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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
37/144

番外の話。――夏休み最終日と彼女の話。

 何も言わずにシュンの家を出た。


 付けていたホウタイは、シュンの家ではずしてきた。

 服はなんとなく持ってきてしまったので、近くに隠しておくことにする。


 カラスの姿に戻り、空を飛ぶ。


 しばらく感じることのなかった感覚。

 その感覚を一頻り味わった後、ワタシは目的の地を探す。


 あの時、一心不乱に逃げてきたから、方向なんてまったくわからない。

 ただなんとなく、懐かしさを感じる場所を探すのだ。










 結局、何もわからずじまいだった。


 もう夕方になる。

 あと少ししたら暗くなってしまうだろう。


『どう、しよう……』

 近くの木に止まりながら今後のことを考える。


 すると近くに見知った気配を感じ取った。

『(ホタル……!)』

 今までも、何かあるとホタルに相談に乗ってもらうことの多かったワタシは、今の状況を相談しようと思ったのだ。

 急いで服を隠しているところまで飛び、着替えてホタルの居る場所まで走る。


 ホタルはいつもの服じゃなくて、妙にキチッとした服を着ていた。


「ホタルッ!」

「あれ? 夜羽ちゃん? こんにちは」

「ん、こんにちは。……シヤンは?」

 ワタシは何日も蛍やシヤンと触れ合ううちに、すっかりシヤンとも仲良くなっていた。


「あはは、見ての通りだよ? 今日から私たちは学校だったからね。シヤンは連れてない。散歩の時間をお昼から早朝にずらしたんだ」

「ガッコウ? ナツヤスミは?」


「あれ? 夜羽ちゃんの学校はまだ夏休み最中なんだ? 私たちは今日からだったんだ」

「ん、そうなのか」

 夏休みというのをまだ詳しく把握できていなかったワタシはとりあえず流すことにした。


「それで、夜羽ちゃんは何か焦り気味だったけどどうかした?」

「む、相談ある」

「相談?」


 だが、ここまで言ったところで、どう説明してどう相談すればいいのかわからなくなってしまい、

「……あ、えっと、一人で過ごすのは、どうすれば、いい?」

 と、要領の得ない相談になってしまった。


 しかし、そんな相談にもかかわらずホタルはしっかり理解し、問いかけてくる。

「一人って、神尾さんは? 何かあった?」

「ん、違う。……怪我も治った。シュンの家にいるの、迷惑」

「だから、一人で過ごそうとした?」

「ん」


「違うと思うよ、それ」

「?」

「んーっと、私もうまくいえないし、どういう状況でそんな話になったかもわからないけど、今は神尾さんが面倒見てくれてるんだよね?」

「……ん」


「それって、つまり神尾さんは自分を頼ってもいいって言ってるのかもしれないよ?」

「頼、る」

「うん。迷惑をかけるって事は頼るってことだと思う。私は神尾さんなら、もうちょっと頼ってもいいとも思うよ?」

「………………」


 言いたい事はわかったけど、なんとなく納得しきっていないワタシに、ホタルはさらに問う。

「それなら、さ。夜羽ちゃんはどうしたいの?」

「…………どう……?」


「うん。夜羽ちゃんが一人になりたいんならそうすべきだと思うし、神尾さんと一緒にいたいなら、無理して一人になる必要はないと思う。要は夜羽ちゃんがどうしたいか、じゃないかな?」


「ワタシが、どうしたい、か?」



 言われたことを理解するのに時間がかかり、しばらくポカーンとしてしまった。


「私そろそろ帰んなきゃだから……ゆっくり考えてね?」

 ホタルはそう言い残し去っていった。


 かと思えば、すぐに引き返してきた。

「そうだ! これ! 私の連絡先ね? 電話番号とアドレスと一応住所もあるから……何かあったら呼んでね? それにいつでも遊びに来てもいいから」


 そして今度こそホタルは去っていった。







 もらった連絡先を握り締めながらワタシは、これからどうするかではなく、自分が一体何をして、どうしたいかを考えていた。




 こうして下す決断は、自らのためのもの。

 なってましたか? シリアスっぽく。



 とりあえずこれで夏休みの話は終わりです。


 次の更新で章を区切ってみたいと思います。

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