表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
28/144

相談と決意と緊急事態の話。

「んー……」

 瞬は悩んでいた。

 夜羽がこの家に来て約二週間。

 矢島さんに隠し事をするのをやめるべきなのでは、と。

 正直、そろそろ隠していくには人手が足りないのだ。


 夜羽の怪我もほぼ完治している。

 もちろん今も少しだけなら飛ぶこともできるが、あと少しすれば完全に空を飛ぶことも可能なのかもしれない。

 夜羽自身もあと少しで全て治るとうれしそうに言っていた。


 だが、一度は詳しい検査をしてもらうべきだと思う。

 それにはやはり、獣医である矢島さんに協力を仰いだほうが、物事がスムーズに進むような気がする。


 しかし、夜羽がそれに対して、どういう反応をするのかが不安だった。

 夜羽もだいぶ人間に慣れ、友達の高嶺と犬のシヤンとも着々と仲良くなっていっている様子。

 それでも、本当に信用している人間以外は警戒心を緩めない。

 飯田などは常に警戒されっぱなしだ。


 愛美は、瞬の家の場所を把握してからは、三日に一度のペースで訪ねてきていた。

 瞬は八割方、居留守でやり過ごすのだが、運悪く夜羽の帰宅時間とぶつかってしまうときもある。

 夜羽には鍵を渡してあるので、居留守自体はばれていないが、夜羽はいつも非常に迷惑そうな顔をしていた。


 とにかく、矢島さんに話すのは夜羽の反応を見てからだ。


「ん。どうした?」

「……いや? なんでもない」

 タイミングが掴めない……。

「む、何か言いたそう」

「そ、そうか?」

 最近、夜羽が鋭くなってきている。

「ん、そう!」

「あー……えっと」

「…………ヤジマ?」

「んな!? ……なんで?」

 激しく動揺する瞬に夜羽は冷静に続ける。

「わかる。最近ビョーインでのシュンの様子おかしい。絶対向こうもわかってる」

 態度に出ているつもりはなかったのだが……平静を装うことは得意だったし。

 ――どうも最近うまくいかない。

「……まあ、そうなんだけど」

「ん、話して?」

「……まずは夜羽? お前、矢島さんの事どう思う?」

「? どう?」

「信用してるか。ってこと」

「…………わからない。……何故?」



「矢島さんに夜羽のことを話そうかと思ってた」

「! ……理由」

「ああ、やっぱり怪我の事とかは俺じゃあはっきりとはわからない。専門家の知識は必要だと思った。それと俺はあの人を信用してるから。俺たちが困るような事は絶対にしない」


「…………正直に言うと……怖い。シュンはあっさり受け入れてくれたけど、ニンゲンの常識でワタシの存在はありえない。ワタシ達は……いつも迫害される」

「……夜羽……」


「……でも、話したほうがいいと思うなら話していい。ワタシは怖いけど、シュンはヤジマを信用してる。ならワタシはシュンを信用する」


「……ありがとう」

「……ん」

 とりあえず、話しに行くのは明日にしようという事になり、ひと段落し

「瞬くーん!! あそぼー!」

 たかに思えた。



「いないのー?」

「…………」

「…………」

 とりあえず居留守決定です。

 何度も鳴り響くチャイムを無視して、瞬と夜羽は息を潜めた。

 が、ここで最悪の事態が。


「あれ? 鍵あいてる?」


「「!!?」」

「ぶよーじんだなー」

 と言いながら、入ってこようとする愛美。


 まずい。この状態で入ってこられたら確実に一つ聞かれることがある。

 カラスはどこか。


 愛美は前々から瞬の家のカラスに興味を持っていた。

 家に入ったならば確実に見たがる。


 どうする。……いや、カラスがいないのは言い訳が聞かんが、夜羽がいない場合は出かけている最中で話は通じる。

 即座に夜羽に目線を送ると、幸いそれだけで察知してくれたのか、すぐにカラスの姿になった。


 ちなみに瞬の思考から夜羽へのアイコンタクトを含め、約一秒。


「おい……勝手に人の家に上がりこむな。不法侵入だ」

「あれ? 居たんだ? ……居留守?」

「いや、寝てた。ガチャリで目が覚めた」

「えぇ!? チャイムじゃなくて!?」

 近所迷惑なほどチャイムを鳴らした自覚はあるようだ。


「何しに来た」

「冷たっ! 遊びに来たんだよ? あ、そうだ。瞬君ちのカラスどこ?」

「帰れ」

「再度冷たっ! あ、いたいた」

 と、瞬の言葉を聞き流しながら、発見した夜羽に近寄っていった。


「怪我してんだからさわんなよ」

「わかってるよ? って、あれ? 夜羽ちゃんは?」

「出かけてる」

「むー。私あの子に嫌われてるのかな? あんまり話してかないんだよね?」

「……知らんな。で、何しに来た」

「え? さっき言ったじゃん? 遊びに来たんだよ?」

 さて、どうしようか。

 と、夜羽からの早く帰らせろというプレッシャーを受けながら考える。


 そこで、あるものを思い出す。

 それは、後、数日で確実に必要になるもの。

 そして、飯田愛美は確実にそれを所持していないはずのもの。


「飯田? 遊びに来たって事は、夏休みの宿題は終わったんだな」

「!!!?」

「まあ、夏休みも後少しだし、なあ?」

「あ、あのさ、遊びに来たって言うのは冗談で……その、あの、しゅくだ「俺は見せたりはしないけどな?」……あぅ」


「…………」

「…………お願い!」

「断る」


「…………うわーん! 志戸塚くーん!! えまーじぇんしー!!!」

 飯田は携帯を取り出し走り去っていった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ