お嬢様に案内させられた動物病院の話。
遅くなりました!
学校が終わり、夜羽には少し出てくることを言って家を出た。
そして通いなれた道を歩き、ヤジマ動物病院に。
とりあえず、着いたけど……。
「何ですの!? 何ですの!? どこからともなく声が!!」
「いや、こっちにいるからね? 隣に立ってるから。てか、あれかい? もしかしてワザとやってる? 意図的に無視してる?」
「ふふっ、この子が愛美ちゃんの言ってたゆりかちゃんね? 結構面白い子だわ」
カオス……と言うのは、こう言う時に使う言葉なんだなぁ……。
「はっ!! 神尾くん! 何ですのここ!?」
「あ! 神尾君! やっぱり君の知り合いだ! この子ひどいんだけど!!」
「あら、神尾君いらっしゃい」
少し時間を置いてもう一回来ようと、背を向けた瞬間に見つかってしまった。
……面倒くさい、この状況。
「東城さん。ここは病院です。お静かに。春川さんも止めてくださいよ」
俺が注意すると、東城さんはすぐに理解してくれ、おとなしくなった。
「すみませんの……少々取り乱しましたの」
「あら、ごめんなさい。ちょっと面白くなっちゃって」
「……あれ? 僕に対する言葉は?」
ん……何か、空気が騒がしいな。
「……神尾君、もしかして今ひどいこと考えてる?」
よくわからない雑音が聞こえるが、気にせずに話を進めよう。
「えっと、まあまずは紹介からですかね。春川さん、彼女はうちのクラスの委員長、東城ゆりかさんです。……まあ、飯田から聞いてたみたいですけど。んで、東城さん。こちらは春川静香さん。ここの受付」
「よろしくですの」
「ええよろしく」
「よし、これでここにいる全員の紹介は終わったな」
「やっぱりワザと言ってるよねぇ!?」
「そういえば春川さんと会うのは久しぶりですね」
この前夜羽と来たときはいなかった。
「そうね。少し前に来てくれてたみたいだけど、その日私休みだったから」
「そうですか」
あのとき話した内容を思い出し、若干ホッとしてるのは秘密だ。
「それで? 今日はどうしたの? いっつも学校終わりはめんどくさがって、ここには来ないのに」
「あー、東城さんが矢島さんに会ってみたいって」
「あら? つまり先生に彼女の紹介?」
「今の話がどう飛躍したんですか!」
思わず突っ込むと、春川さんにクスクス笑われた。
「ふふっ、冗談よ?」
「当たり前ですよ。それで矢島さんは今……?」
「ええ、先生は今診察中よ。患者さんは今の子だけだから、もうすぐ先生は空くから、もう少し待っててね?」
「はい」
「…………」
俺と春川さんの会話をポカンとした様子で眺めていた東城さん。
「どうかした?」
「あ、いえ。随分と仲がよろしいんですのね」
「ああ……ここの人たちが一番心開いてんのかな? 俺」
「そうでしたの」
すると診察室から患者さんと思われる犬と、飼い主さんが出てきた。
ってことは、もうすぐ出てくる。
「すぐ来ると思うけど」
「え、ええ……何か緊張してきましたの」
「何故に」
「いえ、何となくこう、ご両親への挨拶的な」
「いや、どうしてそうなる!」
またも思わず突っ込むと、
「あれ? 神尾君……と?」
狙い澄ましたかのようなタイミングで、矢島さんが現れた。
「どうも」
「は、初めましてですの!」
「あ、うん。えっと、今日はどうしたんだい? 神尾君」
どうしたって……あれ? そもそもなんで東城さんは矢島さんに会いたかったんだっけ。
「とりあえず、お話……ですかね?」
「そっか。それじゃ、こっちへどうぞ?」
言われたとおり、矢島さんについていく。
近くでなんかうずくまって、グズグズ泣いてる存在はほっとこう。
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