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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
学校で一緒。
57/144

ある休みの日の午前の話。3

 さらに続きだね。

 夜羽が高嶺の家に遊びに行きたいというから連れて来たんだが、

「シュン、こういう時の遊ぶって何?」

 と聞かれてしまった。


 ……逆に問いたい。何がしたくて来たんだ。


 結局、他愛も無い世間話をして過ごした。





「それじゃ、もう昼時なんで帰りますね?」

「ん、帰ります」

 玄関先で高嶺と彼女のお母さんに告げる。


「一緒に食べていったらいいのに」

「そうですよ!」

 二人してそう言ってくれた事をうれしく思ったが、さすがに朝早くから訪れて、その上食事までありつくなんて図々しい事は、出来そうに無い。


「いえ、そこまで迷惑をかけるわけにはいかないので。じゃ、高嶺もまた」

「ん、ホタルまた」

 そう言って、俺と夜羽はドアを開け――ようとした。


「ちょっと待って」

 だが、何故か高嶺のお母さんに腕を掴まれ、とめられた。

 高嶺も驚いた表情をしていた。


「えっと……何か……?」「お母さん!? 何してんの!?」

 二人で声を揃えて質問をすると、高嶺のお母さんはニコッと笑った。


 ちなみに夜羽はこの光景をポカンと見ていた。


「いえ、別に大したことじゃないの。ちょっと気になって」

「はあ、何がですか?」


「高嶺、だと私もそうなのよね。だからそう呼ぶとわかりづらいから、この子の事、名前で呼んであげてくれないかしら?」

「はい!? いや、それは……」

 何の前触れも無い、突然すぎる提案だった。


 というか、前に高嶺自身にも同じようなことを言われた気がする。

 ……やはり親子……。


「いいじゃないの。神尾君……だったわよね? 名前を呼ぶくらい減るもんじゃないし、この子も呼んでほしがってるし」

「お、おおおお母さん!?」

 高嶺が顔を真っ赤にさせていた。


「ほら見なさい。この子も否定して無いわ。とにかく、紛らわしいから名前で呼んじゃいなさい」


 高嶺母のその言葉に、高嶺自身も若干期待を込めたような目をこちらに向けてきた。


 んー……別に呼びたくないとかそういうんじゃないけど、正直恥ずかしいんだが……。

「はあ…………じゃあ、この家に遊びに来たときだけ」


 その答えに高嶺母は納得いかないような表情を浮かべたが、

「……ま、いいわ、とりあえずそれで。慣れてきたら、普通に呼んであげてね? そのほうが喜ぶから」

 と、渋々といった様子でそう告げた。


 その間、高嶺は真っ赤な顔で自分の母にボソボソと何かを言っていた。

 何を言っているかは聞き取れなかったが、言われた本人が完全に無視しているので、文句か何かなんだろう。





「じゃ改めて、お邪魔しました。またな……蛍」

「は、はひっ! まままたいらしてください!」


 後ろで高嶺母がクスクス笑いながら自分の娘を見ていた。

 この人は一体何がしたいんだろうか。


「……おじゃましました。……ホタル、また」

「あ! う、うん、夜羽ちゃんもまた来てね?」

 慌てて夜羽にも挨拶をする高嶺。


「む……ホタルはワタシのことを忘れてた」

「えぇ!? そそそんなこと……ない、よ」

 そんなしどろもどろになったらいくらなんでもバレるぞ


「むー……」

 ほら。


 ……仕方ない。

「夜羽。行くぞー」

「…………ん」

 高嶺に対する多少の助け舟のつもりで、夜羽に声をかけ、高嶺家を後にする。



「それじゃ、必ずまたいらっしゃいね? 夜羽ちゃん。……それにもちろん、神尾君も、ね?」

 ドアを閉める直前、そんな声が耳に届いた。









「……夜羽、今度遊びに行くときは、一人で行ったり、しないか?」

「ん……? 何で?」

「………………いや?」


 ふ、深い意味は無いぞ……?



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