彼に見送られた彼女の散歩の話。
短いです。
序盤少し一人称、途中から三人称です。
一度やってみたかった。――と言うより、試してみたかった。
自分は今、ニンゲンをどう思っているのか。
夜羽は足を止め、考えた。
この何日か、シュンと一緒にこの公園を何度も歩いてきて、すれ違うニンゲンはいなかったわけじゃない。
しかし、そのときは何も感じなかった。
でもそれは近くにシュンがいたからだと思う。
ここが安全だとわかっていたから。
正直今でも、ニンゲンはやはりあまり好きじゃないし、少し怖いが、それでも前よりはましになったと思う。
シュンにニンゲンのことをいろいろ教えてもらったから、知識の部分でも問題ないと思う。
「……よし!」
そしてワタシは意を決し、歩みを進めたのだ。
彼女は、周りに目を配りながら歩いている。
夜羽の目的は二つ。
一つは自分の人間に対する認識の判断。
そしてもう一つは。
「……うん! ワタシにも出来る。シュンが買っているところは何度も見てるし、知識としても教えてもらった!」
そう。自分の手で物の――甘味の購入。
夜羽は以前、瞬に買ってもらったアイスクリームを食べて以来、甘いものが気に入っていた。
そして、どうしても自分一人で買い物をしたくなったのだ。
「……あれはジドウハンバイキ。あれの中にたくさん飲み物が入っている。……今はいらない」
「あそこにあるのはコンビニ。いろいろなものが置いてあって、歩いているときあっつくなったら、あの
中で涼めばいい」
「あれが…………」
はたから見れば女の子がなにやらぶつぶつ言いながら歩いている奇妙な状況なのだが、幸い近くには大して人もおらず、彼女を気にとめるものもいなかった。
口にした知識が若干ずれているのは、教えた人間――瞬が面倒くさがっただけである。
「! ……あった」
そして夜羽が見つけたのは、お目当てであったアイスクリームの移動販売車であった。
「…………よし」
意を決し、夜羽は移動販売車の前に立った。
「いらっしゃいませー!」
「…………あの……」
顔を出した店員のお姉さんは、緊張気味の夜羽を見て、クスリと笑い、優しげに質問してきた。
「どちらの商品をお求めですかー?」
「うぇ? ……えっと、こ、これ」
「はい。バニラアイスですねー? かしこまりましたー」
店員のお姉さんはテキパキとすばやい手つきで完成させていった。
「はい。お待たせいたしましたー」
渡されたのは二段のバニラアイスだった。
「あの……?」
「今回はサービスですー。お金も一段分で大丈夫ですー。また来てくださいねー?」
「は、はい。えっと、あの、その、あ、ありがとう」
「いえいえー」
こうして夜羽の目的の一つは果たされた。