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黒い鳥さんと一緒。  作者: 蛇真谷 駿一
夏休みで一緒。
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彼の大きな動揺の話。

「………………」



 俺はなんて返事をしたらいい。


 いや、単なる聞き間違いなのだろうか。



 そもそも、帰ってきてからの夜羽の様子がおかしかった。


 少なめの買い物の予定だったがかなりの量になってしまい、本当に飯田に荷物を持たせる事になってしまった。

 元々はそんなつもりなかったのだが。


 買い物中も結局、飯田の隠している事を聞くことは出来なかった。

 と言うよりしなかった。


 もちろんいつも通り面倒くさかったのもあるが、なんとなく言いたくなったら自分で言う気がしたからだ。


 家まで案内して、玄関先で少し話をした。


 俺は言いたい事を言っただけなのだが、感謝されてしまった。


しかも、気が付いたら飯田はいなく、足音だけ聞こえる。


 あいつ礼を言い終わった途端、ダッシュ帰って行きやがった。

 言い逃げだ。


 不意なお礼に少々照れてしまった。


 そこで気が付いたが、今まで誰かを家まで連れてきたことはなかったと思う。

 連れてくる理由がなかったからだ。


 自分でも気づかない内に少しはあいつに気を許していることに驚いた。

 とりあえず、遅くなったことを夜羽に謝りながら部屋に入る。


 もちろん返事はない。

 当然遅くなったことを怒っているものだと考えていたが、その後の夜羽からの質問は遅れたことにはまったく関係ないことばかりだった。


 意味がわからないまま答えていくが、一向に夜羽の機嫌は直らない。最後の方には「恋仲なのか?」とまで聞かれた。


 ――いやいやいや、お前は、クラスメートか!


 とりあえずそこは、はっきり否定しておいた。


 そして次だ。


 俺は、どうしてそんなことを聞くのか聞こうとした。



「……そう。…………なら、いい」



 ……特に深い意味はないのかもしれない。

 いや多分ないのだろう。


 だが、俺をフリーズさせるには十分な一言だった。


 無意識だったとしたら、本音と言うことになるのかも。


 だとしたら、つまりは……?


「(いやいやいや! いいように考えすぎだ! 自意識過剰にも程がある!)」


 聞き流したほうがいいのか、追求してみたほうがいいのか。

 どうしたら良いのか全く分からない。


 そして、夜羽もそれ以降口を開こうとしない。


 膠着状態だ。




 それからしばらくの沈黙の後。



「……お、おなかすいた」

「あ、ああ、悪い。今準備する」



 やはり、深い意味なんてないのだろう。


 とにかく俺は、考えることを放棄して、食事の支度に取り掛かった。

 食事の後、矢島さんに教わった怪我の治療をし、夜羽に言葉や人間の日常生活について教えて一日が終わった。


 しかし、買い物から帰って来た後の一日、あの「ならいい」発言が頭に残っている。


 気にしても仕方がないのだが。


 それとは別に気になっていることがもう一つ。結局、病院から帰ってからの夜羽は一度もカラスの姿に戻ることなく、人間の姿で過ごしていた。




 人間が嫌いであの姿も嫌いと言っていたのに、何かあったのだろうか。



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