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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
30/144

彼と彼女の待ち時間と空気の話。

 夜羽に矢島さんの協力を仰ぐことを許してもらった次の日、瞬と夜羽は二人、でヤジマ動物病院に来ていた。


「ふー……」

「…………」

 これから話す内容を頭に浮かべるだけで緊張する。

 矢島さんを信用してはいるが、この緊張はどうしようもない。

 隣にいる夜羽も同様だった。


「やあやあ、神尾君。今日は一人じゃないんだね? そのかわいい女の子は誰かな? もしかして?」

 何の前触れもなく後ろから声をかけてきたのは臼井だった。

 夜羽も気づいていなかったのか、明らかに驚愕している。


「……何が、もしかして? だ。妙な勘繰りはしないでいただきたい。臼井」

「妙な勘繰りって……てか、もうさん付けですらないよ……」


 うっとうしい臼井は無視しようかと思ったが、ふと気になることがあったので、まずそちらを尋ねることにした。

「どうしたんすか? その絆創膏」

 そう、彼の顔にはいくつか絆創膏が張り付いていた。


「…………聞かないでくれるかな……?」

 聞いた途端、見て取れるほど気分が沈んだ臼井。

「はあ、まあ良いですけど。あ、そういえば春川さんは休みですか?」

 それを聞いた瞬間、更に沈んでいく臼井。

 何なんだいったい。

「春川さんなら……午後から来るよ? 今日は午前中に用があるらしい……」


「はあ、そうですか」

 とりあえず、これ以上は聞かないほうがいいと判断した瞬は即座に話を変えた。


「ところで臼井さん」

「ああ、さん付けが戻ってきた……。じゃなくて! そろそろほんとにやめたほうがいい。その臼井って言うの」

「? 何故ですか? そんなに嫌がっているようには見えなかったんですけど」

「やっぱり気づいていなかったか。いいかい?」

 と、臼井は声を小さくし、

「君が僕のことを臼井、と呼ぶたびに、矢島先生の肩がビクッと震えてることがある。正直、見ていて不憫でならないんだよ……」


「…………それは……気づきませんでした……」

「うん。だから矢島先生もはっきりと態度には出さないけどさ」

「…………わかりました」

「そうか、わかってくれたか」

「はい。別のやつを考えておきます」

「……んんー? 何か望んだ結果とは少し違うけど、まあいいか。それで、どうしたの?」


「ああ、紹介をしてなかったんで」

「あ、その子ね? じゃあ、僕から自己紹介しよう。僕の名前は「あ、そうだ、空気って名前にしよう。夜羽、この人の名前は空気さんだ」……うぉーい、自己紹介するってったじゃん! 自己って意味わかってる!? ってか空気って!! よりひどくなった!!!」

「ワタシは夜羽。よろしくクウキ」

「うわーお! その名前受け入れちゃった!? いやいや、夜羽ちゃん? 違うよ? 僕の名前は「空気」……僕の「空気」…………も、いいです。よろしく。夜羽ちゃん……って苗字は?」

「ミョージ……」

 しまった。

 まだ何も考えてなかった。


「……ワタシも、カミオ?」

「!!」


「ん? どういう?」

「空気さん。夜羽は俺の遠い親戚に値するんです。なんで、神尾で」

「ああ、そうなんだ」


 無難なところに落ち着いた。

 よく考えれば、夜羽に苗字の説明などしていない。

 なので、最初に聞いた苗字で覚えていたのだろう、神尾を口にしたんだと思う。


「じゃあ、紹介も終わったんで、そろそろ戻ってください空気さん」

「クウキ。また」

「……うん。ちょっと隅っこで泣いてくるよ」

 そう言って走り去った空気を二人で見送った。


「おや? 神尾君、来てたのかい?」

 と矢島が奥から現れた。

 今回の目的の登場だ。


 気づけば、先ほどまでの緊張も解けていた。

「(意外と、空気も役に立つ)」

 ここにはいない男に少し感謝して、矢島に話しかける。


「うん。ちょっと話があって」

「うん? 良いけど、その子は?」

「それについても話すよ」

「…………わかった。もうすぐ休憩だし、こっちへ」


 促されるまま、瞬と夜羽は矢島について行く。


 臼井君もとい空気君をいじるのは楽しいです。

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