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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
学校で一緒。
42/144

彼女との気まずい空気と学校での委員長の話。

 朝起きるとすでに夜羽は起きていた。


 もう落ち着いたかと思い、声をかけると、

「おはよう夜羽」

「お、はよう」

「……………………」

「……………………」

 ……まだ、気まずいようだ。


 俺自身は昨日のことは気にしてないのだが、やはり恥ずかしかったのは夜羽のほう。

 たった一晩で、この空気を取り除くのは難しいのかもしれない。


 朝食を食べているときも、何度か話しかけると、答えはするが、目を合わせようとはしてくれない。


「じゃ、いってきます」

「いってらっしゃい……」

「……………………」

「……………………」


 さて、どうしようか。




「んー……ケーキかなんかでも買って帰るか? ……いや、喧嘩してるわけでも夜羽自身怒ってるわけでも無いから、機嫌を直すとかそういうことじゃないんだよな……」


 家を出てから学校まで俺はずっとどうすればいいか考えていた。










 教室に到着する頃には、考えることに疲れていた。


「ふー……お、今日は藤森も飯田もまだ来てないのか」

 ほっとしながら呟く。


 今日は静かな朝が過ごせそうだ。

「おはようですの。神尾くん」

「………………おはよう、委員長」

 前言撤回します。


「委員長と呼ぶのは止めてほしいですの! 委員長はわたくし以外にもいますし。わたくしには東城とうじょうゆりかと言う名前がありますの!」

「はいはい……東城さん。何か御用で?」


 そう俺が聞くとジッとこちらを見つめ、はっきり告げた。

「愚痴ですのっ!!!」


「……は?」

「神尾くんも見たのでしょう!? このクラスの体たらく! わたくし以外のもう一人の委員長ですら宿題をやってこないで、挙句見せてくれと言ってきたんですのよ!!」

「はあ……」

「わたくしそういうことする人が大嫌いなんですの! それなのに先生はそれが当たり前かのように一週間も期限を延ばしましたのよ!? 納得がいかないんですの!! しっかり期限内にやってきたわたくし達のほうが馬鹿みたいですのー!!!」

「…………」


 東城さんは気づいて無いんだろうけど、大声で叫んでるもんだから周りの生徒がこっちを見てから気まずそうに目をそらしてるぞ。

 このクラスの奴ら半分ぐらいは東城さんに好意を寄せてるっぽいから、その文句を周りに聞かせただけで、だいぶ罰になってると思う。


 なぜか俺が睨まれてる気がするけど。


 言いたいことを言い終わったからか、普通の声に戻り、話を続ける東城さん。

「ふぅ、一方的に愚痴を聞いてもらって申し訳ないですの」

「いいよ。聞いてただけだし」

「それだけでもありがたいですの。あ、神尾君も何か言いたい事ありましたら聞きますのよ?」

「あん? んー……」


「……それにしても、実際まともにやってきたのはわたくしと神尾くんだけではありませんの? 飯田さんはやってあったみたいですけど、自分でやったとは思えませんし」

 まだ話したりなかったのか。


 ちなみに飯田が自分でやって無いってのは正解。

「まさか、神尾くん教えてあげたんですの?」

 それは不正解。

「まさか。俺じゃない。それとまともにやってきたのは俺らだけじゃないよ」

「え? でもこのクラスでやってきてたのは、わたくしと神尾くんと飯田さんと……志戸塚くん?」

「うん」

「……でも、こう言っては失礼かもですけど、いつも赤点ギリギリの志戸塚くんが自分でやったとは思えませんの」


 ……この学校に他人と点数を知る手段は無いはずなんだけど、何故志戸塚の点数知ってるんだろうか。


「誰かに見せてもらったと?」

「……ええ、申し訳ありませんけど」


 実際このクラスの生徒……いや、恐らく先生もそうだろう。

 皆が志戸塚が自分でやってないと思ってる。


「……そこがわかんないんだけど」

「え?」

「あいつにそんな社交性があると思ってんのかね?」

「あー……では、志戸塚くんは自分で?」

「ああ、あいつは実際頭いいよ。テストの点がさっき東城さんが言ったとおりの点数だったら、あいつは毎回狙ってそことってんじゃないかな? たぶん、解答欄を埋めるのが面倒だから、必要最小限しか埋めないとか」


 東城さんが目を丸くしているのがわかる。

 そして志戸塚の席まで歩き出そうと、

「ちょっと待った!」

「何ですの?」

「どこ行くの」

「志戸塚くんの所ですの。直接聞いてきますの。それでもし本当なら、謝らなければ。昨日見せてもらったと思って、怒鳴りつけてしまいましたの」


 そんなことしてたのか……。


「とにかく止めてあげてくれまいか? さっきも言ったけどあいつは社交性無い。話しかけられるの嫌いだから。聞いたって絶対話したりしないだろうし、怒鳴ったこともなんとも思ってない。すまないと思ってんならほっといてやってくれ」


「…………よくわからないですのー……」

「そんなもんだって」

「まあいいですの。それよりもさっきも言いましたけど、神尾くんは何かありますの?」


 ん、ああさっきのこっちの話も聞くって奴か。

「あー……愚痴じゃないんだけど、相談聞いてくれるかー?」

「え!? ええ、もちろん。それにしても神尾くんが相談なんて珍しいですのね?」


 自分から聞いてきたのに意外と驚かれた。

「んー、まあ……えっと、女の子に恥ずかしい思いっていうか、気まずい思いをさせちゃったときはどうすりゃいい……?」


「予想外にピンクな話題でしたの!! あなた一体何をしましたの!?」

「いや、何もして無いって……。ただ勘違いが重なって相手に恥ずかしい思いをさせちゃったつうか」


「…………それは、飯田さんですの?」

 話の内容に驚き、半眼で睨んできた東城さん。


 何か急に不機嫌になったような気がする。


「違う」

 はっきり否定したのだが、まだ何か納得いってない様子。


「まあ、相手が誰かが激しく気になるところですけど……なんとなく教えてもらえなさそうな気がしますので、置いておきますの」

「そうしてもらえると助かる」


 東城さんは少し考えた後、

「んー……気まずいだけなら時間が解決するのでは? それでも不安なら神尾くんのほうから一回謝るべきですの」

「謝る?」

「ええ、気まずい思いをさせている自覚はあるんですのよね? だったら、特に悪いことしてなくても男として謝っておくべきですの」


 …………よくわからないけど、委員長が言うならそうなんだろう。

「わかった。参考にしてみる。ありがとう」

「いーえ。今度ちゃんとお相手のこと聞かせてもらいますの」

 そう言って東城さんは自分の席に戻って行った。


 そのとき少しだけ見えた顔は、考え込んでいるように見えたのは気のせいだろうか……?







 それと、さっきから教室の入り口付近で、ニヤニヤしている藤森とメッチャ睨み付けて来る飯田がいるような気がするのも気のせいだろうか。

 こういうキャラを一回使ってみたかったんで……。

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