家での彼女が悩む話。
「…………ぅー……」
ワタシは自分の感情をどこに向けたらいいのかがわからず、困っていた。
昨日のことを思い出すと、また顔が熱くなる。
シュンに言われるまで自分はとんでもないことを言い続けていたのだ。
しかもその後、シュンの上に乗っかる体型になってしまった。
よくはわからなかったけど、シュンの反応を見る限り恥ずかしいことをしたのだとわかった。
結局、昨日はそれまで蓄積された恥ずかしさから部屋に籠もってしまった。
「でも…………」
ワタシは朝のシュンの姿を思い出し、
「……でもそのあとはシュンも話しかけてこなかったし、朝になったらいつも通りだった……」
そう呟き、若干顔をムッとさせる。
正直、恥ずかしいので昨日のことは忘れてほしかったけど、まったく気にされないのはなんとなく納得がいかない。
そう言った矛盾した感情がワタシの中に生まれる。
「……むぅー……!!」
今の妙なもやもやと昨日の恥ずかしさが相まってどうしたらいいのかわからなくなる。
今ワタシに出来るストレス発散方法は、空を飛ぶ事だけだった。
ポンッ!
いつもの音を響かせ、カラスの姿に戻り、ベランダから飛び立つ。
何も考えず空を翔ける。
一時間ほど飛び回ったワタシは、少し疲れたのか、近くの木で文字通り羽を休める。
『ふぅー』
ある程度動き回った事で、少し心が落ち着き、改めて朝の事を考えた。
朝、シュンは普段どおりの態度で、ワタシに接してきた。
まるで昨日のことなんて取るに足らないことのように。
『……シュンは、ワタシの事はあまり気にならないのだろうか……?』
そう呟いたところで、ワタシは昨日のシュンの態度を思い出した。
『……でも、昨日はシュンも恥ずかしそうだったし、顔も赤かった」
ふと、頭にある考えが浮かぶ。
――シュンはそんなワタシをそっとしておいてくれて、しかも今日の朝は何も気にして無いように振舞ってくれた……?
それなのにワタシは昨日のことを気にしすぎて、シュンとほとんど話すことが出来なかった……?
そして、シュンが学校に行くときの困ったような顔がワタシの頭に浮かぶ。
『……あぅ……ワタシ、シュンに悪い事したんだ』
シュンに対する申し訳なさがワタシの頭を占める。
『帰ったら謝らないと……』
そして、家に向かい、羽を動かす。