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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
学校で一緒。
54/144

彼が知る彼女の思いの話。

 昼休みが終わる直前に目を覚ますと、まだ周りに人だかりが出来ていた。

 ――しつこいな、おい。


 とりあえずは、

「少し前に怪我をしたカラスの世話して、怪我が治った後、外に飛び出していった。今日来たのはそのカラスに間違いないと思うけど、何で来たかもわからない。弁当についてはあのカラスに聞いてくれ」

 と、適当かつ、嘘はつかない説明をした。


 それでも渋々納得した風なクラスの連中は、昼休みが終わった後もまだ何か聞きたそうな顔をしていたが、もちろん面倒くさいので全て無視した。

 飯田と藤森は俺がこれ以上絶対に話さないとわかっていたからか、もう聞いてはこなかった。


 某委員長が何かを考え込んでいたのが気にはなったが。




 放課後、さっさと身支度を済ませ、帰宅を図ろうとする俺を藤森が呼び止めた。

「あいやまたれぃ!」

「断るけど何?」

「断るけど!? 俺の考えは筒抜けか!」

 ずっと言い続けてたんだ。わからないほうがおかしい。


「って事で、じゃ」

「はっ! 待てゴラァ!」

 はい、絶対に待ちません。



 俺はそそくさと家路につく。







「ただいま」

 もう習慣になりつつある挨拶で家に入ると、

「……おかえり」

 落ち込んだ雰囲気で、辛そうな表情をした夜羽が出迎えた。


「夜羽……大丈夫か?」

「ん、何が?」

 気になって声をかけるが、夜羽はそのままの顔で俺を見上げた。


 恐らく夜羽は、自分がどんな顔をしているのか気づいていないのだろう。


「何が、じゃないぞ。何か辛そうな顔してる。どうかしたのか?」

 そう尋ねると、夜羽がゆっくりと口を開いた。


「…………シュンがいつも楽しそうに話すガッコウに、ワタシも一度行ってみたかったの」

「だからわざわざ弁当にして飛んできたのか」

「ん……でも、ガッコウのニンゲンはワタシを嫌いな目で見てた」

「……ああ……」


 そうだった。

 元々、夜羽は人間が嫌いだった。

 自分たちを迫害してきた人間が。


 今は人として色んな人間と触れ合ってきたおかげで、少しは人間嫌いも治っていった。


 でも今日、学校で夜羽を見たのは、夜羽の嫌いな、迫害の目……嫌悪の目……恐怖の目……。

 そのせいで、少し思い出してしまったんだ。


 人間への恐怖を。


「だから……ワタシ」

「もう、いいよ」

 少し目に涙を浮かべながら夜羽が話を続けようとしたが、俺はそれを遮り、


 ……ポン


 ゆっくりと夜羽の頭に手を置いた。


「……シュン……?」

「もう話さなくて大丈夫だ。ゴメンな? そんなこと思い出してるなんて考えてなかった」

「……ん、謝らなくていいの。私が勝手にガッコウに行ったから」


 夜羽は自分が人間にどう見られているのかを改めて確認して、もしかしたら今は自分と仲がいい人間も自分の事を知ったらあの目で見てくるかも。そう思ってしまい、怖くなっていた。


 夜羽のそんな思いをわかった上で。



「……そっか。でも安心しろよ? 俺は――大丈夫だから」



「あ…………」


 夜羽の目から涙が流れ落ちる。


 そして俺を見つめ、


「ありがとう」

 色んな思いを込めそう告げた。





 少し間を置き、やっと落ち着いた夜羽が俺に聞いてきた。


「シュン、どうしてワタシの頭に手を置いたの?」

「んー昔、親にやられて覚えてたんだけど、泣いている時は頭を撫でるって」


 実際、以前に蛍を説教し、涙させたときも、ほぼ無意識にこの行動をとっていた。


 その言葉を聞き、夜羽は少しそっぽを向いた。

「? どした?」

「……泣いてない」


「……プッ! そうか、すまなかったな?」

「む……笑った……」

「悪かったって」


「むー…………」


 少し怒ってしまった夜羽を見て、俺は内心ホッとする。




 そう考えていると、夜羽は怒りを納め、

「シュン、今までもニンゲンの生活について教えてもらったけど、ワタシはもっと知りたい。……ニンゲンを知れば、少しは辛くなくなるかもしれないから」

 と頼み込んできた。


「…………わかった。俺に教えれることならな?」




「ん、シュン。ワタシに色んなことを、教えてほしい……」



「――――っ!! おう……!」

 若干きわどい台詞に動揺してしまった。


 が、そんなこと知る由も無い夜羽は、無意識に更なる追い討ちをかける。


「ん……シュン、顔、赤い。大丈夫……?」

 そう言いながら夜羽は近づく。


「だ、大丈夫だから」

「? ならいい、けど」


 ……夜羽の無自覚は時に凶器になると思う。


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