彼の案内と彼女の冒険の話。
一日間があきまして、すみません。
次の日も夜羽は人間の姿のままだった。
「動きの練習する。置いてかれるの、や」
どうやら、昨日待っていた間とても暇だったらしい。
さすがに何度も言い聞かせたおかげで、今では何も言わなくても服を着てくれるようになった。
それでも自分のサイズに合わない服を着ているせいか、あまりいい機嫌だとは言いがたい。
「じゃあ、そろそろ夜羽の服でも買いに行くか」
「また置いていくつもり?」
「いやいや。さすがに婦人服売り場に男一人で踏み入れる自信は無い」
「なんで?」
「いや、行けばわかる」
「?」
結論から言うと、店についてから、服を買うまでは割とすぐ終わった。
最初にまず夜羽には、店に入って俺以外の誰かから話しかけられたら、適当に返事をしてもらうよう言ってあった。
これで妙なことを言って怪しまれることは無い。
ただ、夜羽はまだ人の姿だと動きにくいようで、たまによろよろしていたので、そこは包帯していることと、予め「怪我をしているから気をつけてほしい」と店員さんに言っておく。
これでいろいろ深く突っ込まれることも無い。
そして、次は俺の話術で何とかするしかない。
瞬は学校で、クラスメイトに自分から関りあうようなことはしない。だが、孤立するようなことは無い。
適度な交流関係を築き、孤立するようなことがあれば、おそらく話しかけてくるクラスメイトはいるだろう。
グループを作れといわれても、余りものになることはないだろう。
ただそれは友達と呼べるものではない。
卒業したら会うこともなくなるような薄い関係性。
それでも学校で孤立してしまうほうが、自分にとって面倒なことになるのを理解している。
瞬は人と会話が出来ないのではなく、普段は面倒なだけなのだ。
「怪我をして落ち込んでいる彼女に、いくつかプレゼントしたいのだが、彼女はファッションにはあまり興味がなく、大人しい性格で少し無口な子なので、コーディネートのほうをお任せしたいのですが」
「ま、おやさしい彼氏さんですね?」
夜羽は言われたとおり、適当に首を縦に振った。
その後も、夜羽は相槌を打つだけでよかった。
と言うより夜羽は店員の勢いに押されているだけの様子だ。
そして俺はその間、店員さんが選んだものを着た夜羽に感想を言い、買い物は終わった。
終わってみたら結構な金額になって少し驚いたが、まあ気にするほどでもない。
「………………」
ただ、夜羽はこれ以上ないといっていいほど疲れているようだった。
「だ、だいじょぶか?」
「……大丈夫に見えるなら、シュンはおかしい」
すごい眼で睨まれてしまった。
だいぶご立腹のようだ。
「でも、一人では入れそうにないってのはわかってもらったと思う」
「それはもう、十分すぎるほど」
「……どこかで休むか」
夜羽は何も言わずにうなずいた。
とりあえず近くにあったのは、自然公園だけ。
この自然公園はかなりの大きさで、町の人の散歩の定番となっていた。
と言う俺も暇なときは、よく中をふらつくこともあった。
人ごみは嫌いだが、うまく探せば静かな場所は結構あるのだ。
とりあえず、人通りの少ない木陰のベンチを探し出し、そこに座る。
夜羽はよほど疲れていたのか、うつむいて黙ったままだ。
「(……さて、どうしたもんか)」
と、少し遠くに眼を向けると、一台の車を見つけた。
「(ふむ、疲れたときには、というやつだな)」
俺は即座に行動に移った。
今後も更新ペースは落ちるかもしれませんが、見捨てないでいただけると幸いです。