彼が話し、委員長がいじられる話。
次の日ですの。
「え? 弁当?」
「ん、そう」
朝、自分の分の弁当と夜羽の昼飯を作ろうとしたとき、夜羽が自分の分も弁当がほしいといってきた。
「いいけど……今日は外で食べんのか? 公園とか」
「ん、家じゃないとこで食べる」
「? そうか」
妙な言い回しを少し疑問に思ったが、とりあえず気にしない事にした。
「それじゃあ、いってきます」
「む、いってらっしゃい」
いつものように挨拶をして家を出る。
本当は今日は休んでしまおうかと考えていた。
面倒な事が起きるのを知っているためだ。
がしかし、それをすると何か家まで押しかけてきそうだったので止める事にした。
「………………」
そっと教室のドアを開けると、
「おはようですの! さあこちらへどうぞ?」
早速東城さんに捕まった。
「こちらへどうぞって、ここ俺の席……」
「さて、聞かせてもらいますの。昨日の子は誰ですの?」
スルーされた。
「……ふー、あいつは夜羽。遠い親戚で、いろいろ事情があって今、うちで預かってる。事情は聞くな」
「そうなんでしたの。つまり昨日言っていた気まずい思いをさせてしまったのは彼女と言うことでいいですのね?」
「…………そうだね」
まあ、昨日出会った時点でバレてたと思うけど。
「それにしても神尾くん。あなた確か一人暮らしでは? それでいくら親戚とは言え、女の子と同棲というのは、いささかまずいのではないですの?」
「……そこは知ってしまった人の心意気一つなんだけど?」
「…………ふぅ、わかりましたの。黙っていておきますの」
「ありがとな」
そう俺が言うと、東城さんは顔を赤くして、
「か、勘違いしないでほしいですの! このクラスで問題が起きてほしくないだけですの!!」
と、まくしたてた。
「「ツンデレかっ!!」」
それを聞いた俺と――いつからいたのか、藤森が同時に突っ込んだ。
「違いますの!! と言いますかいつから聞いてたんですの!? 藤森くん!!」
「いや、今来たばっかり。んで、教室に入ったときに、まさに! なツンデレセリフが聞こえてきたから……つい」
藤森の言葉に、東城さんはコホンと咳払いをして、
「ま、まあいいですの。改めまして、おはようですの藤森くん」
話をそらした。
「おう、おはよう。委員長」
「委員長ではありませんの。わたくしにも名前がありますの」
「おお、わかった。ゆっぴー」
「ちょっ! ゆっぴーは止めてほしいですの!」
ゆっぴーは藤森がつけた東城さんのあだ名で、一部男子内では一般的に使われている名である。
当の本人はさすがに恥ずかしいのか、使われるのを必死で阻止している。
「え? なんで?」
「なんで? じゃありませんの! 恥ずかしいですの! 何度も止めるよう警告していますのに! いい加減にしないとわたくしにも考えがありますのよ!?」
権力を行使した強行手段だ。
「えー……こまる」
「なら止めればいいですの!!」
ここまで黙っていた俺が参戦することにした。
「まあまあ、落ち着きなよ。ゆっぴー。只のあだ名だろ?」
「――――っ!! 神尾くん、あなたまで!!」
またも顔を赤くして、東城さん――もとい、ゆっぴーが怒る。
「? どした? ゆっぴー?」
「……もう知りませんのー!!!」
そしてとうとう怒ってどこかに行ってしまった。
藤森は大爆笑しながらその様子を見ていた。
とりあえず、後で謝っておく事にしよう。
……それと怒った東城さんは志戸塚のところに歩いていったようだ。
つまり、今の愚痴を志戸塚に聞かせるつもりなのだろう。
……とりあえず、志戸塚にも後で謝っておく事にしよう。
うーん、会話文に使いやすいからと、ゆっぴーを使いすぎてしまってるかも。
そろそろ自重しなければ。