ある休みの日の午後の話。2
俺は矢島さんの言葉で、混乱していた。
今、矢島さん、なんて言った?
……プロポーズ?
そんなまさか。
俺は前に夜羽に言った言葉を思い出す。
『……こう言えばいいか? 今日まで夜羽と一緒に過ごすのが当たり前になりすぎた。だから夜羽が居なくなるのは、寂しい。……俺と一緒にいてくれないか?』
…………言ってる、ように聞こえる……。
確かにこれならプロポーズに聞こえるかもしれない。
ってか、むしろそうにしか聞こえない……!
「ぉぉぉぉ……!」
は、恥ずかしい……。
恐らくあの時の夜羽も気づいてはいないだろうが、俺はとんでもないことを言っていた。
しかもそれが今回、矢島さんにも知られてしまっている。
道理で来たときから妙にニヤニヤしてると……。
とりあえず、弁解が必要だ。
「矢島さんわかって「ん、シュン。プロポーズって何?」……おぅ」
矢島さんに何かを言う前に、夜羽に遮られてしまった。
しかもその質問は、このタイミングでは爆弾にしかならないものだ。
「夜羽ちゃん。プロポーズと言うのはッモガッ……!!」
矢島さんが勝手に答えようとするのを口を押さえて止める。
「よ、夜羽。と、とりあえずそれは置いておこう。今度話すから」
「……ん、わかった」
よし、わかってくれた。
後は帰ってから適当に誤魔化そう。
……出来れば。
「あーびっくりした。まあ、神尾君。皆まで言わずともわかってるよ。君の性格上無自覚で言ったんだろうね」
矢島さんはいつの間にか俺の拘束をはずし、座っていた。
「…………わかってるならいいんです」
「まあ、とりあえず言っておくけど、自覚無しとは言え、女の子に軽々しくそういうこと言っちゃだめだよ。発言には責任が付き物だからね?」
「責任……ですか……。――っ!! と、取れと!?」
責任の意味を考えると、そういう結論にたどり着き、また顔が熱くなる。
「いや、そうとは言ってないよ。ただ、もうちょっと考えて行動したらってこと」
「はあ……」
……考えずに動いたことはあんまり無いんだけどな。
でも確かに最近は、思い立ったことをすぐに行動に移してる気もする。
実際藤森にも、俺が変わった、と言われたぐらいだ。
いつからだろうか……。
そこまで考えたところで、ふと夜羽が目に入る。
「そっか……夜羽が来てからか」
「ん……? ワタシが、何?」
っと、つい声に出してしまった。
「や、なんでもないよ。矢島さんの言うとおりですね。もうちょっと考えて行動してみます」
「そうだね。そうしてほうがいいかも」
――でも……。
「でも、考えない行動も後悔はしてませんから」
「……そうか。だったらいいんだ」
そして俺と矢島さんの二人で笑いあう。
夜羽は俺たちを見て、ポカンとしていた。
が、すぐにムッとした顔になり、
「シュンもイチロウもワタシを話に入れない。退屈」
と拗ねてしまった。
そんな様子に、俺はクスリと笑い、夜羽に謝る。
「悪い、そんなつもりはなかったんだって」
「……ん、ちゃんと謝って」
「ごめんなさい」
「ん、帰りにケーキを買うなら許す」
甘いもので簡単に許してくれる夜羽に苦笑いをする。
「……わかったよ」
「ん、許す」
「ありがと」
その後は帰るまで、最近あった出来事を話した。
ちなみにその時、矢島さんから夜羽に、俺の個人情報が流れてることを知り、再度矢島さんを拘束したことは言うまでも無い。
そして帰り際。
俺は矢島さんに引き寄せられ、
「……考えない行動も後悔して無いなら、プロポーズみたいなセリフの件も後悔して無いって事だね?」
と、ニヤニヤ顔で言われた。
「――――っ!!!!!」
今日の俺は赤面しすぎだ……。
「それじゃあまたね、神尾君、夜羽ちゃん」
「……はい、また」
「ん、また」
そして二人で家路につく。
瞬君やっとあの時の言葉を理解しましたー。
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