乱入鳥さんの話。
藤森が妙に騒いでしまったおかげで、数人が窓に注目しだした。
そして次第にザワザワしだす教室内。
その状況の間も、窓の外のカラスは――夜羽は、コンコンと窓を突き続けている。
チラッと周りを確認すると、ほぼ全員が困惑している中、飯田がもしや、見たいな目でこっちを見ていた。
――――変なとこで鋭いな……。
とりあえず放っていくわけにもいかず、俺は窓に近づく。
その途中クラスの連中に「お、追い払うのか!? 危なくないか!?」とか「カラスって頭いいから嫌な事した人間を覚えて、仕返しするって聞くよ!?」とか言われたが、全て無視した。
そして何のためらいもなく窓を開ける。
『ちょっ!!!』
その行動を見ていたほぼ全員に突っ込まれたが、当の本人……じゃなくて本、鳥? は、トントンと足で跳ねながら、先ほどまで俺が座っていた席まで行き、
『カー』
と、わざわざこちらに向きなおし、一声鳴いた。
――……それは早く来いという意味かな?
すでに言い訳やら今後どうするかやらを考える事が面倒くさくなっていた俺は、のろのろと自分の席に着いた。
すると夜羽は、器用に弁当箱を包んである布と弁当箱の蓋を外してた。
カラスの姿の癖に器用だなーと的外れな事を頭に浮かべながら「いただきます」と呟き、自分の弁当を食べ始める。
同じタイミングで夜羽もか『カァ』と鳴いた。
恐らく意味は、いただきますだ。
そして夜羽は一つ一つおかずを食べ始めた。
――ほんとに器用な。
もちろん自分に向けられる様々な感情が織り交ざった視線は全て無視している。
さすがにこの状況で一緒に飯を食う気にはならなかったのか、藤森は少し離れた場所でこちらを見ながら購買のパンを食べていた。
自然とこの教室の中にカラスについて触れてはいけないのだろうか? みたいな空気が流れ始めていた。
が、残念ながらそんな空気をまったく気にしない人物がこのクラスにいるのだ。
「ちょっと瞬君!! このカラスってもしかして瞬君が飼ってた、あの!?」「神尾くん!! 一体どういうことですの!? このカラスさんは何ですの!?」
さっき復活したばかりの飯田愛実とクラス委員長の東城ゆりかだ。
いろいろ面倒だな、と思いながらもさすがにこのまま無視するわけにはいかず、
「飯田さん? 俺には『飼ってた』とか『あの』っていうのが良くわかりません。それと東城さん、どうと言われても困る。見てた通り、俺は暑かったから窓を開けたら勝手に入ってきて、何故か俺の席で弁当を食べだしたんだ。それ以上でも以下でも無い。ってことで、はい解決! お二人ともさっさと自分の席にお戻りください」
と、適当なことを並べ話を打ち切った。
しかし当然そんな話で納得するはずもなく、
「いやいや!! わかりませんって、無理があるよ!?」「…………東城さん……もう、ゆっぴーとは読んでくれないんですのね……」
飯田のツッコミの声が大きすぎて、東城さんがなんて言ったか聞こえなかった。
まあ、適当な説明に対する文句だろうけど。
「とにかく、話すことはありません」
「何で私のとき敬語!? ……じゃなくて! ちゃんと説明してよ!? ね? ゆりかちゃんも何とか言ってやって!」
飯田に話を振られた東城さんだが、なにやらぶつぶつと考え込んでおり、聞いてなかった。
「え!? ちょっ! ゆりかちゃん!?」
「…………はっ! ごめんなさいですの! 神尾くん! ちゃんと説明するべきですのよ!」
やっと我に返った東城さんも口撃に参加した。
ああ、面倒くさい……。
「「面倒くさがらないでちゃんとはなして(ですの)!」」
……読まれた……ダブルで。
しかも二人して同じ言葉でつっこまれた。
「………………さて」
どういう話を作ろうかと頭を悩ませていると、
『カァ』
と隣から聞こえた。
そちらを見ると、弁当箱が空になっており、夜羽がこちらを見ていたので、さっきのはご馳走様なんだろう。
「ふむ、お粗末さまです」
そしてその後すぐに、
『カー』
と鳴いた。
「………………あ、包みなおせと」
そう言うと嘴を縦に振ったので、肯定だろう。
――ま、確かにその姿のまま包みなおせたら驚きだわ。
包んで夜羽に渡すと、すぐに咥え、そのまま外に飛び出していった。
……………………ほんとに何しにきたんだろ……?
とりあえず夜羽がいなくなったので、説明する必要性はなくなったと思っていたが、
『今のはどういうことだ!!?』
と、今度はクラスのほとんどに詰め寄られた。
「……何?」
『何、じゃねーよ! 今のもうほとんど会話してるようにしか見えなかったわ!!』
「うるさいなぁ……」
『おい!!』
俺は残っている弁当をそそくさと食べ始めた。
その間、周りから聞こえる質問、疑問等には、全て無視させてもらった。
そしてさっさと食べ終わり、
「ご馳走様でした。……さて、寝るか」
食後の睡眠を貪ることにした。
『おい!!!!!』
――こいつ等チームワーク抜群だなー。突っ込むタイミングばっちり揃ってるー。
寝落ちる寸前まで聞こえたクラスの連中の声をBGMに、俺は意識を落としていった。
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