ。それにいい点とれば、特典もあるらしいし」
「だからって、むぼーすぎるよ!」
「大丈夫だろ。休み時間もそうだし、放課後も教えるし」
「へ?」
えっと、さっきから私、点数のことしか気にしてなかったけど、もしかして瞬君、なんかすごいこと言ってない?
私の疑問を聞く間もなく、瞬君はどんどん計画を立てていってる。
「休み時間は図書室とかでいいとして、放課後はー……今は俺の家、夜羽がいるから、勉強に集中出来ないか……? 飯田の家は?」
「え? う、うちはお父さんもお母さんも夜まで仕事で家にいないけど」
「ああ、ちょうどいいな。なら放課後は飯田の家で勉強でいいな?」
「へ? は、はい!」
あっと、咄嗟に返事しちゃったけど……。
ちょっと、頭を整理しなきゃ。
……勉強で、放課後に、私の家に、瞬君が?
…………私の家で、瞬君と二人きり……?
……ええぇぇぇぇぇぇーっ!!!!?
し、瞬君何てとんでもない事をっ!?
あ、瞬君、自分でもすごいこと言ったって、気づいてないんだ!
てか、私もいいって言っちゃった!!
それに休み時間も勉強ってことは、学校でもずっと一緒!?
はわわわわわわわっ!!!!
な、なんか、修学旅行中にしようと思ってたお願いより、はるかにすごいことお願いしちゃったみたいだ……!
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