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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
33/144

彼の空気いじめとからかわれと無自覚の話。

 続きです。

 矢島さんには無事、本当の話をすることができた。

 夜羽の怪我については、夏休みが終わるごろには完治しているだろうと言っていた。

 夜羽も飛べる日が近いと上機嫌である。




「おや? 矢島さんとの話は終わったのかい?」


「さて、夜羽。晩御飯、何が食べたい?」

「ん。から揚げ」

「うーん、から揚げね……。わかった、そうしよう」


「おーい!! 無視ー!?」

「ああ、空気さん。いたんですか」

「クウキ。びっくりした」


 相変わらず、存在感の薄い人だ。


 まあ、気づいてたけど。


「君は相変わらずきついね!? そして、夜羽ちゃん! さすがに神尾の名を冠するだけあって、すぐにこのノリについてきたね!」


「? ノリ?」

「気にしなくて良いと思うよ」

 恐らく夜羽は本気で気づいていなかったと思う。

 この人の気配は慣れてなきゃ絶対読めない。

 きっと、バスケでは幻の六人目シックスマンになれるに違いない。



「とにかく、話し終わったんだ」

「終わりましたけど……なんでですか。……つか、気配消して盗み聞きしてないでしょうね?」

「してないよ!! そんな人間に見えるのかな!?」


 正直見えるし、それができる人間であることも知ってる。

「そうですね。すみませんでした」

「なんか信用されているように見えない!! しかも夜羽ちゃんも!」

 言われて隣を見ると、夜羽も疑いの目を向けていた。


 まあ、あれだけ驚かされたら、わからないでもない。


「それじゃあ、帰ります」

「え、このタイミングで」

「ん、シュン早く」

「はやっ!!」

 夜羽はすでに扉の前にいた。


 今すぐ出ようとしている夜羽だったが、それは阻止された。

 別の人間が中に入ってきたのだ。


「む?」

「あら? ごめんなさい。大丈夫?」

「平気」

 入ってきたのは、見たことのあるきれいな女性。

 てか、春川さんだ。


「こんにちは。春川さん」

「あら? 神尾君? こんにちは」


「……シュン? 帰る?」

 夜羽は晩御飯がから揚げだからなのか、早く帰りたがっていた。

「え? えっと?」

「あー、夜羽。紹介するからちょっと待って」

「ん、わかった」

 春川さんは少し驚いている様子。


「えーっと、春川さん。……なんとなく、聞いてるとは思いますけど、こいつは夜羽です」

「夜羽。よろしく」

「ええ! 聞いてるわ? 私は春川静香。よろしくね夜羽ちゃん?」

「ん」

 夜羽は若干警戒してるのか、気持ち動きが硬くなっていた。


 しかし、春川さんはお構いなしだった。

「話は聞いてたけど……こんなに可愛いとは思わなかったわ……。神尾君。何もしてないでしょうね?」

「し、してませんよ!! 何言ってるですか!」


 いきなりのとんでもない発言だった。


 夜羽自身が意味がわからずきょとんとしているのが唯一の救いだ。


「だって、こんなに可愛いから」

「だからって、妙な疑いをかけないでください」

「ごめんなさい? でも……ふふっ。可愛いことは認めているのね?」

「っ!!!」


 たまにこうやってからかってくる事もあったが、ここまで大きいのは始めてだった。

「顔、真っ赤よ?」


「……っく! た、確かに可愛いですよね? でも春川さんも美しいですよ?」

 悔しかったのでちょっとした反撃に出る俺。


「あら? ありがとう。私も神尾君と一緒に暮らしたいかも」

「んなっ!!!」

 失敗だった。

 てか、見事にカウンター食らった。


 クスクス笑っていて、からかわれているのははっきりしているのだが、顔が赤いのは抑えられていない。

 絶対に勝てないような気がする。


「シュン? もういい? 行こ?」

 すると、今まできょとんと春川さんとの攻防(だと言わせてください)を見ていた夜羽が助け舟をくれた。

 まあ、本当に早く帰りたいだけなのかもしれないが。


「んー、夜羽ちゃんご立腹みたいだから、そろそろ行くね?」

 ――ん、ご立腹……?

 不思議に思い、横を見ると確かに怒り気味の顔をしている夜羽がいた。

 何に怒っているのかはわからなかったが、どうやら本当に助け舟だったらしい。


「夜羽」

「む?」

「ありがとうな」

 助け舟に対して礼を言うと、赤面し、顔をそらした。

 何か、照れさせるようなことを言っただろうか? それとも怒らせたか?

「ん。気にしないでいい」

「? そうか」


 正直、何に対して気にしなくていいかわからなくなったが、とりあえず置いておくことにした。

「それじゃ、帰るか」

「ん、帰る」






「あーちょっと待って? 神尾君。大村君知らないかしら?」

「大村……ああ、空気さんですか。確か春川さんが来る前まで、隣にいたはずですけど」

「空気……新しいあだ名ね? ふふっ、ピッタリだわ。……それにしても……逃げたわね?」

「?」



 後半は何を言ったか聞こえなかったが、なんとなく空気さんがひどい目にあうような気がした。

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