家で真実を……の話。
前話は真面目な話で……。
家まで東城さんを案内し、リビングで少し待ってもらう。
飲み物ぐらいは出さないと失礼だろう。
東城さんに飲み物を渡すと、すぐに口を開いた。
「話を……聞かせていただけるんですのね……?」
「……ええ」
俺は一度、深呼吸をして東城さんを見る。
隣では夜羽が不安そうにこちらを見ていた。
そして、俺はゆっくりと口を開く。
「実は、かくかくしかじかと言うことになっている」
「わかりませんのぉーー!!!! 何ですの!? かくかくしかじかって!! 今まで真剣な雰囲気だったじゃありませんの!! どーしていきなりボケたりするんですの!?」
このやり取りに俺は笑いを噛み殺し、夜羽はポカンとしていた。
ああ、やっぱり、シリアスな雰囲気で話すのは好きじゃない。
「ごめんごめん、重い空気のままは嫌だったから」
「にしても何かやり方というものがありますの!」
東城さんはまだ怒ってらっしゃる様子。
「でも、さっきまでの空気は壊れたじゃないか」
「そうですけど! 何か納得いきませんの!」
「そう、それはよかった」
「どういう意味ですのー!?」
「……シュン」
俺はもう少し遊んでいたかったが、夜羽が、話が進まないから早くしろ的な目で睨んできたから少し話を戻そうか。
「ふぅ、東城さん。話を続けますので、少し静かにしててもらっても?」
「り、理不尽ですの……!」
「結論から言いますと、お察しの通りです」
「ずいぶんサラッと言いましたのね。……本当、ですの……?」
「見てもらったほうが早いか。夜羽」
「ん」
夜羽も何をすべきかはわかっていたようで、すぐに元の姿に戻った。
「………………」
東城さんは言葉をなくしているようだった。
「予想してたとは言え、やっぱり驚くか」
「……当たり前ですの……元々、突拍子も無いありえないような仮説でしたし、まさか本当にその通りだとは……。……一つ聞きますの。夜羽さんは……その、どちらですの?」
質問の意味を一瞬だけ考え、俺は答える。
「人の姿になれるカラス、だ。今の姿が夜羽にとって本当の姿だ」
「……わかりましたの」
後ろで夜羽は人の姿になった音が聞こえた。
すると東城さんが若干動揺しだした。
「っ…………!」
「? 東城さん?」
「その、人の姿になるときは、毎回、ああ、ですの……?」
「ああって……あー……東城さんが考えてるようなことは無いぞ。いつもすぐに着るように言ってるし、なるべく隠れてなるように言ってあるから」
東城さんが言いたいのは『夜羽が人の姿になるとき、毎回何も着てないのか』だと理解した。
今現在、後ろで服を着てる音も聞こえるし。
「それでも……二人暮らしでこの状況は……いつ何が起きてもおかしく無いのではありませんの……?」
「東城さん、何度も言うように何も無いから! てか、今追及すべきとこはそこじゃないと思うが!」
「……そう、ですの。今は置いておきますの」
渋々納得してくれたようだ。
つか、今はかよ。
そんなやり取りをしていると、服を着終わった夜羽が東城さんに話しかけだした。
「ん、ユリカ。聞きたいことは終わり?」
「いえ……正直聞きたいことはたくさんあるのですけど、色々ありすぎて頭が混乱してますの」
そう言い、頭を抱える東城さん。
そんな東城さんを夜羽が心配そうに見つめる。
「ん、大丈夫……?」
「…………ありがとうですの。大丈夫ですの。少し時間が経てば落ち着きますの」
「ん」
そして少しの沈黙の後、俺がまず口を開いた。
「東城さん。聞きたい事がたくさんあるって言ってたけど、正直俺たちが答えられることは少ないぞ?」
恐らく東城さんが一番知りたい事は『どうして夜羽は……』ってことだと思う。
でもそれは、
「……それは、あなたたちもこの現象をよく理解して無いと……?」
「そういう事。でもって俺は夜羽を目立たせるような真似はしたくない」
要約すると、調べるなんてことは思わないでほしい、だ。
夜羽は疑問符を浮かべていたが、東城さんならその意味はわかってもらえると思う。
俺は夜羽に辛い思いはさせたくない。
「…………わかりましたの。このことは誰にも言いませんの」
「東城さん……ありがとう……」
俺が礼を言うと、東城さんはそっぽを向いて言った。
「別にわたくしはあなたの為を思ったわけじゃありませんの。わたくしも夜羽さんのことを気に入ってしまっただけですの」
「……東城さん、本当にありがとう。感謝の気持ちでいっぱいだから、ツンデレなセリフについては突っ込まないよ」
「――――っ!!!」
顔を真っ赤にさせていた。
それを見て笑っていると、夜羽に睨まれた。
「シュン、ユリカ、いじめちゃだめ」
「いじめてるんじゃないぞ、からかってるんだ」
俺の言葉を聞いたのか東城さんはキッと俺を一睨みして、
「……今度は、あなたたちの事を聞かせてもらいますのよ? あなたたちの生活について……ね」
と、黒い笑みを浮かべながら言ってきた。
おおぅ、からかいすぎた。
今回のは真面目な話ではありませんでした。
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