彼と学校の友人との話。
続きであり、繋ぎの話です。
一通り笑い終わった藤森が改めて尋ねてきた。
「で? 何の話してたんだ? クラスの迷惑とか言ってたけど」
ああ、そのセリフが聞こえてきたから、突っ込んだんだったか。
とはいえ、藤森に話す内容でもないだろう。
「別に。大した事じゃない、気にすんな」
俺はたいして気にとめた様子もなく、そう告げた。
その言葉に、藤森は納得の行かないような顔で少し考えた後、
「……………………なあ」
ゆっくりと話し始めた。
「んー?」
「お前さん、夏休み終わってから少し変わったなぁ」
突然の始まった話に、俺は訝しげな表情を浮かべる。
「なんだよ、いきなり。…………変わった?」
変わったと言われてもそんな気はしないが。
藤森はいつもなら絶対しないような真面目な顔を浮かべて話を続ける。
「面倒事を嫌ったりするところは変わんねぇけど、人との関わりかたとかが。今までは適度に愛想よく、皆に嫌われないような、作ってる様な振る舞いだった。でも今は、少なからず自分を出してるって言うか、素の自分っぽいって言うか……とにかく、お前変わった」
「………………」
藤森が何を言いたいのかがわからず、黙って話を聞く。
「あー……つまり何が言いたいかってーと…………せっかく素の自分を出すようになったんだから、ついでに俺と本当に友達なってくれってこと」
「は?」
突然跳んだ内容の話に、俺は疑問符を浮かべる。
「だから……今までお前、友達つっても、学校の中だけの……しかもどっか壁を作ってる友達しかいなかったろ」
「…………!」
俺は目を見開いて驚く。
それは自分の作ってきた薄い交友関係があっさり見抜かれた事……ではなく。
藤森が、それを知った上で――俺が本気で友達を作ろうとしていなかったことを知った上で、一緒にいた事に、俺は驚いていた。
「正直、お前がその薄い関係のほうがいいと思ってるなら、俺もその薄い関係を続けるつもりだったけど、お前が少しでも変わったなら、もしかしたらその考えも変わるかと思ってな」
「………………藤森……」
「やめろよ、その感動のシーンみたいな雰囲気出すの。で? 俺と友達になってくれるのか? 本当の意味で」
藤森はニッと笑い、再び尋ねた。
「…………そうだな。なってやってもいいぞ?」
「へっ! 上からかよ! なんだったら親友ってポジションくれてもいいんだぜ?」
「ああ、それはまた別の話」
「なんだそりゃ! ……ま、いいや。改めてよろしく頼むわ」
「ああ、まあよろしく」
真面目な話が終わり、藤森が「で?」と前置きをおいて尋ねる。
「さっきの話し、聞かせてくれるんだろうな? ん?」
「さっきの?」
「ほれ、クラスに迷惑がどうのこうのの」
「あー………………」
夜羽の件か。
別に話しても話さなくても、どっちでもいいけど。
てか、この話しが聞きたかったから、真面目な話をしだしたのか、こいつは。
馬鹿か。
「別に大した事じゃない。うちで親戚を一人預かってるってだけ。東城さんが大げさに言っただけだって」
と、大方の概要を伝える。
別に間違いじゃないし、そこまで詳しく話すつもりはなかったが、藤森は納得しなかった。
「それだけで委員長はあんな言い方はしないだろ。他になんかあんじゃないのかー?」
「俺が一人暮らしだから問題なんじゃないか?」
俺がそういうと、藤森は考え込みだし、
「…………っ! まさか、女の人か!? しかも年頃の!」
自力で答えにたどり着いた。
――意外と鋭いのな。
藤森は俺に詰め寄る。
「そうだろう! どうなんだ神尾!! 同棲なのか!?」
しかし動じない。
「さあ?」
実際人じゃないわけだし。それに同棲と言うべきじゃないような気もする。
しかし、その言葉で勝手に納得した藤森は、ニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。
「そうかい、同棲か。なるほどな。それは確かに問題ありっぽく聞こえるわ。で? どんな子なんだ!? かわいいのか!?」
……面倒くさそうなので、無視して机に突っ伏す事にします。
「あ! おい! 寝るな!」
「……チャイム鳴るぞ、席もどれ」
「くっ! 飯時に詳しく聞かせてもらおうじゃないか!!」
自分の席に戻りながらそう言い放つ藤森であった。
…………面倒くせ。
藤森がいなくなった後、ふと今日は飯田が来なかったなと思い、飯田の席の方に目線を送ると、暗い雰囲気を漂わせながら、静かに座っている飯田がいた。
……凹みすぎじゃね? そんなに強く言ったわけじゃないんですけど。
投稿してみてなんですけど、この話は今のところ、あってもなくてもどっちでも良かったような気も……。
まあ、こういう話もいずれ書きたいと思ってたので、それが早まっただけ、なのか……?
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