彼と彼女の夏休み最終日の話。
最初一人称、途中から三人称になります。
飯田と他愛の無い話をした後、何もする気も起きずにふらふらと家に帰った。
――……また一人の生活に慣れるには少し時間がかかるかもなー。
ガチャッ
「ただいまっと」
ついその言葉が出てしまったのは、この短い間で出来た習慣であった。
だが今はそれに返すものはいない。
「ふー……」
特に疲れた訳でもなく、ただなんとなくため息をつく瞬。
コン。
とりあえず明日からの登校の準備をしなければと立ち上がる。
コンコン。
――ベランダの窓から音がしている……?。
「…………気のせい、か……? ……まさかな」
コンコンコン。
「……気のせいでもないみたい、か」
だとしたらもうそれしかないだろうと、若干何が待っているかを理解しながらもベランダに向かう。
勢いよくベランダの窓を開けると、
ひたすらに元気そうなカラスが一羽、こちらを見つめていた。
『カー』
「……それはただいまって意味か?」
瞬の言葉を無視してカラスは我が物顔で家に入り込む。
そして突然、
ポンッ!
と軽快な音を立て、人の姿になった。
「ん、そう。ただいま」
「………………」
「む、おかえりはどうした? シュン」
「…………ろ……」
「む?」
「さっさと服を着ろぉーーーーー!!!!!!!」
「ん、忘れてた」
「で?」
「で、って?」
「…………何にも言わず包帯だけ置いて消えたから、元の生活に戻るのかと思った」
「ワタシもそのつもりだった。でもワタシがどうしたいか考えたとき、ここにいたいと思った」
「……そうか」
「…………いいの? いて」
「ああ、好きにしろ。前にも言ったが、家に招いた相手は自分に出来る最大限のもてなしをしろって言われてるって。お前がここに居たいってんなら、もてなすさ。……面倒くさいけどな」
最後の一言はただのテレ隠してある。
その言葉に困った表情を見せる夜羽。
「……招いてない」
「招いたと思うけど? 俺はベランダの窓を開けて夜羽を招き入れた。違うか?」
「………………」
まだ少し悩んでいるような表情を見せる夜羽に瞬は意を決し、本心を伝えることにした。
「……こう言えばいいか? 今日まで夜羽と一緒に過ごすのが当たり前になりすぎた。だから夜羽が居なくなるのは、寂しい。……俺と一緒にいてくれないか?」
かなりテレながら伝えるが、誰か他の人が聞けば、ほとんどプロポーズにしかなってないことに瞬は気づいていない。
「……ん、ワタシも寂しいのは、や」
そう言って笑顔を見せる夜羽。
この答えも聞きようによってはプロポーズを受けたようにしか聞こえないが、もちろん夜羽が知るはずも無い。
「じゃ、改めて……おかえり、夜羽」
「ん、ただいま、シュン」
そして一人と一羽の、彼と彼女のゆるーい生活は続く。
とりあえず、夏休み編? 完結、みたいな感じです。
この後一回番外みたいなの……てか、夏休み最終日の鳥さんバージョン挟んでから、学校が始まってからの話をやりたいと思ってます。
学校編? は、ストックを作ってから更新したいので、もしかしたらだいぶ間が空くかもしれません。
どうか見捨てずにお願いします!!
感想もお待ちしてます。