暇な彼女のお迎え中の、いろいろな勘違いの話。
む、ひま。
ガッコウからシュンが帰ってきて、そのまますぐに出かけてしまった。
イチロウの所にユリカと行くって言っていた。
…………む、シュンとユリカが二人でどこかに行くことを考えたら、なんとなく、嫌な気分になった。
……多分、置いていかれたからかな。
「ん、ということで、迎えにいく」
誰に言うでもなく、呟いて、歩いて外に出る。
ふらふらとひまつぶしのつもりで歩く。
すると見たことのあるニンゲンとないニンゲンが前から歩いてきた。
「なー志戸塚ぁ、いーじゃん家に遊びに行くくらい」
「………………」
「うぅ、無視かよぉ……飯田さんとは話したくせにぃ……。通称、俺こと藤森宗一、悲しくて泣いちゃうよ? しくしく」
「………………」
片方は知らないけど、一人はタツハだ。
そのタツハが困った顔をしている。
む……おそらくあれは、シュンが出会ったらすぐに逃げろって言っていた、あれだ、カツアゲだ。
それでタツハはそのカツアゲに話しかけられて困ってる。
多分、うまく逃げれないんだ。
…………ん、ワタシはニンゲンであるシュンに助けられた。
なら今度はワタシがニンゲンを助けるのもいいかもしれない。
そう思い立ったワタシは、駆け足でタツハの元に急いだ。
「ぶー、無視はいかんぞ、無視は。そう言うのはよくな「タツハ」……ん?」
タツハとカツアゲが同時にこっちを見た。
カツアゲは不思議そうな顔をしてるけど、タツハは少し目を見開いてた。
「うぉ! かわい! ……って、た、たつは……? あ、志戸塚、確かおまえの名前、「タツハ、こっち」え!? ちょい待っ!」
カツアゲが何か言っていたけど無視して、タツハの手を取り、狭い道に入る。
シュンに連れられてや空を飛んでるときも、よくこの辺を通るから、ビョーインまでの道は完璧。
狭い道だって迷わない。
…………前に何回か迷ったこともあるけど、行ったことのないとこは迷う。当たり前。 だからホウコウオンチじゃない。
カツアゲから離れて、少し広い道に戻った。
「………………神尾、夜羽」
「ん……?」
「……あー…………いや、助かった。…………どうも」
「ん、いい。でもお礼は『ありがとう』って言わなきゃだめ」
ワタシはタツハの方を向いた。
タツハはまた困った顔をした後、
「………………あ、りがとう」
と言った。
「ん」
言いづらそうだったけど、ワタシもたまにああなるから、多分みんな一緒なんだ。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………いつまで」
しばらくどっちも話さなかったけど、タツハが話しかけてきた。
「ん?」
「……いつまで……僕は、引っ張られてる……?」
「む、忘れてた」
「………………帰っても?」
タツハが帰りたそうにしてたので、帰ってもいいと言おうとしたけど、その前にワタシに声がかけられた。
「あれ、夜羽……? と志戸塚……って志戸塚!? 何故?」
「ん、シュン」
迎えにいく予定だった相手だった。
夜羽のなかで、藤森=カツアゲという名前で定着しましたー。
感想受付中です!