彼とお嬢様の攻防とそれを傍観する彼女、そして……の話。
「ともかく! 話を進めますの」
ユリカがワタシとシュンが話してるのを遮り、言った。
む、今度は何の話をするんだろう。
そう思っていると、シュンが質問を投げかけた。
「東城さん、話って自己紹介のことだろ。それは今終わったんじゃ?」
シュンの言葉にユリカはちょっと笑いながら言う。
「違いますの。本題はこれからですの」
…………むぅ、本題……? 何だろう?
「本題? 何のこと?」
ワタシが考えて聞こうと思っていたことを先にシュンに聞かれてしまう。
「それは……あ、そうですの。アイスも食べ終わりましたし、ついでなんで神尾くんの家で話をしますの」
「何でそうなった!?」
シュンがすごく驚いてる。
「朝も言ったとおり、健全な暮らしをしているか確かめる必要がありますの。それにあまり聞かれたくない話ですの」
「嫌だよ! ここでいいじゃん」
「さ、サッサと行きますの」
「無視か!!」
ん、よくわからないけど、シュンの家で話をするようだ。
今、シュンの家にまっすぐ向かっているけど、少し気になる事がある。
「ん、ユリカ?」
「……はい、なんですの?」
「どうしてシュンの家に迷わないで行ける? 前に来た?」
「いいえ、しっかり下調べが済んでいるからですの」
「下調べ……?」
どういうことかシュンに聞こうとしたけど、シュンは「やっぱりか……」て、俯きながら呟いていて、聞けなかった。
住んでるマンションが近くなったとき、シュンがユリカに話しかけだした。
「東城さん、やはり私の家に行くのはやめてくれまいか」
「何故ですの? ……もしかして見られて困るものでも?」
「無いけど。いや普通、男子高校生の家ならあるとは思うが……」
「ならいいではないですの」
なんとなくわかってたけど、シュンは家に誰かを入れるのはあんまり好きじゃないよう。
…………ワタシは、いいのかな? いてほしいって言われたからいいと思う。
家に向かってサクサク歩くユリカを見てシュンは、少し考え込み、
「……ゆっぴーはそんなに俺の部屋に来たいのか? 何がしたいのやら……」
と、ニヤリと笑いながら言った。
そしたらユリカはいきなり戸惑いだした。
「なっ何がって!? 先ほども言いましたの! 少し確認するだけですの!」
「何でそんなに焦ってるんだ?」
「それはっ! 神尾くんが変なことを言うからですの!」
「俺は、何がしたいか聞いただけだよ。まあ、確かにさっきもそんなこと言ってたね。忘れてた」
む、なんだかさっきまでシュンが押され気味だったのにいきなり逆になった。
「そ、そうですの! 忘れる神尾くんが悪いですの!」
「うん、ゴメン。で? 何でそんなに焦ってたんだ?」
「そ、それは……」
「朝も言ったけど、ゆっぴーが想像して様なことは無いんだけどなぁ」
朝……? ガッコウ、かな?
それにしてもシュン、なんだかちょっと楽しそう。
………………むぅ……。
「あ、ああ朝も言いましたけど、何も想像してませんの!!」
ん、ユリカの顔が真っ赤だ。
それを見たシュンは、すぐに言った。
「じゃあ、別に家に来る必要ないと思うが」
やっぱり家は嫌なんだろうか。
「それは……そうですけど」
ユリカもちょっと納得気味。
なら、
「ん、家に行かないならここで話をする?」
ワタシが尋ねると、すぐにシュンが続けた。
「ああ、そういう事になるな。東城さん、何かまだ話があるならここで聞こうじゃないか」
ん、シュン、家に連れてかなくなって、ちょっとホッとしてる。
ユリカは何かを考えながら、周りを見渡して言った。
「…………まあ、確かにここなら人通りも少ないですし、話してもよさそうですの」
む、確かに今は他にニンゲンはいない。
「そういえば東城さん最初に人に聞かれたくないとも言ってたか」
「ええ、ですので家で話したかったんですの。でも、そんなに嫌ならとりあえずここでいいですの」
ユリカは不機嫌そうだ。
そんなユリカに苦笑いをしながらシュンが尋ねる。
「それで、話って……?」
「ええ、それでは……」
そしてユリカは真剣な目でワタシのほうを向いた。
「ん…………?」
? 何だろう?
「夜羽さん。あなたは一体誰なんですの……?」
……え……?
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