彼の照れと彼女の激しい羞恥の話。
互いの報告も終わり、食事の準備に取り掛かる。
その間、夜羽はテレビを見ている。
最近前に比べ、より人間の生活を満喫しだした夜羽は、着々と家の中の電化製品を使いこなし始めていた。
始めは突然ついたテレビに驚いていたりもしたが、今では自分で見たい番組に回している。
――いいこと……なのか?
人間の生活になじみすぎて大丈夫かと思わないことも無い。
だが、
「出来たぞー」
簡単な料理を作り終え、夜羽を呼ぶ。
「ん、食べる」
それに応え、すぐにかけてくる夜羽。
今の生活を悪く思っていない俺は何も言うことはできない。
「さて夜羽、カラスの姿に戻ってくれ。体洗うぞ?」
そう言って俺は夜羽を呼んだ。
「………………?」
だが夜羽は不思議そうな顔をして、こちらを見つめていた。
「? どうし「怪我、治った。シュン、お風呂」…………………………」
頭を抱える。
まだ諦めてなかったのか…………。
「む、どうした?」
今にも服を脱ぎだしそうな夜羽に俺は若干焦りながらもいう。
「……あー……その、何だ……一緒にお風呂に入るってのは、さ……何て言うか……」
「む?」
「あー……そういうのは、あ、愛し合ってから……というか……夫婦か、せめて恋人になってから」
「アイシアッテ? ……フーフ? コイビト……コイビト? ……」
何かに気づいたように目を見開く夜羽。
「シュン。コイビトというのは、恋仲のこと、か?」
「ん……ああ、そう、だ」
「フーフというのは……」
「えっと何つったらいいか……夫婦、とか……つがい、とかか?」
「メオト……ツガイ……!」
俺のつがいという言葉で何かに気が付いたような顔をする夜羽。
改めて考えると、動物においてつがいとはその行為をするためになるものとして捉えていたんじゃないだろうか。
そしてかなり動揺しながら、俺に尋ねる。
「な、なら、アイシアッテって……!」
「えーっと、そういう仲になる状況、とでもいうか……」
ここまで聞いた夜羽は、
ボッ!!
と、音が聞こえそうな勢いで、顔を真っ赤に染めていった。
自分が俺に求めていた、お風呂に一緒に入るというのは、その行為――繁殖行為をするような深い仲のものがするものだと知ったようで、困惑する夜羽。
「お、おい? 夜羽?」
俺はいつもあまりうろたえない夜羽がここまで動揺するのを初めて見た。
「シュ、シュ、シュン! お、おおおお風呂に一緒に入るのが、そこまで、ふ、深い行為だとはし、知らなかった! なんかいもそういうこと言って、ああああああ謝る!」
「い、いや、俺も詳しく教えてなかったし」
最初は俺も動揺していたのだが、その後の夜羽の慌てっぷりを見て、少し落ち着いていた。
今は真っ赤になってワタワタする夜羽を物珍しげに眺めていた。
それに気づいた夜羽はさらに慌て、
「あ、あああああうぅ! み、見ない、で……!」
と言って必死に俺の目を手で隠そうとしてきた。
突然、押し寄られた俺は、バランスがとれずに倒れてしまう。
それに巻き込まれ、夜羽も倒れてしまう。
「っと!」
「ひゃぅ!」
結果、夜羽が俺を押し倒したような構図が出来上がる。
夜羽も最初はそのことに気づかなかったが、俺はどうしても照れから、不自然に視線をはずしてしまった。
それを見た夜羽は、今自分が人間にとってどういう体勢かを悟ってしまったようで、
「――――――――っ!!!!」
赤かった顔をさらに真っ赤に染め、声になら無い声を出して、カラスの姿に戻り飛びながら夜羽が使用している部屋に逃げて行った。
「…………とりあえず、少しの間そっとしておくか」
今は俺も顔が赤いと思う。
番外編? の続きでした。