それぞれの心の中の話。
少し真面目な話で。
もうすぐ怪我が治るという朗報を聞かされ、始めこそ二人で喜びはしたが、その後なんとなく空気はギクシャクしていた。
どちらも、治った後の事を考えていたからだ。
「……あ、鳥肉ねぇや。夜羽、俺は買い物行ってくるから、先に帰っててくれ」
「ん、わかった」
妙な空気のまま、瞬は鍵を預け、バラバラに行動を開始する。
瞬は夜羽と離れた後、ふと足を止めた。
頭に浮かぶのは、やはり今後のこと。
はじめから、なんとなく一緒に生活をはじめ、いつの間にか一緒が普通になっていた。
まるで家族が生きていた頃みたいな感覚を持ってもいた。
それでも、別れは来るとわかっていた。
夜羽には夜羽の生活はあるのだ。
夜羽が時折、窓の外を眺めていることも、外から別のカラスの鳴き声が聞こえるたび、複雑そうな顔をしていたのも知っている。
やはり、元の生活の戻りたいと思うこともあるのだろう。
夜羽がどういう選択をするのかはわからないが、それはどんな形であれ受け入れなければならない。
――――だとしても……。
「…………寂しくなる、な」
それは、かつて瞬が家族を失ったときも言う事のなかった言葉。
夜羽は家で寝転がり、考えた。
瞬と同じく、今後のことを。
それは、前にも考えたこと。
そしてそのときは結論が出なかったこと。
しかし、もうすぐ決めなければならない。
そのために思い出す。
自らの怪我の原因を。
あの時、逃げ延びたのは自分だけ?
周りは皆、死んでしまった?
縄張りだった場所はどうなった?
確認しに行くべきでは?
もし仲間は無事で、縄張りも無事だったなら?
自分はそこに戻るのだろうか。
でも、シュンの家に安心感があるのも事実。
シュンと一緒にいるのは嫌じゃない。
むしろ楽しく感じてると思う。
なら、ニンゲンはどうか?
ニンゲンとして過ごしてきて、いいニンゲンがたくさんいるのもわかった。
ニンゲンとも仲良くなることが出来た。
でもワタシはニンゲンじゃない。
いつまでもニンゲンの振りをしていると迷惑になる。
ワタシはここを離れるべきではないのか?
シュンとは離れなくてはならないのではないか?
――――だとしたら……。
「…………寂しい……」
それは、夜羽が今まで生きてきて一度も使うことのなかった言葉。
買い物を終え、戻ってきた瞬と他愛もない話をする夜羽。
決断の日が近いことを理解しながらも、彼も彼女もいつも通りの日常を続ける。
えっと、シリアス風にしてみたんですが……なってましたか? シリアス。