彼女の話。2
ワタシが生まれる前からワタシたちに対するニンゲンの対応は変わっていない。
ワタシたちはただ生きているだけだ。
でもニンゲンはそれを良しとしない。
ワタシたちが近寄れないように網や棘をつけている所も少なくない。
ワタシたちを脅かそうとしてなのか、円盤状の光ものや、妙な人形や、小さな石がぶら下げてあったりもする。
皆、最初は警戒するが、危険の有無を判断すればそんなものは何も気にはしない。
ただ、仲間の死体やそれに似せて作られたものをぶら下げてある時もある。
初めてその光景を目にしたとき、ワタシは呆然としてしまった。
信じられなかったのだ。
ワタシたちは、ニンゲンが捨てたものを利用してるに過ぎない。
いや、捨てたもの以外にもネズミと呼ばれる小動物なども、狩って生きている。それはニンゲンたちにとっても、プラスになるはずである。
それなのに、塀に立っているだけで、ニンゲンはワタシ達を避けて歩く。
空へ飛び立っただけで、ニンゲンは一瞬怯えをみせる。
ワタシたちは存在するだけで迫害され、罠を張られ、捕らえられ、命までも狙われる。
『それなのに何故……?』
あのニンゲンに少し興味を持った。
とにかく早くこの狭い空間から出なくては。その為にはこのままじゃだめだ。
『あれを使うのはいやだけど……』
白い格好のニンゲンがいないのを確認し、物音を立てないように外に出た。
外はもう暗くなっていた。
元の姿に戻り、空へと飛び立つ。
傷は痛むのであまり遠くへは行けそうにない。
では、どこへ向かっているのだろう。
何も考えていなかった。
でも多分、あのニンゲンの所に行こうとしている。
どこにいるのかわからない。
けれど、不思議と見つからない気はしなかった。
だから今、私の目に入る姿に、ほとんど驚きはない。