番外の話。――ハロウィンの話。2-B
番外の話。――ハロウィンの話。1の続きです!
もう一つ別パターンの番外の話。――ハロウィンの話。2-Aを同時に投稿してますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
学校が終わり、家に帰ると、珍しく出迎えがなかった。
「ただいまっと……」
部屋にいるのかと、少し不思議に思いながらも居間に向かう。
特に今はやる事が無いな……。
とは言え、まだ夕飯の準備には早いし。
どうするか悩んでいると、後ろから声がかかった。
「おかえり、シュン」
「おーただい…………ま」
パッと振り向くと、夜羽は以前に買いに行った服でも、母親の服でもないものを着ていた。
明らかに大きさが合ってない魔女帽子に、だいぶスカートの丈が短い、黒い服、そして黒のニーハイソックス。
要は魔女っぽい服だ。
しかもそれっぽい短いステッキまで持ってる。
「え……と、夜羽さん?」
「ん、シュン。とりっくおあとりーと」
「え?」
「とりっくおあとりーと」
ああ……今日はハロウィン……。
……それはいいとして、一体誰が……って、大体わかるな。
「とりあえずその前に、誰に、いつ教えてもらった? 今日の事」
「ん、ユリカとイチロウに、昨日」
そうか……やはりあの二人か……!
どおりで今日東城さんがいやにニヤニヤしてると思った。
余計な事吹き込んで無いだろうな……。
と、俺が考え込んでいると、夜羽が再度話しかけてきた。
「シュン」
「んー?」
「とりっくおあとりーと」
「……………………」
……さて、どうする……?
実際、手持ちにお菓子とかも無いし……。
「えー……っと、ちょっと待っててもらえるか?」
すぐに買ってくれば大丈夫だろう。
「ん……無いの? 今」
「あー……はい……」
「ん、じゃあイタズラ」
「やっぱりそうなりますか……」
矢島さん東城さん発案なら絶対そういう事になるとは思ってたが。
とは言え実行するのは夜羽。
ひどいイタズラとかはしないだろ。
「それで、何をするつもりで?」
「ん、しゃがんで……?」
しゃがむ……? 何するつもりだ?
「こうか?」
「ん、そう」
夜羽がゆっくりと近づいてくる。
そして、
「ん……目をつむって……?」
「――っ!! はい!?」
何するを気ですか!?
「む、だから、目をつむって?」
「いやいやいや、何する気だ!」
予想だにして無いセリフにだいぶ焦りながら俺は聞く。
が、夜羽はそんな俺を上目遣いで見て、言った。
「……いいから……はやく……」
「――――っ!!!!!」
ここで俺は言われたとおりにしなければいけない、と言う妙な使命感に襲われた。
……そう、言い訳させてほしい。
とにかく言われるがまま、目をつむった。
――――――目を閉じると、異様なほどの心音が聞こえる。
当たり前だ。
何をされるとはっきり言われたわけでも無いが、この状況だと頭には一つしか浮かんで無い。
そうしてる間にも、どんどん夜羽が自分の顔に近づいてくる気配。
そして……。
……フゥッ
「うぁ!!!!」
俺は突然訪れた感覚に、大きく身を引いた。
そんな俺を満足そうに眺めて、夜羽は一言。
「ん、おわり」
だが俺は状況がつかめて無い。
「な、なななな何故いきなり耳に息を!!!!」
そう、目を閉じ待っていると、耳に息を吹きかけられた。
「ん、イタズラ。何をしたらいいか聞いたら、イチロウが『神尾君は耳が弱点で、息を吹きかけられるのが苦手みたいだよ。だからイタズラするならそれをしたらいい』……って」
……あの、ハゲがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
とんでもない事を夜羽に吹き込むんじゃない!!
「む、でも、それをするまでの言い方はユリカに教わった」
やはり、あんたもかっ!!!!
次会ったとき覚えてろ、ゆっぴー!!
俺が二人に対し憎しみを燃やしていると、夜羽がさらに爆弾を投下してきた。
「ん……でも、息を吹きかけられた時のシュン、面白かった。……またするかも」
「ちょっ!! やめてもらえまいか!?」
「む………………シュン、おなかすいた」
「話を逸らした!! やる気満々だ!! ……くそ、何か面倒くさい予感が……」
「シュン、早く」
「……わかったよ」
そしてこの日を境に、朝の俺の起こし方に、ボディプレスの他に、耳への息の吹きかけが加わった……。
二つのお話、いかがでしたでしょうか?
どっちがいいかとか、感想いただけると嬉しいです。
次の季節物では、全然違うメンバーを出す予定です。
さて、次のイベントと言えば……ああ、その日は子供たちが、皆、修行して過ごさなきゃならない『苦理済ます』でしたね。
知ってますよ、出来ない子のとこには『サタン』がやってくるんですよね。